ファンタジー小説革命
ゴッド・オブ・ソード
――― 第1章 「食欲編」 ―――
《 前回までのあらすじ 》
大出血をもろともせず、1匹目の悪魔を成敗したアスパだったが――…
時を同じくして、
作者は、近づく冬の足音におびえていた…!!
「…第1章(食欲編)は、秋中に完結させる予定だったのに…。
しかも、第6話 と 第7話の 《あらすじ》 まったく同じだし……」
間違えたんです…。
第8話 奴の名はベンジャミン
…ゴゥウウウウウ……
それは、地響きに似ていた。
さらに形容するならば、はるか地底から聞こえてくる巨大な竜の咆哮のような地響き…。
「まず、1匹撃退ってトコっすか」
腕に傷を負わされながらも、自慢話をする余力を残して悪魔に勝利したアスパは、のんきな声でそう言った。
「へぇ〜っ。なかなかやるじゃん、アスパ。…素人にしては」
口ではアスパに賛辞を述べながらも、「そいつから6枚の羽の悪魔について、何かと聞き出すつもりだったのに…」と、心の中で舌打ちするキシリィだった。
……ゴ…ゥウ…ウウゥ……
「な、なにか聞こえんか…?」
その音に最初に気づいたのは、町長だった。
ひそひそ話でもするような小さな声で、アスパとキシリィにその発見を告げた。
「のぅ…聞こえやせんか? なんちゅうか、その、雷鳴が地中で起こったような音が……」
「血ぃ流したら、ハラへったなぁ…。 ああ〜、うなぎ食いてぇな…!」
アスパ 聞いちゃいねえし…。
だいたい、おまえ、松茸 採りに来たんじゃないのか!? ああ!?
「ぼくたちが向かってる方向から、聞こえてきてるね…」
どうやら、キシリィもその音に気がついたようだ。
険しい表情で、その方向を見つめてそう言った。
「そういやぁ今年の夏は、あんまし、うなぎ食えなかったなぁ…。 来年の夏は、うなぎの産地にでも赴くか……」
アスパ、まだ気づいちゃいねーし。
こいつ、ほんと食うことばっか…。
「………」
「………」
…もはや、つっこむ気も起きない町長とキシリィだった……。
しかし! そんな二人の心境などおかまいなしに、新たな危険が一行に迫っていた。
……2匹目の悪魔の接近である…!!
「………ッ!」
おぞましい気配が、キシリィの全身の毛を逆立たせた!
この不吉な存在感は、明らかに悪魔のそれである…!
「気をつけろ! ぼくらを尾行してた、もう一匹のヤツがしかけて来る…!!」
そう言いながらも、キシリィは焦った。
強烈な気配が近距離から感じられるにもかかわらず、その姿が確認できないのだ。
「へっ! 2匹目のお出ましかい…。
おい、キシリィ! どっちの方向から来てんだ? 出やがったら、即 ブッた斬っちゃる!!」
剣を握りなおし、叫びながらアスパが構えた。
「……目の前にいるよ…」
キシリィの返答は、アスパの問いに対して不適当だった。
「…なにぃ?!」
すっとんきょうな声で、アスパが聞き返す。
「悪魔の気配が…、ぼくらのスグ目の前から感じられるんだよ…!! 距離にして、たかだか5メートルあたりまで来てる……!」
焦りによって、声が上ずっていた。
「…目の前って……」
アスパは、目を見開いて前方を観察した。
…が、そこには落ち葉のじゅうたんが敷かれた森の道がつづいているだけ……。
赤、黄、橙といった色とりどりの落ち葉が降り積もってできた天然のじゅうたんを眺めていると、その美しさに魅せられ危機感すら薄れそうだ。
アスパは 「なんも いねぇよ」 と、けげんな顔でキシリィをふり返るしかなった。
すると、そこには落ち着きを取り戻したキシリィの顔があった。
「…擬態 してやがるな」
にやっ…と口の端を上げると、キシリィはふところから手の平サイズの十字架を取り出した。
そして、それをおもむろに投げた。
放物線を描いて、悪魔の気配が感じられるという問題の方向へと とんでゆく…。
「爆発ッ!」
キシリィの合図とともに、十字架が爆発し、あたりに爆風を巻き上げた…!
「おぅッ?! なんだ! なんだ!?」
「げほっ! どげふぉっ!!」
いきなりの爆発に、アスパと町長はビビった。
ひみつわざ クロス ボマー
「エクソシスト秘密技 その一、十字架・爆弾」
どうやら今の爆発は、キシリィの「技」だったらしい。
「やるんなら やるで、言ってからにしてほしいのぅ…」
「まったくだ。そして、技の名前は32点……」
アスパが何やら不可解な発言をしたが、キシリィは無視して前方を指差した。
そして、言った。
「ふたりとも見てみなよ…… 悪魔さんのご登場だぜ?」
キシリィの言葉に弾かれたように、アスパと町長はその方向を見た。
巻き上がった粉塵が切れ、視界が開けはじめる…。
……そこには、まぎれもない悪魔の姿があった。
せわしなく宙を舞う無数の落ち葉を浴びながら、そいつは笑っていた。
「ふふふふふふ…。ワタシの擬態を見破るとは、なかなかやりますねぇ…お若い方」
甲高い声だった。
塗りつぶしたように真っ黒い体に、垂れ下がった真っ白の長い羽が2枚……。
面長の顔には、細い切れ長の目と三日月のような口……。
「げぇッ!! いつのまに…!」
突然の目と鼻の先に悪魔が現れたので、アスパは面食らった。
キシリィが、さっそくその種明かしをする。
「自分の体表を、地面を蔽ってた落ち葉のじゅうたんと同じ模様に変化させながら、地面を這って接近していたんだ。地面に溶け込みながら、ゆっくりと…ね」
「…なるほど。 爆風で落ち葉を巻き上げれば、それは続行不可能になる…ってわけか……」
説明くさい二人の会話を一通り聞くと、悪魔が再び口を開いた。
「ワタシ達がこの森を訪れ、住み着いてから5年……。 まさか、ベンジャミンを倒す程の力を持つ者が現れようとは……おどろきです」
紳士のような物腰で、悪魔は言った。
「あいつ、ベンジャミンって名前だったんか」
…そういえば……
や
また、相手の名前もきかずに闘っちまったなぁ…… と、アスパは思った。
つづけぇ――――――ぃ!
<次回予告 + お詫び>
『 前回の次回予告と、今回のタイトルおよび内容が違う! 』 と思った方へ。
…ごめんなさい!!(平謝り)
都合により、変更させて頂きました。
ハイ。
次回こそは………!!
――次回 ゴッド・オブ・ソード――
第9話 「魔力絶縁状態!」
御伽の間へ どひょーん!