第2章
かわいた雨
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 完――になるわけないわけで、オレは何とか生き延びた。

 目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。連絡を受けてすっ飛んで来た両親にこっぴどく叱られ、オレはその日のうちに退院した。

 オレの入院していた所は、水無瀬村のあった所から数キロ離れた町の病院だった。

 オレを運び込んで家へ連絡してくれたのは、大学生風の男の人ということだから、きっと静川さんに違いないと思う。だったらあの人も助かったんだろう。

 静川さんは事を済ませると、急ぐからと言って帰ってしまったと、看護師さんが教えてくれた。

 今になって思うけど、あの人って一体何者だったのだろう。

 帰りがけ、水に押し流された人々はどうなったのかと聞いてみた。そうしたらその看護師さんからは、思ってもなかった答えが返って来た。

「大雨? 洪水? 水無瀬村なんて村、この近くにありませんよ」

 オレは目を丸くした。

 そんな訳はない。あったはずだと、オレは地図を広げてみた。だけど、そんな地名は本当になかった。ただ、山の奥にある池の縁の道にバス停が一つあり、そこの名を水無瀬と言った。

 かつて村があったのかどうか。だけどオレは現にこの足で行って、村を見て来たんだ。夢でも幻でもなく。

 とにかく明日は仕事があるからと急かせる両親に連れられて、オレはその地を後にした。

 竜神を祭った村。

 夢なんかじゃなかった。現実にあったことなんだ。

 その証拠に今オレの手にはあの御堂で見付けた妙な形の首飾り――竜の勾玉があった。




   −了−



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