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壱/空、何よりも高く。 
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 そうして各自解散を始める。テュッティは瀬里奈と話しに入っているし、ロイはもう隊員のところへ行ったようだ。チカラから話を聞こうと思ったがこちらもすぐに外に出てしまった。

「ふう。少々厄介な事になったな」

「そうですね」

 フェイミンが同意してくる。そしてその隣から

「それにしてもいきなり宝具の確保とは……。隊長を買っていただけるのはこちらとしても嬉しいのですが何か作為的なものを感じますね」

 と話す男が一人。彼はフェイミンと同じく第六部隊副隊長のダンデオン・ルウだ。褐色の肌に短めの髪、そして筋肉質の体は鍛えを怠っていない事が見てとれる。肉弾戦が得意だが思慮深い性格のため、作戦の立案などにも手腕を振るう雪那が信頼する男の一人である。

「まあな。あの言い方だとどうやら宝具は確実にあることを前提にしているようだ。あとは……バルムか。まだ会ったことはないが相当できるんだろ?」

「そのようです。チカラ隊長と引き分けたそうですから。もしもの場合は私とダンデオンが全力で抑えますのでその時は隊長……」

「馬鹿言え。その場合残るのは俺だ。おまえらはレイポイントを優先しろ」

「!? 隊長、しかしそれでは……」

 副隊長二人が驚いた顔をする。いきなり反論されるとは考えていなかったのだ。そして、そのまま雪那が話を続ける。

「確かに宝具は優先事項だ。だがそのためお前らを見捨てるまねなんざできるか。誰かが死んで誰かが生き残る、じゃだめなんだよ。俺のこれからには二人は必ず必要になる。だから死んでも、なんて考えるなよ。これは隊長命令だ」

 こうでも言わないとこの二人は無理をするに決まっている。それが解っていた雪那はしっかりと二人に釘を刺す。

「隊長……わかりました。そこまで言って頂けるのであれば」

「はい。私達は隊長を信頼してますから。でもあまり無理はしないよう」

 そう言われればこの二人は素直に従う。雪那が隊長命令を使う時は誰よりも自分達の身を案じてくれている時だ。こういうヒトだから信頼が置けて、雪那について行ける。

「おう。俺も生き延びないと意味ないからな。まあカーマインとテュッティもいるからなんとかなるとは思う」

根拠はなかったが。二人を安心させるにはそれしか台詞が思いつかなかった。まったくもって不器用だ、と自嘲する。そして一通り話しが済んだ頃に瀬里奈がこちらへやってきた。

「誰連れてくか、決まった?」

「いや、これからだ。少数精鋭にしようと考えているがそっちは?」

「考えは同じね。あまり大勢で動くと気付かれやすいから」

 そう話してる様子からするともうメンバーは決まったらしい。テュッティがいないのはもう隊員に話をしに行ったからだろう。

「一回は隊長同士で打ち合わせ、しておいた方がいいよ。こっちはそうでないと不安が残るからね」

「ん、分かった。ああそれと。後でテュッティとカーマインにも言うがな、バルムが出てきたら残るのは俺達隊長三人だ。副隊長と隊員はレイポイント優先にしろ」

「え!? ちょっと、それどうゆうこと!?」

 瀬里奈があからさまな不服の声を上げる。それもそうだろう、これでは自分達が信用ならないと言われてるようなものだ。

「確率の問題だ。俺達が残ったほうが全員生き残れる可能性が高い。テュッティはグングニルを持っているしな。それに遺跡内部での戦いになれば全員で一斉に、とはいくまい?ならば隊長全員が残るのが妥当な線だ」

「う……。そうだけどさ……」

 正論を言われて瀬里奈は反論ができない。できればあんたとテュッティと一緒がいい、なんて言えない状況になってしまった。するとフェイミンが

「瀬里奈。隊長は私達を信頼してくれているわ。なら私達も隊長達を信頼しましょう。大丈夫、隊長達は負けませんよ、ね?」

と話しかけてきた。

「……うん、そうだね。こっちが信頼しなきゃだめだよね、こういう場合。雪那、テュッティのことお願い。任せるよ」

「いや、俺のほうが任されそうだが……」

 周りのの三人が笑い声を上げる。それを見た雪那は大丈夫、こいつらとならと確信を持って外に出た。いまだに外はすがすがしい快晴。ゆっくりと散歩をするのも悪くはないと思ったが今はそれどころではない。時間を見つけては母の事を聞きに行かなければならないからだ。

「メンバーはどうしますか?」

 ダンデオンの問い掛けに雪那は今回の任務に適切なメンバーを頭に浮かべる。

「そうだな、ブリジッタとセシル、それに……リオと勇人に用意をさせてくれ」

「分かりました」

 フェイミンが即答する。今のメンバーは今回の任務には間違いなく適任だ。雪那はこうした瞬時の状況判断力に優れる。これは部隊内で信頼されている要因の一つで、この判断力で全滅しかけた部隊を救った事もある。

「隊員にはこちらから声を掛けます。隊長は他の方との打ち合わせに」

「ああ。頼む」

「はい」


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