ファンタジー小説革命 ゴッド・オブ・ソード
――― 第1章「食欲編」 ―――
《 G・O・S コラム 》
【 プラシーボ効果 】
"思い込む"ことによって人間の身体に影響が出ること。
お医者さんに、ただのビタミン剤を「お薬です」と言われて飲むと、病状が緩和するって
いうアレです。
《 前回までのあらすじ 》
アスパのイカサマ心理作戦によって、町長はついに(半ば強制的に)「5年前の惨劇」に
ついて洗いざらい吐くハメになった。なにもかもを知ったアスパとキシリィは、それぞれ
の思惑を胸に秘め、悪魔が待つエルジャンオリの森へと赴くのだった。未だ悪夢にうなさ
れる町長を道連れにして……!
あか
第6話 紅葉の紅! 鮮血の赤!
…その森はまるで、燃えている様だった。
凄まじいほどの紅葉の紅さが、ゆらめく炎をおもわせる。
「急に 風が強くなったな…」
真っ赤に染まった木々の葉は、少々荒い秋風にあおられアスパ達の頭上で揺れている。
彼らの訪問を嘲笑するように、森全体がざわめいているのか。
「…変わっちゃおらんよ、この森は……」
アスパとキシリィの後ろで縮こまりながら、町長が小声で言った。
…エルジャンオリの森……
まつたけ
松茸によってトトカルッチョの街が遂げた高度成長を、無に還した悪魔が棲む森…。
4人の男達が、無残にも石にその姿を変えられた森…。
・ ・ ・
「あの日もちょうど、こんな日だった…」
おびえた声で、半ば吐き捨てるように町長がつぶやく。記憶の底に、強烈に刻まれた凄惨な光
景が彼の脳裏で蘇りつつあった。この5年間、毎晩うなされ続けて来たあの悪夢が、より現実
味を帯びた白昼夢となって、今、目の前に再現される…。
「町長、このまま真っ直ぐ進めばいいんだな?」
「ああ…間違いない。あの日も、この道を……」
アスパ達がこの森に入ってから、すでに30分が経過している。
その30分間、アスパはずっと同じ感覚にとらわれ続けていた。
(…何かに見られている……)
その視線は、常に一定の距離から放たれていた。方向は、見当すらつかない。
つ
「尾行けられてるな」
独り言のように、アスパがつぶやいた。
「後ろに一匹… 左前方にもう一匹……」
キシリィも独り言のようにつぶやく。
「……!
お前、そんなにハッキリわかるのかよ…? 妖怪アンテナでもついてんの?」
アスパは驚いた顔でキシリィを見た。
とくに、頭のてっぺんに注意を注いで見た。
「いやでも反応しちゃうんだよ。
悪魔の気配は独特だからね…。特別イヤな気配さ」
だて
まだ少年といえど、悪魔退治の専門家・エクソシストの名は伊達ではないようだ。
「さすが! 専門家の先生は違うねぇ。ちなみに、匂いに例えるとどんな感じだ?」
アスパは、比較的どーでもいい質問をやけにまじめな顔つきで聞いた。
「そーだなァ…。
えっと、腐った卵を納豆といっしょに……って、んなこと聞いてどーすんのアンタは!?」
「うるせーな、おしえろよ」
「ふざけんな! この変人!」
二人のアホが言い争っていると、突如、周りの木々が大きく揺れはじめた!
風で揺れているにしては、明らかに不自然だ。不規則すぎる。
「……ッ!」
「ひぃ! でっ、でで、でたァ――!!」
町長の絶叫が響き渡るなか、木々の揺れはさらに激しさを増していく…!
その揺れは、まるで『ある方向』から津波のように押しよせて来るようだ。
・ ・
(後ろのヤツか…!!)
キシリィは後方に感じていた悪魔の気配が、急接近していることに気づいて声を上げた。
「気をつけろ! 仕掛けてくるぞ!!」
そして、キシリィの甲高い声が危険を知らせたのと同時に、それは起こった。
ブシュゥゥウウウッ!!
生々しい音とともに、紅葉の紅にも勝る鮮やかな鮮血が しぶき を上げた!
その出所は…!?
「アスパ…!!」
つづけ!
<次回予告!>
いきなりの負傷で出血多量となったアスパ!
でも、そのぶん怒り心頭! 戦闘意欲、満々!!
そして、今、明かされるアスパのどーでもいい過去……!
次回も、白熱まちがいなしっ!!
――次回 ゴッド・オブ・ソード
第7話「献血王と呼ばれた男」
御伽の間へ ボ○ン・ジャンプ!