■ 学校祭

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「玉高の学校祭?」

「そ。土日は一般公開してるから、入れるみたい。いとこのお姉ちゃんがOGで、パンフもらったんだ。一緒に行こう?」

 そう言って由加は、手にしていた他校の学校祭のパンフレットを私達の前へ差し出した。

「またぁ…。由加のオトコ探しに付き合って行く学校でもないでしょ」

 目的がまる分かりだと、さつきはヒラヒラと手のひらを振りながら、興味なさそうに答えた。

 確か、あそこって、杳さんの通ってる高校じゃなかったっけ? でもって、潤也さんとか、その他の付属品もいた筈。その顔触れを思い出して、思わず口走る。

「レベル、高いかもよ。あそこ」
「ホントー?」

 すぐに食いつく由加。

「美奈、知り合いでもいるの?」
「ん。まぁね」

 携帯の番号を教えてもらっているのは翔くんだけだけど、ま、案内役としては不足はないでしょう。なーんて、竜神達の筆頭だと言うことすら失念して、私より少し背の低い同級生の男子を思った。

「じゃあ、行こう。当日、ミスコンもやってて、飛び入り参加もOKなんだって。自己PRの絶好の場所だと思わない?」

 出るのか、あんたは。

 ミスコンはともかく、どうせ他に予定がある訳でもない私達は行くことに決まってしまった。


   * * *


 この高校は、同じ市内にあるけど、学校の雰囲気は随分違う。私達の通う高校は干拓地の中にある為、田圃に囲まれているけど、ここって、市内中心部の住宅区にあるのよね。町中にある学校って言う、ちょっと見慣れない景色にドキドキしながら、私達は校門をくぐった。

 土曜日なので、生徒の家族も来ているらしく、制服じゃない普段着の人達もかなりいて、私達私服JKも目立つことはないようだった。

「去年、竜巻に見舞われて校舎が全壊したって聞いたけど、全然そんなふうには見えないね」

 私達の高校よりずっと古い高校なのに、竜巻で建て直したお陰か、校門を入って正面の校舎は真新しかった。ちょっとうらやましいかも。

「で、どこから行こうか。体育館で劇もやってるって」

 由加がパンフレットを広げて言う。午後からのミスコンにちゃっかり受付を済ませた後で。当然、私は拒絶したんだけど、この悪友は勝手に私の名前も参加申込書に書いてくれちゃって、怒り心頭の私に気づいた様子もないように。

 客観的に見て、私達って、その他大勢だと思うんだけど、自覚がないのか、この子は。

 ま、いいわ。そんなことよりも。

 私は辺りをキョロキョロとうかがう。結局、翔くんにも連絡を入れられなかった。そうよね、連絡用にもらった携帯番号って、一大事の時に使うって言ってたものね。敵に襲われた時とか。関係ない時に連絡してて、いざって時に狼少年のようになっても困るし。

 それよりも、杳さんとか、潤也さんとかの方がいいんじゃないかな。

 どこに行けば会えるんだろう。少なくとも、観劇してたんじゃ、会えないと思うんだけど。

「出会いはやっぱり会場見学しかないでしょう」
「さんせーっ」

 さつきの提案に、由加が手を挙げて主張する。ミスコンに出るんだから、あんたはもういいでしょうに。


   * * *



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