「フェロシルト」とは
2005年5月4日
◆フェロシルトは酸化チタンの廃棄物
軽くてさびなく堅いチタンは白色顔料として冷蔵庫や車の塗料、メガネのフレームやゴルフクラブとして使われていますが、最近は光触媒としても脚光を浴びています。
しかし、チタン鉱石はウランやトリウムなど放射性物質を含むため、チタンの廃棄物は放射性廃棄物でもあります。
マレーシア、オーストラリア、カナダ等の海岸に堆積している砂鉄状の鉱物を輸入し、粉砕してチタンを抽出します。
抽出方法としては硫酸法と塩素法があり、フェロシルトは硫酸抽出法で抽出した後の、排硫酸と汚泥を炭酸カルシウムや消石灰で中和し、脱水して、産廃処分場に廃棄されていました。
◆産廃からリサイクル製品に
石原産業の平成15年酸化チタン生産量は125,138トンです。製品に対する廃棄物の量は約2倍から2.5倍と言われていますので、平成15年酸化チタンの廃棄物は約250,000トンから380,000トンという膨大な量になります。このため処分場が逼迫し、処分場費用も日経エコロジー記事(2005年5月号 P.77)によると産廃税も含めて1トン9,400円と高額なことから、産廃処分すべきものを、「フェロシルト」という名前に書きかえて「販売」しています。さらに平成15年9月、三重県はリサイクル製品と認定し、県のホームページでも宣伝しています。
◆「リサイクル製品」だけど業者の扱いは産廃
瀬戸市ではリサイクル製品となったフェロシルトが砂防指定地内の沢筋に野積みにされています。防災工事を愛知県から命じられた業者はあふれたフェロシルトを、岐阜県可児市の借地にケナフを植えるための肥料と偽り、地主に黙って埋め捨てました。この行為に対し住民は、フェロシルトは土でも肥料でもなく、ケナフは育たないこと。また、放射能が含まれていることを我々は説明を受けていないと業者を糾しました。可児市や県の許可を得て埋めているとの業者の説明を、可児市環境課が否定したこと等々たくさんの嘘がバレて、とうとう業者は「これ以上搬入しない」と言わされました。
岐阜県瑞浪市や土岐市でも野積みにされていますが、瑞浪市で野積みをした業者は税金を払わず、土地は競売にかけられています。まさに産廃の置き逃げです。
◆自然放射線の2、3倍
フェロシルトにはウランやトリウムが6mg /kg、11mg/kg(石原産業の資料)含まれています。
ウランの半減期は45億年、トリウムの半減期は141億年ですので、その毒性はほとんど永久に無くなることはありません。
フェロシルトの放射線を測定すると自然界の3から4倍で、すぐに人体に影響がでることはありません。
しかし、放射線の危険から身を守るには被曝を減らすのが一番です。治療目的以外で自然界の2、3倍の放射線を浴び続けることは危険です。
そのうえトリウムは強いα線を出す放射性物質として有名です。フェロシルトが乾燥すれば、微粒子となって飛散します。それを吸入すると、ウランやトリウムが含まれますので、内部被曝をしてしまいます。α線の内部被曝はγ線の外部被曝の10から20倍高いと言われ、体内の特に肺にとどまってα線を出しつづけますので、肺ガンの恐れは高まるのです。フェロシルトの放射能は劣化ウラン弾に比べて低いものですが、内部被曝の原理は同じなのです。
◆地下水汚染の可能性
チタン鉱石はウラン、トリウムという放射性物質だけではなく、フッ素化合物、鉛、砒素などの重金属を含み、フェロシルトにもそれらが含まれています。フェロシルトが大量に投棄されているので、地下水汚染も心配です。
中和不十分で硫酸第一鉄や硫酸トリウムなどが残っていると、水にとけ出す可能性があります。 トリウムによるラドンガスは水に溶けやすく地下水に溶け出す可能性があります。
◆ 中和剤硫酸カルシウム(石膏)溶出の可能性
チタンを溶かした硫酸は炭酸カルシウムや消石灰で中和して、鉱物残滓と共にフェロシルトにします。中和で硫酸カルシウム(石膏)ができます。
石膏は水に溶けにくいと言われていますが、露出していると雨水等で溶けだし、河川の水質を悪化させる恐れがあります。地下に埋められても徐々に溶けて地下水を汚染する恐れがあります。
◆ 塵肺の危険性
フェロシルトの主成分である酸化第2鉄は微粒子として体内に入ると、軽度の塵肺になるので吸入は避けましょう。
◆フェロシルトは「土」ではない
フェロシルトは見た目には赤い「土」ですが、土ではありません。フェロシルトは酸化鉄と石膏が80%近くを占め、土の成分であるケイ酸やアルミナはほとんど含まれていません。
しかし業者はケナフ栽培を口実にします。ケナフを栽培するためにフェロシルトを入れて土壌改良をすると宣伝し、フェロシルトを持ち込みます。可児市大森、可児市久々利大平、瀬戸市北丘町などはケナフ栽培を口実に搬入しました。
しかしフェロシルトには土の成分がほとんどないため、直上にはケナフも育っていません。
◆チタン廃棄物は産廃処分すべきもの
当初チタン廃棄物に放射能があるとは知らずに、産廃処分場に捨てていました。しかし、産廃処分場に入れたチタン廃棄物から、高い値の放射線が検出されたので、当時の科技庁、通産省、労働省、厚生省が調査をし、平成3年6月「チタン鉱石問題に関する対応方針」で産廃処分場に入れて良いことにしてしまいました。それでも、放射性物質を含むため、放射線測定や搬送中の飛散防止等に注意を払っています。(以下対応方針の要旨)
・工場外に持ち出す廃棄物はチタン廃棄物由来の放射線量が0.14μGy/h
(γ線換算では0.14μsv/hと同じ)以下に限る。
・処分場へ移動中も幌などかけて飛散させないこと。(α線による内部被曝を防ぐため)
・処分場では雨水などで流れ出ないようにする こと。
・50センチ以上の覆土をして、放射線量が0.14μsv/h以下にすること。
・大規模な跡地利用は、科技庁に事前通知すること。
この時は、リサイクルは想定外でした。
製品にはリサイクルできるものとできないものがあります。リサイクルを口実としたフェロシルトの産廃処分は許されものではありません。
◆チタンを使い続けるの?
鉱石を外国の産地で精錬し放射性物質の高い部分をそこに捨てている可能性があります。私たちはチタンを使い続けて良いのでしょうか。
◆最後に
黙っていたらフェロシルトは私たちの身近にどんどん埋められてしまうでしょう。そうならないためにこんな行動を提案します。
◎あなたのご近所の方々、お友達に、お知らせください。
◎身近な議員さんに、この問題を取りあげてくれるようお話ください。
◎三重県知事やごみゼロ推進室に認定を取り消すように電話やFAX、手紙を送ってください。
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