〜ご奉仕評価争奪戦・第2ラウンド開始〜 6/11 「はあー。本当に多いですねー。どれを選びましょうか……」 雪華は自分の役目にも気負いがあるため、衣装だけを選ぶのに集中できなかった。与えられた役目は食事担当だが、そもそも雪那が男ながらに専門で食卓を受け持つのにはわけがある。 そう、撃滅的に駄目なメンバーがいるのだ。綾乃は勿論、雪華もその内の一人に数えられる。最初に住んでいたのは綾乃・瀬里奈・雪華だったのだが、雪華が担当の時はキッチンが黒焦げになった挙句よくわからないものが出来上がり、その日は食事がなしになった。それでも、今回は決められたので逃げることは出来ない。 「うーん、食事もそうですけど衣装も……。食事が駄目ですから、兄さんには目だけでも保養してもらわないと……」 なにやら変な方向に考えが進んでいるようだが、一応目の保養になる衣装を選んでいるらしい。すると、奉仕にぴったり? の衣装が目に止まる。それを広げてみると―― 「……その、面積小さすぎません?」「ぬふふふ、雪華ちゃんそれ選ぶんだー」 「きゃっ!?」 いつのまにか接近していた綺羅々が、座り込んでいた雪華の肩から覗き込む。当然、綺羅々のほうが身長は低いため、こうしていると姉妹のようだ。 「ふふふ、妹でも大胆な服選ぶのねー。まあ、奉仕としてはそれでもいいかも」 「そ、そうですか?」 「どうする? 多分お兄さんメロメロよー?」 挑発に乗ってしまう自分が恨めしい。 「――。これでお願いします」 「はいよ! さーて、これにつけるのはっと……」 段ボール漁りに走った綺羅々を横目に、こちらも脳内シュミレート開始。 (料理を、その、あーん、なんて、恥ずかしい……) 自分の姿とそれを兄にするところを想像して、ぼん! と一気に赤くなる雪華。 (ちょちょちょっと、大胆に……!) 危ない。それは危ない。 「ふむ、さてどうするか……」 一方こちらは綾乃。奉仕場所が風呂場ということもあり、衣装を選ぶのにはそれなりの選択を迫られた。普通の服を選んでもどうにもなるまい。 奴を落とすのであれば、それこそ風呂場にあうようにできるだけ興奮できるような服装がいい。そのほうが反応が面白いだろう。 「これ。いやこれか? むー」 くわえた煙草からゆらゆらと煙が立ち上る。現在手に取っているのは、あからさまに角度がおかしいビキニと、白くてとても薄いワイシャツ。 前者は一発でどうにかできるし、後者はわざと水を自分が被ることで相乗効果を得て破壊力アップ。どちらか悩むが、そこに転がっているランジェリーでもいいかと思えてくる。 「うーむ」 と。 全員がそうなのだが、悩む時に限ってこんなものが目に飛び込んでくる。これだけ種類が豊富なのだ、こんなものが転がっていても不思議ではない。 ただし、これを綾乃が着るのはある意味年齢制限が引っかかって詐欺とも言えなくない。 「朝幹」 決まったので綺羅々を呼ぶ。 「はーい」 「これでいく」 ピシリ。 綺羅々は一瞬にして凍りついた。 「――。あの、あや、の先生?」 「なんだ」 「マジ?」 「マジ」 短い会話で悟る。ああ、このヒト本気だ。 「えっと、サイズは」 「これでいい」 「あっと、えっと。そちらは使い捨てになりますから、これどうぞ」「ああ、ありがと。さてと」 キュポン。マジックペンの蓋を開けた。 「ふーむ、私は帰ってきた雪那に飲み物を出す役ですから」 京子は正座してとりあえず候補に上げた衣装を並べている。和の家で育った京子らしく、出迎えた雪那に最初に飲ませるのはお茶と決めている。 そのため、自然と雰囲気を壊さないように和服を並べていた。あとは色彩で選ぼうと決めていたのだが、どうもインパクトが足りない気がする。 「着物では限界がありますか……。ですが、その、他のは恥ずかしくてどうも……」 実は候補として「めいどふく」も考慮していたのだが、デザインが恥ずかしくて着る気になれない。スルーしていった結果、和服に落ち着いていた。が、これではどうしてもインパクトに欠けてしまう。 「うーん」 右手を顎につけるいつものポーズで考えていると、綺羅々がそれを見かねて尋ねてくる。 「京子、決まった?」 「え? まだです、これらの着物からどれにしようかと」 「ええ? せっかくこんなにあるのに、インパクト薄い着物にするの?」 そんなこと言われても、と内心返事をするが、綺羅々の言うことも最もだ。見た目で勝負するなら上回る衣服はいくらでもある。ただ、羞恥心が邪魔して自分からそれを選べない。 「そ、その、やはり恥ずかしくて……」 「勿体ないなあ。んーっと、ほら、これでも着なさいよ」 綺羅々から渡された服装は―― 「えっ? ええっ!? こ、こんなの着れません!」 「いいから着ちゃいなさいって。京子は和風のイメージ強いんだからさ、概念ぶち壊しで月代君KOしちゃえばもう、うっはうはよ」 「はあ。あの、本当にこれでなきゃ駄目ですか?」 「駄目。どうせ京子は和服しか選ばないから、これだけは私推薦ね。ふふふ、彼の反応が楽しみ、こればかりは」 無理、とまではいかないが、結局京子は押されて綺羅々推薦の服で挑むこととなった。確かに、お茶を出すギャップを考えるとこれくらいがいいかもしれない。腹をくくった京子は、小道具を探すのを手伝う。 「もうどうにでもなれですね」 「そうそう、その意気よ」 まあこれやばいよね。 Copyright 2005-2009(C) 場決 & 成立 空 & k5 All rights Reserved. |