■ 学校祭
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「あーっ、炎竜ーっ!」
「おまえ…静川の妹っ!」
お互いに指さしてしまった。
それは、つい先日会ったばかりの竜神達の一人。炎竜の結崎寛也さんだった。
「何だ、知り合いか?」
ナンタラさんが寛也さんに聞く。
「ああ、ちょっとな」
寛也さん、少し私のこと睨んでいる。もしかして、まずかったのかな。炎竜って言ったの。
「それより、杳、見なかったか?」
「何だ。また逃げられたのか?」
からかい口調のナンタラさんに、寛也さんはムッとする。
「人聞きの悪いこと言うな。逃げられたのは佐渡だ。ミスコンの話をしたら途端に逃げ出したって、今、血眼になって捜してるから、その前に見つけだしてやろうと思ってな」
「相変わらず…」
ナンタラさんは少し呆れながらも教えてあげていた。
「杳ちゃんなら、さっき三線校舎の方へ走って行くのを見たぞ。教室じゃないか?」
「サンキュー」
言ってそのまま走り出そうとする寛也さんを、私は思わず呼び止める。
「あのっ。杳さんって、あの杳さんのことですよね? あたしも捜すの手伝います」
「やめとけって」
寛也さんが困ったような顔をすると、ナンタラさんが私を制止する声とが重なった。
「馬に蹴られるぞ」
「は?」
何のことかと首を傾げる私。その隙に寛也さんはさっさと行ってしまった。
あーあ、杳さんに会えると思ったのに、残念。ま、校内をぶらついていたら、そのうち会えるとは思うんだけど。あの人、目立つし。
「ねぇねぇ、美奈。今の人、すっごいイケメンね」
「はい?」
私の腕をつついて、さつきが言った。今の人って、寛也さんのことかな。イケメン…?
首を傾げる私に、ナンタラさんが教えてくれた。
「結崎兄弟は人気あるぞ。ま、兄貴のアイツはともかく、弟の方は、成績優秀スポーツ万能の男前生徒会長だからな。かなりモテるぞ。彼女もいないし」
「へぇぇぇぇぇ」
寛也さんは、潤也さんと比べて「ともかく」なんだ、やっぱり。
「じゃあ、どこ行きたい?」
ナンタラさんが、氷を食べ終わった私達にそう聞いて、立ち上がった。
* * *