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はしらのはなし・43

 モノレールが開業してから1年ほどたった1967年(昭和42年)5月、実はちょっとしたトラブルがありました。私、はしらの43番付近で、遊園地へ向かうモノレールが動かなくなってしまったのです。送電線の故障で、停電してしまったのです。

 40人ほどの乗客は、車内に取り付けられていた救助袋を使い、やっとこさ地面へ降りました。5月始めの飛び石連休の間の日だったので、満員ではなかったけれど、もちろん小さい子どもも乗っていたし、身重のご婦人もいましたから、大変なことだったと思います。私は「はしら」なので、ただ見ているしかありませんでした。

 長い月日がたち、その日のこともすっかり忘れていました。遊園地が閉園することになり、懐かしさを求めて訪れる人が増えたある日のこと、しみじみと私たちを見上げながら歩くご婦人がいました。連れの若い女性と幼い子どもに、「このあたりだったかなあ、モノレールが停まっちゃたところ!あなたがおなかの中にいてね、お兄ちゃんはユウちゃんくらい小さかったし、もうどうしようかと思ったわよ!」なあんて話しているではありませんか!これはこれは、あのときはご迷惑かけました。当時生まれていなかった彼女がもう子どもを連れているのだもの、私たちが古ぼけるのも仕方ないですねー。

 

 

(参考:朝日新聞縮刷版・1967年5月号)


(2005年7月/記)