−騒動教室の日常−
そこは、魔導同盟の施設として作られたもので、七年前に同盟の本部がある赤珠族の王都ディレファールに創設された。
設立してまだ日は浅いが、その機関に集められた面子は有名で、様々な国々からこの教育機関に入る者がいた。
教育費に関しては査定の際の実力によって免除されることもあり、その金額もまた能力によって異なる。
能力がある者ならば、たとえ文無しであろうとも入学できるということである。(ただしそれには驚異的な素質を持っていることが絶対条件となるし、学院の性格診断テストに受からなくては入れないが・・・)
また、学院には教室という物が存在する。
部屋、としての意味ではなく、どちらかと言えば学級という意味での教室だ。
だが、学院の教室は誰もが入れるわけではない。学院で基礎課程を無事終了し、第六級魔導師以上、すなわち中級魔導師以上であることが前提となっている。
そこで学院生徒は担当の教師に付き、2年間(学院の教師になることを希望する者は4年)を過ごすことになっている。
第六級魔導師に満たなくても、査定、もしくは選定の際に特に高い能力が見られた者、そしてそれ相応の資産の後ろ盾がある者には入学当初から担当教室に入る資格が与えられる。(もちろん後ろ盾があったとしても、それ相応の能力は必要となるし、基礎課程は担当教師の下で受けさせられるが)
つまり学院は実力と必要教育費が反比例になっているのである。
学院というからには当然教師がいるわけなのであるが、基本的に担当教室では、魔導師階級の高い教師に、実力の高い者が付くことになる。それは当然の事だといえるだろう。
しかし学院の教師であるクリフォード=エーヴンリュムスは一つ疑問を持っていた。今までの話は彼の愚痴の内容を聞いてもらうための基礎知識として聞いてもらったわけだ。
彼は魔導同盟が定めた魔導師階級の第二位である、第一級魔導師に位置する魔導師だ。学院でも第一級以上の魔導師はわずか9名しかおらず、クリフは学院の中では上位の人間だといえた。
故に当然優秀な生徒や、国家の要人の関係者が彼の教室に入ってくるのは分かる。優秀な人間に技能を教えるのは酷くかったるい、もとい苦労が多いし、要人関係者に関してはその人間の立場も配慮しなければならない。(彼にそれほど配慮をしている様子もないが)
しかしそれは第一級魔導師という肩書きを背負う者の宿命(無理矢理背負わされたような気もするが)だとクリフは思っている。
では、彼の疑問とは何なのかというと、『どうして自分の教室には癖のある人間が集まるのだろう』という事だった。
無論、皆が皆優秀な人材である。優秀な者には癖のある人間が多いとは聞いている。だが他教室と比較しても確実に『特殊』な生徒が多いのである。
驚異的な魔力を持ったトラブルメーカー。
プライドが高くクリフを認めずに学院を出た天才。
暗殺技能をたたき込まれた元感情欠落者。
学院実技教師の息子で、血の気の多い獣人の少年。
努力を惜しまず、人が寝ているのにも関わらず(昼寝)教師の部屋に押しかける少女。
奇怪な書物を愛読し、奇妙な笑い声をあげる魔国の資産家の娘。
聖国要人の子供で、何かと騒がしい双子の姉弟。
これらがクリフが受け持つ(過去形も含む)生徒達である。
個性豊かと言えば聞こえが良いのであろうが、言ってみれば問題児達である。しかも皆が皆優れた能力を持っているのだから、それを受け持つクリフはたまったものではない。
これが魔導学院教師クリフの悩みである。彼らに出された被害は尋常ではない。願わくば少しでもその被害が少なくなることを彼は望んでいた。
しかし彼のそのようなささやかな願いをよそに、今回もまた一つの騒動が起ころうとしていた。
そう、騒動こそが既に彼らの日常となってしまっていたのである。
序章 魔導教師の悩みの種
魔導学院という魔導師の育成機関がある。
学院の入学資格は至って簡単だ。8歳以上20歳以内であること、学院の試験官の査定に受かること、そして学院の要求する教育費を払うことである。
もちろん物には特例という物も存在する。
このような長く余計な話をしたのには意味がある。
Go to next chapter back to novel-room