■ 野犬 ■

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「森の中で迷ってな、腹も減り、つい、口にしたものにあたったらしくて。多分、あのキノコだと思うんだが」


 言い訳がましく言うレイヴァンに、セレムは大きくため息をつく。


 どうやら何か禁じられていた物を口にしたらしく、呪いがかけられたのだと言う。


「思い人の愛を受けたら元に戻れるって言うもんだから、偶然見かけたお前を追いかけてしまった」


「…もういい、もういいよ」


 どこまでが本当で、どこまでが嘘なのか判別できない言い訳を、セレムは大きなため息とともに終わらせる。


 「呪い」なんて言っているが、本当ばどうだか分かったものではない。


 以前に聞いたことがあるような言い訳も、嘘にしか思えなかった。


 所詮、この男のことだから。


「お前には感謝している。俺の身体を元に戻してくれたんだからな」


「無理やりやっちゃった癖に。僕、本気で死ぬかと思ったんだっ」


 プイッとそっぽを向く。そのセレムの前に回り込んで。


「だから謝るって。今夜はちゃんとベッドの上で優しくしてやる」


 レイヴァンはそう言ってプクッと頬を膨らませたままのセレムを抱き締める。唇を近づけて。


「愛してる、セレム」


「ん、もうっ」


 ふて腐れた表情を浮かべながらも、セレムはレイヴァンの口づけを受け入れた。


 深い深い森の奥でのことだった。












-END-







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