─────全ては、その一瞬で決まった───── 耳をつんざく銃声。 飛び交う銃弾。 鼻につく、硝煙の匂い。 二人の手にそれぞれに握られた銀と黒の銃が、間断なく火を吐き続ける。 荒い息。肩で呼吸する二人の頬に伝う、冷たい汗と─────血。 自分の命と、その背に担うものを賭けた戦いに、二人の、まるで鏡に映った虚像のように似通った顔が、歪む。 ドォン ドン ドオオ・・・・ 銃声は止む事なく、辺りに響き渡る。 互いの動きを窺いながら、手早く中折れの銃を折る。 薬莢が宙に飛び、新しい銃弾が装填される。 ガシャリと耳元で銃を立ち上げ、二人は鋭い視線を走らせながら、その強張った顔に音もなく汗を滴らせた。 ─────近い。 二人は確信する。 ─────もうすぐ、決着がつく───── その予感は的中する。 互いの腕を銃とし、撃ち合い、撃ち消し合う二人。 夥しい光が溢れ、樹木が、草地が掻き消えた。 二人を中心に、大きく穿った地面。一変した辺りの風景。 二人は息を切らして向き合う。 一気にかかった負荷にイカレた腕。だらりと降ろしたその腕は、僅かに痙攣していた。 そんな腕を押さえながら、赤コートの方の男が、そのイカレた手に握っていた銀色の銃を、そのままゆっくり握り締める。 銃口が、対峙するもうひとりへと向けられる。 「・・・・・・・」 向けられた銀色の銃。自分を捕らえている銃口に、対峙していた男が一瞬息を飲み、そうして険しく顔を引き締めて相手を見た。 ぎらぎらと容赦なく射す光。男の前で、無言で銃を構える彼の、シルバーメタリックの銃が鮮やかに浮き立つ。 彼の指がゆっくりとトリガーに掛かる───── 背に冷たい汗が一筋流れ落ち、男がゴクリと僅かに喉を鳴らした。 カチリ 響き渡った軽い音。 手応えなく落ちた撃鉄。 カチリ カチカチ・・・・・ 何度も引かれるトリガーに、銃は何の反応も示さない。 ─────弾は、尽きていた。 「・・・・・・!!」 絶句し、表情を険しくさせた相手に、今度は男が薄笑いを浮かべ、自分の銃を構えた。 黒い銃。 きつい日差しに黒光りする鈍い光沢が浮き立った。 ドォン 弾け飛んだ銀の銃が、ぎらぎらと陽を反射しながら空高く虚空に舞った。 ドンドンドンドン 腕を、足を、銃弾が掠め、彼が呻き声を上げてざしゃりと砂に膝を落とす。 ザクザクザクザク・・・・・ 男が足音も高く砂を蹴り、蹲る相手の近くまで歩み寄ると、落下してきた銀の銃をキャッチした。 僅かな呻き声。彼が唇を噛み締めながら、左腕に仕込んでいたシークレット銃を構えようとした。 ─────瞬間 音を立てて男が相手を蹴り上げた。 蹴り飛ばされ、彼は僅かに苦痛の声を上げて砂の上を転がった。 砂地に血の吹き出す四肢を投げ出し、仰向けにぜえぜえと荒い息を立てる彼の、苦しげなその呼吸に、ガシャリという音が重なった。 男の両腕に構えられた銀と黒の銃。 その銃口はぴたりと彼に向けられている。 息を飲み、その様を見遣る相手の前で、二つの銃は火花を散らし、輝いた。 脈動する肉。波立つ腕が、やがて一つの形を取る。 翼を生やした巨大な有機質の銃。両腕を息づく銃に変えて、男は勝ち誇ったように彼を見下ろした。 「─────」 突きつけられた二つの銃の前で、なす術もなく彼が僅かに瞳を細め、諦念めいた鈍い表情をその顔に滲ませた。 ─────男は嗤った。 「終わりだ」 銃身にたたえた発光する球体が、一瞬僅かにきらめいたかと思うと、カッと凄まじい光が銃から迸り、辺りを飲み込んだ。 「死ね」 ─────その時だった。 力なく伏せられていた彼の瞳が、一瞬、微妙な光を帯びた。 ざあっと鳴った砂。何かが彼の真横に現れる。 砂を零しながら現れた、白い布にくるまれた巨大な十字架。 「─────!?」 弾けていく留め金。最後の一つが弾けたその時、白い布がふわりと身を引き、その下から黒い穴が覗いた。 銃口 男がはっと息を飲んだ。 彼が僅かに笑った。 そして ─────ガガガガガガッ 耳をつんざくような銃声。 十字架に仕込まれたマシンガンが、がなりたてるような唸り声を上げた。 「がああああああああああっ!!」 撃たれた両腕が、一瞬にして元の形を取り戻す。 融合していた銃のうち、銀色の方が勢い良く弾かれ、宙に飛ぶ。 銃は、一線の光の軌線を残し、そして、待っていたように主人である彼の手の内へと戻った。 体勢を崩し、よろめいた男の前で、彼は、銃を受け取りざま手早く装填し、構えた。 男が目を見開く。 彼が目を細める。 そして 彼の指がゆっくりとリガーに掛かった───── 響き渡るひとつの銃声。 倒れ、音を立てて目の前に転がった、決着。 術はその一瞬で決まった。 風が、砂漠を吹き抜けていった。 砂漠に佇む一人の男の、その金髪を、風は僅かに揺らす。 そして、風は、その男の足元に横たわる、もうひとりの男の髪も揺らした。 身体をくの字に折り曲げ、砂漠に倒れている男。 まるで精巧な蝋細工のように、冷たく凍り付いた身体。 貫かれた胸。赤い血潮が溢れ、乾き切った砂地に音もなく染み込んでいく───────。 それを見つめていた男は、冷たくなった亡骸を見下ろしながら口を切った。 「馬鹿な奴だ」 吐き捨てるような、物言い。 「黙って僕に従えば良かったものを───────」 今だ僅かに硝煙を燻らしている自分の銃を、無造作にホルダーに収め、男は地面に転がっていた相手の銃を取り上げた。 銀色の銃。 「これは形見にとっておくよ、ヴァッシュ」 横たわる亡骸にそう言い、男は───────ナイヴズは声高に嗤った。 NEXT |