副次的に発する電波等の限度

@「副次的に発する電波等」は、わかりづらい用語ですが、一般に「副次発射」とも言われ、無線機器が受信状態であるにもかかわらず、空中線から発射してしまう漏れ電波を規定するもので、受信空中線の給電点の電力で規定されています。

A「副次的に発する電波等の限度」は、無線設備規則で規定されている許容値で、「副次発射の許容値」のことです。

B「副次発射」は以前の、アナログ無線機では、局部発振器の出力が受信機入力から漏れる(ローカルリーク)が支配的でしたが、最近は復調部やデジタル信号処理部にDSP、CPU等が多用され高速なクロック源が複数搭載され、電源部にスイッチング電源が用いられることから、妨害波の発射要因が複雑化しています。

C 無線設備規則 第二十四条 では、「副次的に発する電波が他の無線設備の機能に支障を与えない限度は、受信空中線と電気的常数の等しい疑似空中線回路を使用して測定した場合に、その回路の電力が4nW以下でなければならない。」と規定されています。この値は、「スプリアス領域における不要発射の強度」のように、100kHzや1MHzの参照帯域幅当たりではなく、全周波数帯の電力ですから注意が必要です。ただし、携帯電話や無線LANでは、100kHzや1MHz帯域当たりの電力密度で規定されているものもありますので、それぞれの該当する無線設備の種別ごとに確認する必要があります。

D ちなみに、現在は日本では4nW(−54dBm)が標準ですが、欧州(ETSI)や米国(FCC)では2nW(−57dBm)が標準になっていますので、注意が必要です。
以前は電界強度で規定されており、欧州や米国は終端で規定されていたのに対し、日本は受信機入力電圧が開放端で規定されていたため、電力に換算したときの誤りが原因のようです。以前は日本の測定器メーカのSG(標準信号発生器)と欧州や米国の測定器メーカのSGでは開放端表示(emf)と終端表示の違いから、安易に表示値を用いると受信感度が2倍異なるという問題がありました。

E 短波帯の無線機が主流であった頃の「副次発射」は「受信空中線から輻射される電波の強さが輻射する位置から1.8kmの距離において0.3μV/m以下であること。」と電界強度で規定されていましたが、現在はこの規定は削除されています。
また、技術者には信じがたいことですが、以前は法令で「nW」が使用できなかったため、4ナノワット(4nW)ではなく、4000マイクロマイクロワット(4000μμW)と表記されていました。
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