第187話 "互角"
3回連続で極地バトルが繰り広げられて、すぐまた反乱軍の戦いに戻る、このタイミングは絶妙。
「同時並行」のドラマ運びは、一本道しかないマンガの構造上、場面切替のタイミングを間違えると話が間延びしてしまう。
もしここでゾロVSMr1戦が始まったりして、さらに3週伸ばしたりしていたら、読者は完全に反乱軍の話を忘れてしまう。
物語内のメインストリームはあくまでこっちなのである。
1ページ目と2ページ目、それぞれの中段のコマでの静と動の場面転換なども相変わらず秀逸。
同じ「ワァァァァァ…」を背後に置きながら、書き込みの細密さと効果線、画面構成
(2ページ目では左上半分は空白にして静けさを出している)
一方サンジとMr2の戦闘も同時進行。やはりサンジは強かったということを思い出させてくれる戦い。
さて、ウソッチョ・4コンビ戦の砂漠戦と違い、戦闘の場所柄、後ろに宮殿などの建物で背景がゴチャゴチャしている。
また、戦闘シーンという性質上、迫力のために効果線がいつにも増して多用されている。
だが、それでも絵が見づらくは感じさせない。この点に触れてみたい。
この要因はキャラデザインにある。サンジは黒基調のシャープなデザイン。Mr2は白基調のごてごてしたデザイン。
これによって画面上で敵と味方が、パッと見、一目瞭然なのである。
結果、読者にダルさを感じさせずに勢いよく読ませてくれるわけである。
ついでに言えば
サンジはスーツで男をイメージ、
Mr2はプリマで女をイメージ、
サンジは美形(?)、
Mr2はブサイク、
サンジは白髪
Mr2は黒髪
という、これでもかと言わんばかりの見事な対比。
ミホークとゾロの洋風対和風のような、まるで宿命の二人とでも言えるようなデザインである…
第188話 "オカマ拳法"
お色気(ナミに変身して胸をはだける2)ギャグ(「目がァ!!」)そして全編通したバトルシーン。
特にバトルシーンでは相変わらず勢いとパワーで見せる構図。サンジの黒ずくめが、画面に映える、映える。
そして、Mr2の独特のシルエットもまた面白い。
「無〜駄よーう!」の次のシーン、「あの夏の日の回想録」「あの冬の空の回想録」など、これらの要因は、
やはり2の巨大な丸い腰。ナイスデザインである。
と、絵柄面ばかり強調しているが、逆に言えば戦闘自身がちょっと単調で退屈といえる。
ひたすら叫び、蹴り合い・どつき合いを繰り返すばかり。
戦闘のかけひきというか、戦術みたいなものが全く描かれておらず、マネマネの実の攻略も、あまりに古典的で、面白みに欠ける。
せっかく久しぶりのサンジの戦いなのだから、もうすこし、絵柄面でなく、その内容もヒネってもらいたいものだが…
クロオビ戦と、ほとんど進化していないのがちょっと寂しい。
こういう回を読むと、やはりワンピの魅力はバトルよりもキャラ同士の会話や、ストーリー構成、ドラマに比重があるように思える。
第189話 "2"
前回からの勢いで決着がついてしまう。
どうも、急ぎすぎな印象。3・4ページ目でゴチャゴチャしすぎてしまい、最後の一撃のカタルシスに上手く繋がっていないような気がする。
今回いっぱい使ってじっくり決着をつける位で良かったと思うのだが…これだけの展開を一気に叩き込むのはきつすぎると思う。
ラスト2ページは来週まわしでもいいのではないだろうか?
また、バトル自体もひたすら蹴り合いで勢いがあるのはいいが、読者に息をつけるところがなく、却ってメリハリを失っている。
惰性で蹴り合いをしているように見えてしまうのだ。
クロオビ戦から続く、こういう連続技バトルだけでは、やはりサンジの戦闘に魅力を持たせるのは限界がある。
むしろ対パールさん戦で見せたような、優雅な動きを一つ一つ重ねて行った方が、読んでいてスカッとする。
サンジは、どちらかというと(ゾロと比べ)ビジュアル系なのだから、その長所をフルに活用すべきではなかろうか?
しかし、ここでクロコダイル登場とは…あまりにもうますぎるストーリー展開に脱帽するばかりである。
ウソップチョッパー戦、サンジ戦、ゾロナミ戦と繋げて見せながら、しかもビビの方の展開を同時並行で見せる。
間延びもしないし強引さもない。絶妙すぎる。
しかし、クロコダイルはやっぱりあおり構図が映える。その意味でまさにこの構図(クロコダイルがビビ・チャカ見下ろす)はうまい。
また、右から(つまり後ろから)登場するのも、読者の意表をつく展開とマッチしていると言えよう。
第190話 ”天候棒”
さて、今回はいつもと違って「ゾロナミ VS 1・DF」に専念しているので、場面転換の邪魔が入らずテンポよく読み進める回である。
(回想シーンはあるが)しかし、そのテンポの良さはそれだけに限らない。
「静」と「動」の転換が実に巧妙に貼り巡らされているのだ。
順に見て行くと、
1ページ目「戦うしか…」 =静
2ページ目「むり(シュバッ!)」 =動
「バッ!!」 =静
3ページ目「ギィン!!」 =動
その次のコマ =静
4ページ目「ズパッ!!」 =動
5ページ目から暫く会話 =静
8ページ目「ガキン!!」 =動
9ページ目から暫く会話 =静
12ページ目「とにかくやってやる!あの女一人くらいなら私にだって…!!!」=動
13ページ目「ドスッ!!!」 =静
16ページ目「天候棒!!」〜 =動
17ページ目「わぁっ!ふしぎっ!ハトが飛び出したぁ!」=静
「アホかァ!!!」=動
「ずーん」 =静
18ページ目「今度こそ終わりよっ!クラウディ=テンポ!!」 =動
「きれいなお花♪」=静
「勝てるかァ!!!」 =動
「不憫…(どーん)」=静
静の場面でも緊張感があるところとないところ、動の場面でも効果線のあるとこととないところがあるが、大体こんな感じ。
このように展開にメリハリを付けることは、前半に見られる戦闘のようなシリアスシーンでも
後半に見られるナミのようなギャグシーンでも、重要な要素なのである。
そしてこの回は特に、メリハリの聞いたテンポの良い回と言える。
(サンジボンクレー戦直後故に、さらに強調されて感じる)読んでいてストレスを感じない、良品といえよう。
第191話 ”天候を操る女”
作品始まって以来の、ナミのタイマン戦闘。
天候棒の理論(トルネードテンポやサンダーボルトテンポ)は、胡散臭さ大爆発であるが、
ワンピでは物理学的な矛盾は日常茶飯事なので、目を瞑るのが妥当であろう。
また、ギャグからジワジワとシリアスになっていく展開のつくりは、
本来戦闘キャラではないナミを、戦わせる、ということを読者に納得させるため、かなりうまく働いている。
読者の持っている「ナミは非戦闘キャラ」という意識を、ゆっくりゆっくり誘導して行くこの手法はさすがである。
第192話 ”旋風注意報”
冒頭で兵士達を十六輪咲きで叩き落すオールサンデーであるが、
実はハナハナの能力、後に"全く見えない"ものにはなんともしようがないため、
目抜咲き(オッホスフルール)で、目を生やして対象を見なければならない、という縛りが判明する。
そして目抜咲きを使用する際には目をつぶっている。
その縛りをここでも考えるなら、オルサンのいる場所からは見えない兵士達を叩き落すのであれば、
この時も目抜咲きを使っていたことになる。
で、改めてこのシーンのオルサンを見てみると、"目を開けている描写がない(わからない)"のである。
つまり、目抜咲き(オッホスフルール)を使っていると考えられるのだ。
こんなところまできちんと描いている。この徹底が、安心してワンピを分析したり、謎を探したりできる、一種の安心を生むのである。
さて、ナミの戦闘であるが、また一つ、ジワリとダメージを与えた。
少しずつ、少しずつ戦闘を進めて行くメリットは、前述した通り。
この緻密なストーリー構成が、見事なまでにリアリティを維持する助けとなっているのだ。
第193話 ”理想郷”
結局、ナミの戦闘は4話に渡った。
これは他のキャラクター達の戦闘が約3話で描かれているのと比べ、各段の扱いである。
その理由は、前述している通りで、"ナミの戦闘"は、一気に描いては説得力がなくなるからで、
読者を納得させるためには、必要だったわけである。
ところで、ナミとゾロは"メディ議事堂"の近くで戦っているわけだが、
アラバスタって、王制の王国じゃなかったっけ?議事堂って…
実は立憲君主国なのだろうか??これもまた、なんとなく裏設定を感じさせる記述である。
第194話 ”鉄を斬る”
強者同士のバトルの面白さが凝縮されている回。
Mr1とゾロが、画面中を所狭しと縦横無尽に動き回り、ぶつかり合う。
特に鬼斬りから虎刈りへと流れるように叩きこまれるシーンは、優雅さと力強さを兼ね備えており、
虎刈りを決めた瞬間のゾロのわけのわからない体勢を成り立たせるだけの、画のテンションの高さも驚きである。
直後のMr1の蹴り2連続に対するゾロのセリフ「そうか!」も、咲きに叫ばせておいて理由を後から説明することで、
"一瞬の判断"、"とっさの一言"をリアルに表現しており、息もつけない張り詰めた緊張感を、見事に表現している。
一つ一つの攻撃を、ごまかさずにきちんと描いている。
また、前の動きから次の動きへの流れもしっかり見せることで、バトルシーンに説得力が生まれている。
これほどの戦闘が描けるのに、何故サンジの戦闘はああなってしまうのか…
やはり、作者の思い入れの違いなのだろうか?
第195話 ”Mr武士道”
前話にひきつづき、高いテンションの戦闘シーン。
一つ一つの動きを全部描くことで、戦闘シーンの説得力を生んでいるのはそのままだし、
蟹獲りの描写では、敢えてゾロの腕の動きを効果線を使って描かず、読者の想像で補わせることで、
また画面をスッキリまとめていたりと、表現技法も冴えている。
ただ、さすがにゾロの傷は、致命傷に見える。
これで生きているのでは、ちょっと説得力がないように思えるのだが…
まぁいつものこととは言え、もう少し表現の限度を考えて欲しいところではある。
ワンピ世界がなまじリアリティを持っているが故に、行き過ぎた表現は読者を興ざめさせる
(いわば、読者の作品の"リアリティ"に対する信頼を裏切る)ことになるので、注意が必要だろう。
ただ、ラストシーンの獅子歌歌の見開き画面の迫力は、かつてないほど強力で、印象深い。
ここまでの絵を描けるのは、やはり尾田氏の力量を見せつけられるところだろう。
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