オレゴンは、1970年にポール・ウィンター・コンソートから分離独立したグループです。4人の メンバーは、主楽器の他に色々な楽器を操り、多彩な音を出すことができます。演奏は、ジャ ズ・現代クラシック音楽・民族音楽を癒合させて、自由な編曲を行った上で、即興演奏を行うと いうものです。一種の室内楽といえるような音楽です。 オレゴンの演奏は、私が最も好きな音楽です。 オリジナル・メンバーは、以下の4人。 ポール・マッキャンドレス:オーボエ、イングリッシュ・ホルン、バス・クラリネット、ソプラノ・サク ソフォーン、フルート、ウィンド・シンセサイザー、等 ラルフ・タウナー:クラシック・ギター、12弦ギター、ピアノ、シンセサイザー、トランペット、等 グレン・ムーア:コントラバス、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、フルート、等 コリン・ウォルコット(〜1984):タブラ、シタール、ハンマード・ダルシマー、パーカッション、ギタ ー、クラリネット、等 1984年の欧楽旅中の自動車事故で、コリン・ウォルコットが死去した後、1986〜1991年の 間、タブラ・パーカッション奏者のトリロク・グルトゥが参加していました。その後は3人だけで活 動をしていましたが、1997年に、2人のドラム・パーカッション奏者をゲストに迎えてCDを制作し た後、そのうちの1人であるマーク・ウォーカーを1999年からメンバーに迎えています。 メンバーの略暦は以下のとおりです。 1) ポール・マッキャンドレス 1948年、米国ペンシルベニア州メッドヴィル生まれ。マンハッタン音楽院、ダンケスク大学に 学び、ピッツバーグ交響楽団のオーボエ奏者を経て、1968年ウィンター・コンソートに参加。そ こで、オレゴンのメンバーに出会う。1971年、NYフィルハーモニー交響楽団のイングリッシュホ ルン奏者オーディションに合格。 2) ラルフ・タウナー 1940年、オレゴン州ヴェンド生まれ。オレゴン州立大学で作曲・楽理を学び、ジャズ・ピアノを 習得。1964年と1966年にウィーンに留学し、カーシャイト教授に師事してクラシック・ギターを修 める。1968年にウィンター・コンソートに参加。そこで、12弦ギターの演奏を強要され、「指が壊 れる、助けてくれ」というコメントを残しています。 3) グレン・ムーア 1941年オレゴン州ポートランド生まれ。オレゴン大学で歴史学を専攻。コントラバスは、ゲリ ー・カーにも師事。1968年にウィンター・コンソートに参加。 4) コリン・ウォルコット(〜1984) 1945年ニューヨーク生まれ、1984年ドイツにて楽旅中の自動車事故にて死去。インディアナ 大学でパーカッションを専攻。カリフォルニア大学で民族音楽を学び、パーカッションをジョー ジ・ゲイバー、ウォルター・ローゼンバーガーに師事。また、ラヴィ・シャンカールのロード・マネ ージャーを勤めながらシタールを師事するとともに、アラ・ラーカにタブラを師事。1968年に、ウ ィンター・コンソートに参加。 オレゴンは1960年代に、ラルフ・タウナーとグレン・ムーアのデュオで始まりました。ここでは、 ビル・エバンスとスコット・ラファロを目指したそうです。オレゴン州出身の2人は、ニュー・ヨーク でデュオ・チームを結成、そこにコリン・ウォルコットが参加し、民族色が加わりました。その 後、ラルフ・タウナーが加入したウィンター・コンソートの同僚であるマッキャンドレスに、このトリ オによる演奏を聴かせました。このユニットがそのままウィンター・コンソートに取り込まれ、そ の後発展的に分離独立したのがオレゴンです。 オレゴンの公式な録音は、以下のとおりです。 1970:「Our First Record」;Vanguard VSD 79432 (LP) 1973:「Music of Another Present Era」;Vanguard VMD 79326 1973:「Distant Hills」;Vanguard VMD 79341 1974:「Winter Light」;Vanguard VSD 79350 1975:「In Concert」;Vanguard VSD 79358 (out of print) 1976:「Oregon/Elvin Jones-Together」;Vanguard VSD 79377 1977:「Friends」;Vanguard VSD 79370 1978:「Oregon Violin w/Zbigniew Seifert」;Vanguard VSD 79397 1978:「Out of the Woods」;Elektra/Asylum 6E 154 (CD release 1992) Discovery 71004 1979:「Moon and Mind」;Vanguard VSD 79419 1979:「Roots in the Sky」;Elektra/Asylum 6E 224 (CD release 1992) Discovery 71005 1980:「In Performance」;Elektra/Asylum 9E 304 (LP) 1983:「Oregon」;ECM 1258 1985:「Crossing」ECM 1291 1987:「Ecotopia」;ECM 1354 1989:「45th Parallel」;Portrait OR 44465 (CD release 1992) (out of print) 1991:「Always, Never, And Forever」;Intuition Music & Media INT 2073 2 1994:「Troika」;VeraBra Records vBr 2078 2 1995:「Beyond Words」;Chesky Records JD130 1997:「Northwest Passage」;Intuition Music & Media INT 3191 2 1998:「Music for A Midsummer Night’s Dream」Oregon Music 2001:「Oregon In Moscow」;Intuition Music & Media INT 3003 2 このうち、ライヴ録音である、ヴァンガード時代の「イン・コンサート」と、エレクトラ時代の2枚 組「イン・パフォーマンス」は、私としては最傑作と考えているのですが、CDで入手できませ ん。悔しい限りです。 コリン・ウォルコットが亡くなる直前の録音である、ECMの「クロッシング」は、偶然かもしれま せんが、過去15年間の音を総括したような内容になっています。私絶対に自信を持ってお勧め するCDです。 トリロク・グルトゥが参加している1987〜1991年の3つのCDは、オレゴンとトリロク・グルトゥの 個性が溶けきらず、「この1曲」という単位では良いのですが、CD全体で気に入っている、とい うわけではありません。(2つの個性を分離すると、どちらも大好きなだけに微妙な気分です) トリオ(三重奏)時代も、3人による同時録音にこだわった「ビヤンド・ザ・ワード」がお勧めで す。やはり、オレゴンの個性だけを抽出して同時即興演奏とした方が、良い結果が得られるよ うです。
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