No.14
2002年3月15日
弁護団つうしん 発 行
ハンセン国賠訴訟西日本弁護団

熊本市京町2−12−43
TEL096-322-2515
FAX096-322-2573

  

 
新しい気持ちで
〜司法ルートの全面解決を迎えて〜
 

ハンセン国賠訴訟西日本弁護団代表

弁 護 士  八 尋 光 秀

 去る、1月30日午後3時、熊本地裁大法廷の傍聴席は満員となりました。入所歴なき原告及び遺族原告の人たちを、入所経験をもつ原告と支援の人たちが、温かくとり巻くように、心からの祝福を捧げたからです。

 裁判長もまた大きな喜びをあえて抑えながら、先の1月28日に厚生労働大臣と調印をすませた基本合意書及び和解条項に定める謝罪文言を確認し、宣言しました。

 「国は、熊本地方裁判所平成13年5月11日判決において認められた国の法的責任を深く自覚し、長年にわたるハンセン病隔離政策とらい予防法により入所歴なき原告らを含む患者・元患者の人権を著しく侵害し、ハンセン病に対する偏見差別を助長し、ハンセン病政策の被害者に多大な苦痛と苦難を与えてきたことについて真摯に反省し、衷心より謝罪する。」と。

 原告が受けてきたあらゆる苦痛と苦難は、その根本が国の誤った法律と政策にあった。誤った法律と政策が、社会の人々にぬぐいようのない偏見と差別を植え付けた。病気ではなくそのことが、原告の人権を著しく侵害し、苦痛と苦難を与えた。このように考えて国は法的責任にもとづいて謝罪をしました。

 社会の中にはハンセン病に対する誤った認識が今でも残っています。特定の場所では「厳しい現実」があるのかもしれません。

 しかし、暖かな日和をおもわせる現実も他方にあります。なにより、国の立法府、行政府、司法府の三権すべてが国が悪かったことをはっきり認めました。原告のみなさんはなにも悪くはなかった。本人も家族もなにも恥じることはない。恥じなければならないのは国だとして謝罪したのです。

 いろいろな問題があることは確かです。ただハンセン病問題は、国も法も政策も社会も変わる、新しい時代をむかえています。私たちも古い心をそっとしまいこんで新しい気持ちで歩きはじめられたらよいと思います。





宮里新一 生き直しコンサート

  4月12日(金)PM6:00開場 6:30開演
  熊本市総合女性センター多目的ホール
  入場料 前売り1500円 (当日2000円)

  全席自由

 昨年のたたかいの成果を受けて、新しい人生を模索する人たちが次々に出てきています。沖縄愛楽園の宮里新一さんは、音楽を通じて社会復帰をめざします。そのスタートを切るコンサートを熊本で開きます。
 恵楓園内外の有志で実行委員会をつくり準備を進めています。
 どうぞご来場ください。

        
     3月12日 くわみず病院昼休みコンサートで

 生き直しコンサートのホームページはこちら ⇒ 






入所歴なき原告の恒久対策

弁護士 神 谷 誠 人

 本年1月28日,国との間で,入所歴のない原告・遺族原告の損害賠償問題に関する合意が成立しました。これも昨年末から,原告団,支援の会のみなさんが,寒い中,東京で大要請活動を展開してくださったおかげです。入所歴なき原告を担当してきたものとして,心からお礼を申し上げます。

 入所歴のない方々は,療養所に収容されることこそありませんでしたが,ハンセン病に対する偏見差別,そして在宅治療制度の不存在・不備による被害は,療養所に収容された方々と変わらないものと感じています。

 「病気が発覚して村八分となり,家族もばらばらになってしまった」「病気を隠すために,友人・知人はもとより,家族にも秘密を持ち続けなければならない」「きちんとした治療を受けることができず,重い後遺症が残ってしまった」等など,社会内で生活していても,実際には社会から隔絶され,医療からも見放されてきたのが現実です。

このため,安定した仕事にもつけずに経済的に苦しいうえ,未だに「秘密」を持ち続けて身を潜めるような生活を強いられている方がほとんどです。

損害賠償問題は一応の決着をみましたが,このような現実をみる限り,入所歴のない方々が真の人間回復を手に入れるためには,まだまだ課題が残されているといわなければなりません。退所者給与金のような経済的支援制度の創設,在宅医療制度の充実等の恒久対策が実現されなければなりません。

また,最近,入所歴のない方のご遺族からも,故人や家族の辛い経験や現状を訴える電話を何件かかいただいています。これらを聞くと,ご本人のみならず家族をも巻き込んだ深刻な偏見差別の存在を痛感します。この入所歴なき方の遺族の被害回復も,忘れてはならないのです。

今後のハンセン病問題協議会において,入所歴なき方の恒久対策も協議課題とし,これら施策の実現を国に要請していきたいと考えております。

恒久対策実現のために,非入所原告団の結成を目指していますが,全国各地で,みを潜めるようにして暮らしている入所歴なき方々の力を結集することは容易ではありません。今後とも,原告団,そして支援の会のみなさんの力強いご協力をお願いいたします。



 

  (資料1)

 基 本 合 意 書

 

 ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会と国(厚生労働大臣)は、ハンセン病患者であった者が提訴時に死亡している場合の当該死亡者の相続人である原告及び入所歴のないハンセン病患者・元患者の原告が提起した訴訟に関し、次のとおり、司法上の解決(裁判上の和解)についての基本事項を合意した。

 

一 謝罪

1 国は、熊本地方裁判所平成13年5月11日判決において認められた国の法的責任を深く自覚し、長年にわたるハンセン病隔離政策とらい予防法により入所歴なき原告を含む患者・元患者の人権を著しく侵害し、ハンセン病に対する偏見差別を助長し、ハンセン病政策の被害者に多大な苦痛と苦難を与えてきたことについて真摯に反省し、衷心より謝罪する。

2 国は、入所歴なき原告を含む患者・元患者に対し、その名誉を回復し、精神的苦痛を慰謝することを目的とする謝罪広告を行う。

  謝罪広告の実施については、ハンセン病問題対策協議会において、すでに協議・決定され、予定されている謝罪広告に含めるものとする。

 

二 一時金の支払

1 国は、原告に対し、損害の賠償等として、平成13年12月7日に熊本地方裁判所が示した和解に関する所見を踏まえて、和解一時金を支払う。

2 相続人からの請求について、当該原告が相続人であること及びその相続分については、証拠に基づき、裁判所が認定する。

  原告は、相続を原因とする不動産の所有権移転登記手続に要する程度の資料を証拠として提出する。

3 ハンセン病療養所の入所歴のない者のハンセン病の発症時期については、平成13年12月18日付けの熊本地方裁判所の補充所見で示された医師による確定診断を基本とし、当事者間に意見の相違があるものについては、証拠に基づき、裁判所が認定する。

   原告は、診断書ないしこれに準ずる資料、陳述書等を証拠として提出する。

 

三 入所歴なき原告について

国は入所歴なき原告について、主として、合理的な理由のなくなった「らい予防法」を廃止しなかったために、ハンセン病療養所に入所させて治療を行うという政策の結果として、ハンセン病の治療を受けられる機会が極めて限られて、入所せずに治療を受けることが容易ではなかったことに基づく損害を与えたことを認める。

 

四 加算金等

1 原告は、遅延損害金及び弁護士費用の支払を求めない。

2 訴訟費用は各自の負担とする。  

  ただし、印紙代については、既に貼付した分を除き、全額国の負担とする。

 

五 名誉回復等の施策について

1 原告と国は、遺族による死没者の遺骨引取りが、死没者の名誉回復、ハンセン病に対する偏見差別の解消につながるものであるとの基本認識にたったうえで、死没者の遺志を尊重しつつ、遺族の遺骨の引取りにつき、それぞれ努力する。

2 遺骨の引取り等、その他の事項については、別途協議する。

 

     平成14年1月28日

 

                  ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会

会    長    曽 我 野 一 美

 

         厚  生  労  働  副  大  臣

桝  屋  敬  悟


 

 (資料2)

和 解 条 項

  

 原告ら及び被告国は、ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会と国(厚生労働大臣)との間で本件に関し締結した平成14年1月28日付け基本合意書に基づき、以下のとおり本件を和解によって解決することを合意した。

  

1 被告国(厚生労働大臣)は、熊本地方裁判所平成13年5月11日判決において認められた国の法的責任を深く自覚し、長年にわたるハンセン病隔離政策とらい予防法により入所歴なき原告らを含む患者・元患者の人権を著しく侵害し、ハンセン病に対する偏見差別を助長し、ハンセン病政策の被害者に多大な苦痛と苦難を与えてきたことについて真摯に反省し、衷心より謝罪する。

 

2 被告国は、原告らに対し、損害の賠償等として、別紙一覧表記載和解一時金金額欄記載の 和解一時金の支払義務があることを認める。

 

3 被告国は、前項の金員を、平成14年2月28日限り、原告ら訴訟代理人弁護士の銀 行預金口座に送金して支払う。

 

4 原告らは、本訴請求について、被告国に対するその余の請求を放棄する。

 

5 訴訟費用は各自の負担とする。ただし、印紙代については、既に貼付した分を除き、全額被告国の負担とする。





弁護団ダイアリー

1/10 弁護団会議(熊本)
熊本地裁和解期日
1/14 全国原弁会議(福岡)
1/16 生き直しコンサート実行委員会立ち上げ
1/17 弁護団会議(熊本)
1/18 熊本地裁和解期日
1/19〜20 奄美和光園説明会
1/21 由布問題で厚労省への要請・人権救済申立
1/24 由布問題で熊本県知事ほか九州各県知事へ申し入れ
菊池恵楓園説明会
1/27 長島愛生園・邑久光明園説目会
1/28 遺族・非入所基本合意成立
1/30 弁護団会議(熊本)
熊本地裁和解期日=司法ルートの全面解決
(80名和解成立)
2/1〜2 宮古南静園説明会
2/10 沖縄愛楽園説明会
2/11 沖縄退所者説明会
2/15 弁護団会議(熊本)
熊本地裁和解期日(28名)
2/16〜17 大島青松園説明会
2/21 24次提訴(10名)
2/23 全国原弁会議(大阪)
2/24 鳥取歩む会設立総会
2/27 中央認定審査会
3/5 菊池恵楓園説明会
3/13 弁護団会議(福岡)