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・富山県民と日本人とサッカー
    〜ドライビングテクニックの視点から〜

 私は高校時代、大学は県外へ行きたいと考えていました。とにかく富山にはいたくないと思いました。外向的な性格のせいかもしれませんが、高校3年生(1982)の時に、ワールドカップスペイン大会を見て「富山という枠」「富山のサッカー自体」がとてもちっぽけだと思いました。  ビジュアルの力というのは大きいものです。たまたまW杯の年に、今から見れば骨董品市にもなさそうなビデオデッキが我が家に登場し、何度もスロー再生しながらワールドクラスのプレーを見ました。そして同じプレーを体育館でやり、友達にそのときのフォームがイメージどおりか写 真に撮ってもらいました。そんなことをしているうちに「外にはいろんなものがある」「富山ってなにをとってもおくれているなぁ」「これじゃ若者にとって魅力があるはずがない」などと若き青年はs強く感じていたようです。
 しかし大学時代、県外へ出て初めて富山の「良さ」と「悪さ」がわかりました。いいところは食べ物がおいしいところです。結構好き嫌いがあったと思いますが、富山へ帰省したときの母が作る食べ物のおいしさに感激し、なんでも食べられるようになりました。かつての母の努力は無駄 ではなかったわけです。
 悪いところは、「引っ込み思案」「暗い性格」などは自他共に想像したとおりでしたが、以外にも「車の運転」に大きな違いを感じました。わたしは首都圏で免許を取り、最初の4年間はそこで運転していましたから、ドライビングテクニックの基礎(コーチ)は首都圏だったのです。
 帰省してみると、本当にびっくりしました。まず@「タクシーが遅い」(本来、安全運転はいいことです)A「譲ってもらっても気持ちのいい挨拶ができない」 B「自分にとっても他人にとっても有利な車線を的確に選択しない」 C「進路変更時にウインカーを出さない」 D「交通 渋滞したときに後方車両にハザードで知らせない」 E「2車線から1車線になる交通 渋滞では、譲り合いながら最善策でスムーズに解消しようとしない。例えば、100mも先から割り込み、後続もそれを真似するが故に、その分渋滞距離を伸ばしている。また、1台ずつ交互に入ろうとしないために接触しそうになったり、にらみ合ったりしている」ことでした。あとは逆に安全運転者が多く、「交通 事故は少ないだろうな」と思いましたし、最近では少しずつ改善されていると思います。  首都圏は基本的に交通量が多いために、車間距離が短くなります。富山でも朝夕の8号線を走ると時間に追われているせいか、とても短いです。こんな時にウインカーを出さないで進路変更すれば、後方車両はびっくりします。また車間距離はあっても後方車両のスピードを考慮に入れず、のんびりとゆっくり変更してきます。これも同じ方向を向いて走っている、いるいわば仲間なのに、裏切るような形でびっくりします。   このようなことは、ずっと富山で生活していたのに、気付きませんでした。そして、サッカーも「全くこれと同じだ」と考えたのです。高校時代でサッカーを辞めていれば、そうは思わなかったでしょうが、大学時代にみなさんが分かる人で言えば、長谷川健太(元清水エスパルス、現NHK解説)や井原正巳(現浦和レッズ)、中山雅史(現ジュビロ磐田)らと同じ環境でサッカーをしてくると、富山に帰りサッカーをしたとたん、「高校まではこんなサッカーを追求していたのか」「おかしい。状況判断が誰とも合わない。」と相当大きなギャップを感じ、本当にショックでした。
 車の運転は交通規則というルールのもとにあるいわばモータースポーツです。基本的には少しでも行動範囲を増やし、時間ロスをなくするためにつくられたものです。その中で1人の判断が狂えば、後続に迷惑をかけるばかりか、一定の流れを分断し、大きな事故にもつながります。これと同様のことがサッカーにおいても言えます。

 富山のドライビングテクニックと富山のサッカーを比較すると以下のように考えられます。
@ (Drive)   「タクシーが遅い」
  (Football)  「スピーディな展開力がなく、全体的に志気がのんびりしている」
A (Drive)   「譲ってもらっても気持ちのいい挨拶ができない」
  (Football)  「他者を過剰に意識し、オープンマインドになれず、自分を素直に表現できない」
B (Drive)   「自分にとっても他人にとっても有利な車線を的確に選択しない」
  (Football)  「判断の材料となる情報収集が少なく、ゴールまでの最も近い道のりを追求できない」
C (Drive)   「進路変更時にウインカーを出さない」
  (Football)  「前もってシグナルを出せない。コミュニケーション力に欠け、
         判断した ことを共有しようとしないためワンマンなプレーが増える」
D (Drive)   「交通渋滞したときに後方車両にハザードで知らせない」
  (Football)  「ディフェンス時において、危険な状態をカバーしてもらう意識に欠ける。  
        攻撃時にはサポートを受けようとしない。ひとりよがりなプレーになってしまう」
E (Drive)   「交通渋滞時に譲り合いながら最善策でスムーズに解消しようと…」
  (Football) 「どうすればこの危機を乗り越えられるのか、クリエイトできない。
        
誰もがやるようなプレーを発想し、他人任せになってしまう。リーダーシップをとれない」
   当然これは特徴的なもので、全部が上記に当てはまるとは思いません。
 サッカーにおいての良い資質(Good Quality)とは「Be Alert」「Creative Mind」「Good Communication」「Good Body Shape」「Good Habit」などがあげられますが、上に挙げたようなプレーは完全な「Bad Quality」です。また、これらはユース年代のウイークポイントになりがちな部分です。そして子供達だけでなく、大人社会においても車の運転を見る限り、サッカー(スポーツゲーム)にとって良くない習慣が見られるのです。  これは環境の違いからくるもので、良い環境を構築すれば改善は十分可能です。富山県でおこなわれたインターハイや国体のおかげで、一部のアスリートは良くなっていると思いますが、全体的にはまだまだでしょう。  そして日本と世界との関係も同じことが言えます。最近の日本代表が成長著しいのは、グローバルスタンダードのもと育成方針を改め、ユース年代から海外での経験をたくさん積ませ、良い環境・良い意識への改革が図られたからだと思います。
 数年前、あるサッカー雑誌にこう書かれていました。元ブラジル代表選手が高校生のある全国大会準決勝をみて「車で言えば、ギアを1速に入れたまま、ゴキブリのようにせわしなく走り回っている。調整が付かなく無意味にぶつかり合うシーンが多すぎる。それと緩急のない動きは、逆にスピード感を鈍らせている。あれでは冷静な判断はおろか、無駄 にエネルギーを消費しているだけだ。」と…。
 これを聞いた記者はこうコメントしている。「最初は失礼な人だと思ったが、もともと日本社会は規制で縛り、それに守られることが多い。自己判断の中でポジティブにコントロールする習慣に欠ける。ドイツのアウトバーンでは自分の力量 に応じて、流れに乗らないと、大きな事故につながる。いろんなスピードで走る人がいることを認識し、それに主体的に協調することでより安全運転につながるのだ。このような視点から、基礎力を積んだ上で、緩急ある変化に富んだベストプレーを心がけることがサッカーにおいても重要なのかもしれない。」
 サッカーは全体を把握しながら、一瞬の隙を見つけ、相手の裏をつく判断ゲームである。身体を鍛え、車で言えば性能の高い車にすることも大事だが、それを引き出す、的確で創造性に富んだ判断力をユース年代ではなんとしても養わなくてはいけない。
 それらをベースとできる、良い環境づくりを断行したいと今準備しています。

   

記載責任者:FC富山U−18コーチ 佐伯仁史
ご意見はこちらまで(hichan@sun.interq.or.jp)

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