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はしらのはなし・33番

 「アドバルーン」って知っていますか?お店が開店した時など人を集めたい時に使う、空に浮かぶ広告塔です。

 向ヶ丘遊園モノレールが開通した昭和41年4月にも、そのアドバルーンが空に浮かびました。「祝 モノレール開通」と書いてありました。あの頃はマンションのような背の高い建物はほとんどなくて、よほど遠くからでもアドバルーンがのぞめたことでしょう。

 アドバルーンに誘われて小田急線の向ヶ丘遊園駅*に下車すれば、ピカピカの車体のモノレール、そしてそれを載せた、まっさらで汚れひとつない私たち「はしら」の列が人々を迎えました。もちろん、乗り物の方ばかりが注目されて、私たちのことなど誰も見ていなかったようですがね・・。

 でも、いいんですよ、私たち「はしら」なんて見えていなくたってね。モノレールに乗った人たちが、アドバルーンのように空を飛ぶ気分を下から支えることが、「はしら」の役目なんですから。33番でした。

*・・昭和30年4月、稲田登戸駅から改名。


(はしら達が近頃見ている「空に浮かぶもの」というと、二ヶ領用水沿いの建物の
てっぺんになぜか載っかっている、一艘のボート・・である(写真左上))


(私鉄の高架化工事の現場で、できたての「はしら」を見つけた)

(2003年7月/記)