■ 遠い約束 ■
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ぼんやりと、夢の話を語るセレムの横顔は星明かりにきれいに浮かび上がる。フェザンの上着を握り締めて、ひとつずつゆっくりと思い出すように。
「でもね、顔が分からない。大切な人だと思うのに…」
繰り返し繰り返し囁きかけてくる言葉。守ってやるからと。思うと苦しくてつらくて眠れないのだと。
「太子…じゃないのか?」
フェザンの自虐的な言葉に、しかしセレムは首を振る。
「誰だか、分からないんだ」
「うそ…だろ…」
フェザンは信じられない思いでセレムを見る。
「ここに来たら会えそうな気がして。おかしいだろ、こんな夢の話なんか気にしてさ」
そう言うと、セレムは何かをふっ切るように腰を起こす。
「さてと、そろそろ帰ろうかな。明日から敵陣と激突するらしいから。フェザンに話したら何だか今日は眠れそうな気がしてきた」
そう言ってフェザンを振り返る。あの、どこか寂しげなものではなかったが、柔らかにほほ笑んで。
そのセレムをフェザンは思わず抱き締めていた。
「…フェザン…?」
涙があふれて止まらなかった。
少し冷えたセレムの身体をきつく抱き締めて、フェザンは声を聞いた気がした。
――側にいるよ、
フェザン…――
Fin...