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・うまい選手で満足するな! いい選手になれ!!
サッカーをするもの皆うまくなりたいと思うはずです。自分の最高のプレーをして自他共に自信を持ち、賞賛されたいものです。ジュニア期における指導者の情熱や情報化社会のおかげで、技術的に成長を遂げる選手は最近たくさんいます。ジュニア期のころは1人もしくは2・3人のテクニック・身体能力で試合に勝てたりすることはよくあることです。その結果
、テクニカル面において優れた選手はコーチや周囲から特別な待遇を受け、少しずつ自分は「他人とは違う」という自信に目覚めていくでしょう。多少問題点はありますが、それは当たり前の現象であり、ジュニア期ではできるだけ多くの子がそれぞれのレベルで味わなくてはいけない通
過点です。しかし高校年代ぐらいからはそれだけでは伸びません。
なぜでしょう。この年代前後は肉体の発達がピークを迎えます。計画的なトレーニングによって鍛えられた身体は、動きのスピードを増します。おのずといいサッカーも息を抜けない緩急あるスピード感の中でながれます。次の20歳前後へ行けばそれだけで通
用し なくなることもよくあります。
その中に入りサッカーをより楽しむために重要なことは、自分自身のテクニカルスピードを上げることも当然大切ですが、ピッチ上ではサッカー社会の1員になることです。自分のプレーを最大限に生かすためにも、1人ではこの社会は成り立たないことを認識することです。そしてそこにスポーツヒューマニズムと誇りを持てなくてはなりません。
ひとついい例があります。メキシコW杯で世界が絶賛した「マラドーナの5人抜き」です。「俺だってあんなのやってみたい。やればできる。」と思う少年はたくさんいると思いますし、思うべきです。
しかし、多くの人は勘違いしてしまいます。「マラドーナは天才」「おれだって富山ではドリブルがすばらしいと言われている」と…。たしかにドリブルのセンスはすばらしいものがあります。ビデオに撮ってある人はもう一度よく見て下さい。決してドリブルのスピード自体は速くありません。速攻でよく見られる、ハーフウエイラインぐらいからフリーになり、ゴールへ大きなドリブルで突進していくシーンより遅いです。あの密集地帯でそんなことをしたら相手ディフェンダーに引っかかります。ここでよく見てほしいのは他の選手の動き・ポジショニングです。画面
では2・3の選手しか見えませんが、マラドーナが絶妙な切り返しで1人目をかわし、フリーになった瞬間、いつでもパスをもらえる工夫をしています。私は観に行ったわけではありませんが、きっと画面
外の部分にもフォローに来ているでしょう。この全体の前にかかる動きや横に広がる動き、あるいはパスを受けるアイコンタクトやコミュニケーションが、ボールに対処する(On
The Ballに対する)ディフェンダー以外を釘付けにしたのです。
ですからここでは金太郎飴のように1対1の実践練習を5回させてもらったのです。あの時もし、フォローの数が少なかったり、動きの質が悪かったら簡単に2〜3人に囲まれていたことでしょう。それぐらいの判断はワールドクラスになればできます。実際マラドーナは、左にフォローしている味方選手の方を半身で向き(パスが出ると思ってしまう)ながら右へグッとかわしていってます。
またマラドーナの日ごろの驚異はドリブルだけでなく、あの左足から出される強烈なシュートや絶妙なラストパスが何よりも驚異だったのが大きな要因のひとつです。
イングランドディフェンダーの判断を鈍らせた、アルゼンチン攻撃選手全員のおかげなのです。
ジュニア期以降、サッカーの本当のすばらしさを知るためには、うまい選手で満足せず、お互いに助け合いながらいいチームプレーに結びつく、パーソナリティ(PERSONALLITY)を身につけて「いい選手」になることです。年を重ね、やがて「偉大な選手」になるためにはこの関門を絶対に抜けなくてはいけないといっても過言ではありません。
逆に言えば「いい選手」は、練習を積んでうまくなるだけで済むのです。
私は全く無名選手でしたが、スーパースターがたくさん集まる大学時代、その点でダメになってしまった選手や反対にそのおかげで大器晩成型の選手が開花したり「いいコーチ」になった友人ををたくさん見てきましたし、実体験もしました。
答えは以外と単純なところにあるものです。富山から1人でも「いい選手」を育てたいと切望します。