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はしらのはなし・63

 わたし63番は、モノレール終点のすぐ目の前にあります。ここにいると、人々がいろいろな方角から、いろいろな方法で遊園地へやってくるのを見ることができます。
 右から来る人、左から来る人。モノレール利用の人、自家用車の人、バスで来る人、歩いてくる人。自転車やバイクもありますよね。
 わたしはそれらの統計をとって、世間に発表してみたくなったのです。そうすれば、何か遊園地の役に立ちそうな気がしたものですから・・。毎日一生懸命に人の数を数えました。

 けれども結局、きちんと数えることは一度もできませんでした。春は遊園地の桜にみとれてしまうし、夏は蝉の声に聞き入ってしまう。静かなときには、遊園地のジェットコースターに乗る人が「ヒャー!!」と叫ぶ声が聞こえます。日が暮れてくると、目の前のボーリング場から「ゴロゴロカッポーン!」と、ボーリングの心地よい音が聞こえてくるのです。そのたびに、気が散ってしまうのでした。遊園地やボーリング場で自分も遊んでいるような心地になってしまうのでした。

 


(63番の隣は62番の片足。)

 

(2006年12月 /記)