第1章
いのちの闇
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 浅葱の言葉を理解しないまま、優はこの日、浅葱と別れた。

 浅葱はそのまま、病院へは戻らなかった。

 聞いた話によると、卒業式にだけは自分で言ったとおり律義に顔を出したという。

 その後、浅葱の姿を見かけた者はいなかった。しかし、多分浅葱とはいつか出会うことになると、優の中のどこかが知っていた。

 律義と言えばもう一点。

 優に持っていろと言った古い巻物は、浅葱に突き返した筈だったが、いつの間にか母が浅葱から預かっていたことが、後になって分かった。

 浅葱がいなくなったからと言って誰も騒ぐ者などいはしなかった。

 優にはそんな浅葱が、一族の腐った血を一身に背負って行ってしまったような気がした。

 神聖な巫女の血を引くと言うが、実際は財産をねらう汚い一族。

 優の中にも流れる、杉浦の血を。




 優が竜となって目覚めるのはそれから2カ月程先のこととなる。

 そして浅葱の言葉の意味を理解するのは、それよりもさらに後のことだった。




   −了−



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