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はしらのはなし・12番


(2001年9月。 写真中央が12番、左の方に小さい花屋さんが見える)

 切ってるよー!モノレールを切ってます(下の写真)!でもなにか変だな?
わたし12番は、すぐそばの花屋さんのお仕事をずっと見ていたから知っているんです、切り方。花屋さんは、 剪定ばさみを使って花束の根っこに近い方をパチン、と切ります。そうすると、水の吸い上げが良くなり、お花がいきいきとしてくるのです。そうして、きれいな包装紙に包まれて、うれしそうな誰かに持ち帰ってもらうのです。パチン→いきいき→ニコニコ。「切る」ってそういうものだと思っていました。

 私たちモノレールを「切ることになった。」という話をきいたので、楽しみにしていました。モノレールの車両の響きを聞かなくなってしばらくたち、全体に汚ればかり目立つようになっていた頃なので、パチンと切ることでお花のようにいきいきと活気がでるかなあ、と。
  ずいぶんと下準備に時間がかかりました。私たちはしらの回りをブルーシートで囲ったり、鉄骨で作業台を作ったり。お花を切るのとは違うなあ、と思いました。お花の茎ほど、私たちは柔らかくないんだということに今頃気づきました。そりゃあ三十数年間、モノレールに人を乗せて走らせていたのだものなあ。・・と思ううち、目の前でビィィーン!とものすごい音と震動が始まりました。お花の剪定ばさみとは形も大きさも違う機械で、コンクリートを切っているのです。コンクリートだったなあ・・。お花じゃないものなあ・・。1メートルくらいの長さに切断して、ひもでくくって慎重にトラックに乗せられ、遠くへ運び去られる順番を待つのは、あまり楽しいことではありません。


(2002年9月。はしら11番と12番の間の切断作業中)


(2005年5月・記)