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はしらのはなし・25番

 つくしとか、竹とか、木賊(とくさ)とかいうのは、地下茎を横にのばして増えてゆく植物です。竹や木賊は管理をしないとたちまち増えて、そこいらじゅうから顔を出して、荒廃した風景を作り上げます。
 でも、つくしは小さくて、たいてい空き地にちんまりと増えていて、見た目はかわいらしく、春を迎えたことを見る人に感じさせて、なかなか人気者です。

 ある春先、ひとつのつくしが暖かさに誘われて土から顔を出しました。そこには大きなはしらが先に立っていました。それで、つくしは当然こう思いました。「はしらさんも土から生えてきたのですね。ずいぶん前に生えてきたのですね、少し汚れているみたい。」でも、はしらは何も言いません。
 それで、つくしは更にひとりで思いました。「わたしももう少ししたら、番号がつくかしら。」やっぱり、はしらは何も言いません。でも、少し笑っているようにも見えました。

 残念ながら、つくしは番号をもらえなかったし、はしらほど長く立っていることはできませんでした。
 はしらは自ら増えることもなくて、竹や木賊みたいに荒廃した風景を作り出すとも思えないのですけれども、やっぱり立ち続けることはかないませんでした。

 これが、はしら25番のお話です。


(撤去のため、つくしは先に根こそぎ消えた)

 

(2004年1月29日/記)