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きゅう/アナザーサイド
〜さよならの家族・お帰りの家族〜
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 飛びかかった少女にそのまま押し倒され、地面に音を立てて倒れこんだ。ここぞとばかりにハイエナのごとく歯を立てた少女は、首の肉を食おうと――

「ぬるいな」

「!?」

 少女の鳩尾に右の人差し指と中指を当てる。相手に逃げられる前にすぐさま発動させる。

「撃ち抜け」

「ガッ――ッ!」

 少女は獣の呻き声を上げて天高く串刺しにされる。いつも使う九つの武装の内、一番ポピュラーな西洋の長剣を発動させて上空へと向けて撃ち放った。

 冗談のような速度で天高く、串刺しにされたまま少女は昇っていく。あまりの勢いに、そして至近距離からの攻撃だったため、無意識の防御行動が間に合わなかった。

もがくように体を捻り、呻くが、空を飛ぶことが出来ないヒトがどれだけ足掻いても無駄である。

 地上では――

「さあて」

 何事も無かったかのように起き上がり、一度だけ屈伸をして。

「フッ!」

 勢い良く、天に向ってジャンプした。ヒトではない、化け物なのだ。この結果など想像に難くない。飛び上がり、紅の羽を輝かせて飛ばされた少女の下まで一直線に駆け抜ける。

信じられない速度で追い付き、少女の体に刺されていた長剣を勢い良く引く抜いた。それと同時に上空で美しく血が飛び散る。

「ギッ――!」

 肉体が破損したことで生じた痛みに、少女は獣の声で答えた。噛み締めるような声ではあるが、ヒトの声とは程遠い声で。

 それを確認した後、上空で飛びながら動きを変え、少女に向って掌を向けてみせる。相手の視界にわざと自分が入るような体制になりながら。

 一瞬だけ、落ちもせず、昇りもせず、空の彼方で停止する。


 上には満天の星空。

 下には灯りを失った鋼鉄の街。

 狭間で停止する二つの影。

 一枚の絵画としてならば、美しさのあまり溜め気が出そうなほどの光景。

 そして。

「――」

「――」

 右手に、力を込める。この世で最強の威力を持つものを召喚する。ただ一つ、この時の少女の中に巣食う彼の者を消し去るためだけに。たったそれだけのために、全てを駆逐する最強の刃を召喚する。

「第六(だいろく)」

 ――ハ。

 十度目。

「源殺(げんさつ)」

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