Stay for You -番外-

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「よし、今日はここに泊まるぞ」

 汽車が駅に到着して、次の発車時刻までしばらくあった。そう思って、のんびりと車窓から外の風景を眺めていると、いきなり弘毅(こうき)が立ち上がった。

 網棚に乗せた荷物を掴むと、真雪(まゆき)の腕を取って立ち上がらせる。

 またかと、ため息をつく真雪。

「仕方ないなぁ」

 元気に歩きだす弘毅について行く。

 背中が大きく見える。当たり前のことに、自分は12歳の子どもで、弘毅は30歳の大人。見た目には相当に若く見え、年齢不詳の弘毅だが、やはり一緒に歩くと大人と子どもの差は大きかった。後をついて歩くのも実は一苦労だった。

 と、弘毅が振り返る。

「早く来いよ」

 それは昔、弘毅の後を追いかけて追いつけずに泣いていた時、差し伸べられた手と同じで、ニッと笑う笑顔まであの頃のままだった。

「ほら、迷子になるなよ」

 言って手を差し出す。途端に真雪は天の邪鬼になる。

「何言ってんの。迷子に気をつけるのはそっちでしょ」

 ぷいっとそっぽを向いて、立ち止まる弘毅の脇を擦り抜けて、先に列車を降りた。慌てて弘毅が後を追う。

「何だよ、そんなに俺と手をつなぐのが嫌か?」

「子ども扱いしないでって言ってんだよ」

「だって子どもだろ、お前」

 ピタリと立ち止まる。くるりと振り返り。

「そうだけどね、峻である僕は弘毅と一つ違いなんだけど、そのこと分かってる?」

「分かってる、分かってる」

 にやにや笑う弘毅。

「だからちゃーんとベッドの上では一人前に扱ってるだろ?」

 言った途端、弘毅はむこうずねを蹴り飛ばされた。そのまま歩きだした真雪に置いてきぼりをくらう。

「あっ、まてっ、待てよ、真雪――っ」

 蹴られたすねを押さえながら、弘毅は真雪の後を追う。

 弘毅の生まれ故郷に向けて町を発ってから3日目のことだった。



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