第5章
性徴
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「青い翼を持った、竜の気を持つ者ね…」
杳を家まで送り届けて自宅に戻ると、潤也が待っていた。もう夕刻だが、今までどこに姿をくらましていたのやら。
その潤也に、杳の話していた内容を伝えると、腕組みして考え込んだ。
「ああ。杳の話だとな。だけど、俺には…」
寛也は佐渡にはそんな気はまったく感じなかった。ましてや同族の竜とは。
「ヒロは僕と新堂くん以外の全員と、最初に顔を合わせているよね?」
「ああ。だけどその中になんか、いねぇよ、あいつは」
竜として目覚めて、雪乃に連れて行かれた洞窟には、目覚めなかった潤也と、自ら封じていた新堂紗和の二人以外の全員が集まっていた。名乗りたがらなかった者もいたが、あの中に佐渡はいなかった。これは間違いない。
「だったら、残る竜族は父竜ってことになるけど?」
「げっ」
驚く寛也に潤也は笑って続ける。
「それこそ有り得ないよ。いくら気配を隠していても、僕達にもそれなりのものを感じる筈だからね。むしろ考えられるのは、竜の気を持った翼あるもの――青雀」
それでもやはり寛也は驚いた。父竜の左足を砕いて作られたと言う鳳凰の名に。
「それなら十分考えられるよ。翔くんの予想通りだし」
潤也は呟くように言って、ため息をついた。寛也も、青雀が校内にいると言っていた翔の言葉を思い出す。
「杳が敵じゃなくて良かったね。これじゃ、正体、丸分かりだ…」
敵が自分達をおびき出そうとしていることは分かった。もし杳が敵にいたら、寛也も潤也も翔も、とっくに敵に正体がばれていたことだろう。
「んで、どうするよ? 敵が分かったんだ」
「…うん、そうだね」
潤也は思わぬ所で知った情報に苦笑する。
「とりあえず、杳に手を出さないように脅迫状でも出してみるところから始めようか」
自分の正体は、あくまで示したくないらしい潤也に、寛也は眉をしかめる。潤也はその寛也にクギを刺す。
「ヒロは勝手なことしなくていいからね。ただ、杳を守ってて」
言われてムッとする。性格的に、守りは苦手だった。そう言うと、潤也に睨まれた。
「そう言うことは、ちゃんと羽化してから言ってよ。今は力を使えない繭状態なんだから」
舌打ちする寛也に見向きもせず、潤也は立ち上がった。
「翔くんには伝えておくよ」
口調はいつもの通りで、表情も差ほど変わらない。が、その目の奥には厳しい色が浮かんでいた。
青雀の何たるかを知らない寛也には、潤也のその目の色の意味が分からないでいた。自分の正体を知られたくない為に、学校で生徒が襲われているのを見ても助けようとしなかった、その意味に。