■ 学校祭
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校舎の中は高校の文化祭らしく、展示やら販売やらが多くて、私達の高校と大して変わらないって思った。でも、校舎の中庭ではお祭りの屋台のようなものがあった。火気を使うタコ焼き屋なんかもあって、いいなぁってさつきが羨ましがる。ここの実行委員会って、融通が利くんだなぁ。
少し暑くなってきたので、私達はかき氷を買い込んだ。かき氷はやっぱりイチゴでしょう。
そして私達は屋台の近くにいっぱい並べられているベンチに座って一息ついた。
「後でタコ焼きも食べなくっちゃね」
「はいはい」
食欲旺盛な由加に適当に答える。オトコ探しはどうしたの? 思ったけれど、ツッコンでみるのは止めておいた。楽しければいいか。
「君達、他校の生徒?」
ふと、隣のベンチに座っていた人達が声をかけてきた。制服を来ている所を見ると、ここの生徒らしい男子二人組みだった。胸のバッチはVG。1こ上ね。
「光南ですぅ」
由加が早速可愛い子ぶる。相手が男子なら誰でもいいのか、あんたは。
「へぇ。頭いいんだ?」
「そんなことないですよぉ。情報処理科ですもん」
一応、学力レベルを言うと、普通科対決では私達の高校の勝ちってのは知られてる。けど、あくまでもこれは合格ラインのことで、トップクラスになると全国模試でも良い勝負みたい。加えて、学科が違うしね。実は、私達の高校とこの高校って、ビミョーな関係なんだよね。
「じゃあ、パソコン得意なんだ?」
「んー、ちょっとだけね」
答える由加の横で、さつきがため息をついている。
「で、今日は友達に会いに来たとか?」
「違いますー。新しい出会いを求めて♪」
言うか、はっきり。私は慌てて止めようとしたけど、その前にVGのお兄さん。
「じゃあ、良かったら俺らが校内を案内しようか?」
「えー、いいんですかぁ?」
ちょっと待て、由加。あんたはこのレベルでもいいのか? おっと、失言。
「いいよ、いいよ。君達、可愛いし」
「えー、そんなー」
由加ぁあ。
ガックリと首を垂れる私に、さつきがまあまあと宥める声が聞こえた。
「俺、小早川亘(こばやかわわたる)。こいつは同じクラスの三宅良信(みやけよしのぶ)」
どうもと言って頭を下げる三宅って人は、この口の軽い小早川ナンタラとは少し違って、私達のことをどこかうさん臭そうに見ている。
うさん臭いのは由加だけなのに。
「どうせなら3対3がいいよな。誰かもう一人捕まえて…」
ナンタラさんは呟きながら辺りを見回し、通路を早足に通り過ぎる人影に気づいた。
「おい、結崎」
キョロキョロしながら歩いていたその人は、名前を呼ばれて振り返った。それは、見覚えのある顔で。