No.13 新年号 2002年1月12日 |
弁護団つうしん | 発 行 ハンセン国賠訴訟西日本弁護団 熊本市京町2−12−43 TEL096-322-2515 FAX096-322-2573 |
新年のごあいさつ
新しい年も共に前進を
西日本弁護団代表 弁護士 徳田靖之
国賠訴訟が始まってから4度目の正月です。皆さんいかがお過ごしでしょうか。
昨年は文字通り劇的な1年間でした。熊本地裁第1陣の結審に始まり、5月11日の歴史的な杉山判決を受けて、国の控訴断念による勝訴確定、基本合意書の締結と続いた「夏の陣」、在園保障や退所者給与金の創設をはじめとする恒久対策の合意を勝ち取った「秋の陣」、そして入所歴のない原告と遺族原告に和解の道を切り開いた「冬の陣」、全く息を抜く暇もなく走り続けた1年間でした。
1年前、誰がこうした素晴らしい成果を勝ち取ることが出来ると予想できたでしょうか。
原動力となったのは、まさに原告の皆さんの怒りと涙の行動でした。国がこれほどまでに完敗した事件で控訴しなかったというのは、史上初めてのことです。国にその決断を余儀なくさせたのは、首相官邸を包囲し、小泉首相や坂口厚労相に面談あるいは手紙、メールやファックスをとおして被害を訴え尽くした一人一人の原告の行動でした。
頑迷な厚労省の抵抗を封じ込め、到底早期実現は困難と思われた退所者給与金の創設を実現させたのは、副大臣との協議をはじめいつも全国各地から200人を超え結集し続けた、退所者原告団の団結とその代表による涙の訴えでした。私は、副大臣交渉の会場の片隅で訴えを聞きながら流した涙を一生忘れることはないと思います。
そして、圧巻だったのは、入所歴のない原告や遺族原告の和解を求めての12月の大行動でした。熊本地裁の法廷で、自らの被害をはじめて語った入所歴のない原告の訴えは、私たちの想像をはるかに超えるすさまじいものであり、愛する父を恥じた自らを責めながら立ち上がった遺族原告の涙は鮮烈でした。その訴えこそが、裁判所の合計3度に及ぶ和解勧告を導いたのです。しかし、運動の前面に出うる人はごく少数にかぎられました。その制約を乗り越えて和解への道を切り開いたのは、その被害を自分たちと同じものと正面から受け止めて、再び全国から厚労省前に結集した300人もの原告団でした。
私は、皆さんのそうした行動に感動し、多くのことを学ばしていただきました。心から感謝し、このような歴史に残る活動に皆さんと共に参加できたことを誇りに思っています。
新しい年は、いよいよこれらの成果を現実のものにしていく闘いが始まります。すべての原告について和解を成立させ、社会復帰を勝ち取り、差別と偏見を一掃する困難な闘いをやりぬかなければなりません。真相究明のための息の長い作業も始まります。一人一人の訴えと行動こそが困難な状況を切り開くという教訓を胸に刻み込みながら、共に怒り、共に泣き、共に歩んでいきましょう。
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(資料1) ハンセン病問題対策協議会における確認事項 厚生労働省とハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会、同全国弁護団連絡会及び全国ハンセン病療養所入所者協議会(以下、合わせて「統一交渉団」という。)とは、平成13年5月25日の内閣総理大臣談話及び同年7月23日の基本合意書に基づき、ハンセン病問題対策協議会を開催し、ハンセン病問題を早期かつ全面的に解決するべく、隔離政策によってハンセン病の患者・元患者らが被った様々な被害回復のための恒久対策等を協議・検討してきたところである。そして、いくつかの被害回復の施策について合意に達したところであり、これまでの協議において合意に達した点及び残された課題と今後の協議方法を確認することとする。この確認事項に記載のない事項については、この間の協議会の議事録による。 一 謝罪・名誉回復 厚生労働省は、熊本地裁判決において認められた国の法的責任(以下、「法的責任」という。)を踏まえ、ハンセン病に対する差別偏見を解消し、ハンセン病患者・元患者の名誉を回復するため、以下の各措置の実施に最大限努める。 1 平成13年度中及び14年度の早い時期に、全国紙及び地方紙に、厚生労働大臣名の謝罪広告を掲載する。なお、その広告には平成13年5月25日の内閣総理大臣談話及び同年6月7、8日の衆参両院決議を併せて掲載する。 2 全国の中学生に対し、ハンセン病問題に対するパンフレットを配布する。その内容については、患者・元患者の意向が反映されるよう今後協議する。 3 その他今後とも国民に対してハンセン病問題に対する正しい知識の啓発に努めるとともに、必要に応じて名誉回復措置を行う。 4 死没者の慰霊・名誉回復措置については、患者・元患者の意向を調査しつつ検討を続ける。 二 在園保障 厚生労働省は、「らい予防法の廃止に関する法律」第2条及び基本合意書に謳われている法的責任を踏まえ、13の国立ハンセン病療養所入所者(今後入所する者を含む)が在園を希望する場合には、その意思に反して退所、転園させることなく、終生の在園を保障するとともに、社会の中で生活するのと遜色のない水準を確保するため、入所者の生活環境及び医療の整備を行うよう最大限努める。 三 社会復帰・社会生活支援 1 厚生労働省は、法的責任を踏まえ、社会内で生活するハンセン病患者・元患者に対し、平穏で安定した平均的水準の社会生活を営むことができるように、平成14年度から、退所者給与金制度を創設することに最大限努める。 2 社会復帰支援策が不十分な下で退所し、社会内で多大な労苦を味わったにもかかわらず、準備等支援金を受領していない既退所者に対し、慰労・功労の趣旨の一時金支給について、方法・金額を含めさらに検討し、平成14年度中の実現に最大限努める。 3 厚生労働省は、国立ハンセン病療養所における退所者のハンセン病及びそれに関連する疾病にかかる医療費の自己負担分の免除等の取り扱いについては、早急に実現が図られるよう最大限努める。その余の国立病院における医療費の取り扱いについては、克服すべき課題があることから、今後の協議課題とする。 4 厚生労働省は、社会復帰準備支援事業の運用、医療・住宅・介護・相談窓口の設置等の社会生活支援全般について、地方自治体との連携を図りつつ、今後ともその改善・拡充に努める。 四 真相究明等 1 厚生労働省は、ハンセン病政策の歴史と実態について、科学的、歴史的に多方面から検証を行い、再発防止のための提言を行うことを目的として、検証会議を設置し、今後の政策の立案・実行に当たってその提言を尊重する。 2 厚生労働省は、ハンセン病政策に関する資料、建物の公開・保存に努め、地方自治体等に対しても必要に応じて協力を求める。 3 ハンセン病資料館については、予算・施設・人的体制の充実に最大限努める。 五 今後の協議 上記四課題を含む今後のハンセン病問題の対策を検討するため、厚生労働省と統一交渉団との間で当面一年度に一回ハンセン病問題対策協議会を開催する。また、必要が生じた場合には、課題ごとの作業部会を適宜開催する。 平成13年12月25日 統一交渉団 代表 曽我野一美 ハンセン病問題対策協議会座長 厚生労働副大臣 桝屋敬悟 |
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(資料2) 2001年12月14日 ハンセン病国家賠償請求訴訟 遺族・入所歴なき原告に関する 12月7日熊本地裁和解勧告に対する声明 ハンセン病国賠訴訟全国原告団協議会 ハンセン病国賠訴訟遺族・非入所原告団 ハンセン病国賠訴訟全国弁護団連絡会 熊本地方裁判所は平成13年12月7日公開の法廷において、遺族・入所歴なき原告のハンセン病国家賠償請求訴訟に関する和解勧告をおこなった(以下「本件和解勧告」という)。本件和解勧告は、遺族及び入所歴なき原告についても国家賠償請求権を肯定し、具体的な金額を明示したものであり、実質的な原告勝訴判決であるというべきである。 原告団・弁護団は本日、本件和解勧告をそのまま受諾することを確認し、これを表明する。早期の全面解決を実現するためには、遺族・入所歴なき原告の訴訟を和解で解決することが不可欠だからである。 被告国も、本件和解勧告をそのまま受諾すべきである。また、厚生労働大臣は、態度決定に当たり、原告・弁護団の意見を聴くべきである。 予想される判決は、本件和解勧告と同旨の内容になることは疑いがない。裁判結審後の和解勧告である以上当然である。しかも判決の場合、被告国の支払負担額は和解と比較して大幅に増加するはずである。 本件和解勧告は極めて明確かつ一義的な内容であり、厚生労働大臣が会見で提示した疑問はいずれもまったく理由がない。 裁判所の判断はすでに下されているのであり、本件和解勧告の拒否は解決の引き延ばし以外の何ものでもない。それは、早期解決という控訴断念決断時の政府方針にも反するものである。 よって、原告・弁護団は、ハンセン病問題の早期全面解決のため、被告国の本件和解勧告受諾および厚生労働大臣面談を強く求めるものである。 |
(資料3) 2001年12月26日 ハンセン病国家賠償請求訴訟 遺族・入所歴なき原告に関する 被告国の和解受諾に対する声明 ハンセン病国賠訴訟全国原告団協議会 ハンセン病国賠訴訟遺族・非入所原告団 ハンセン病国賠訴訟全国弁護団連絡会 遺族及び入所歴なき原告のハンセン病国家賠償請求訴訟に関し、本日、坂口厚生労働大臣は、原告側が弁護士費用及び遅延損害金の請求を放棄することを条件として平成13年12月7日付裁判所の和解勧告を受諾する意向を表明した。原告団は、既に12月14日の段階で右勧告の受諾を決定しており、明日27日以降、右勧告に従って具体的な和解が実現していくことになる。 これにより、ハンセン病国家賠償請求訴訟は全面的に解決することとなった。この日を迎えることができたのは、本件訴訟に対する世論の絶大なる支持があればこそであり、国民の皆様に心から御礼を申し上げる。 ところでハンセン病患者・元患者に対する絶対隔離政策の違憲性・違法性及びそれに関する国の責任は本年5月11日の熊本地裁判決によって明らかにされたとおりであるが、右判決確定後も、被告国は、遺族及び入所歴なき原告については、共通被害が明らかではないとの理由で和解を拒み続けてきた。しかし今回の和解受諾により、遺族が被相続人たる患者・元患者の損害賠償権を相続により承継していること、及び入所歴なき患者・元患者も、入所歴のある者同様、絶対隔離政策の被害者であることが司法上明確になった。ハンセン病患者・元患者の被害回復のための恒久対策に関しては、定期的にハンセン病対策協議会が開催されることになっており、今後は入所歴なきハンセン病患者・元患者に対する恒久対策も協議会のテーマに含まれることになる。 国民の皆様には、被害者たちの真の人間回復実現のために、より一層のご理解・ご支援をお願いする次第である。 以上 |
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