No.11

2001年10月4日
弁護団つうしん 発 行
ハンセン国賠訴訟西日本弁護団

熊本市京町2−12−43
TEL096-322-2515
FAX096-322-2573

  

 
   ハンセン病訴訟
 2001年秋の陣へ突入!

 9月11日、国は、遺族と入所経験のない原告について、和解を拒否することを明らかにしました。
 9月13日の弁論では、これらの原告について再度判決を取ることになりました。
 「3年で解決」を目標にこの3年、死にものぐるいでたたかってきた原告らに対し、国は不当にも解決の引き延ばしを狙っています。

 また、厚生労働省との協議は、現在4つの作業部会に分かれて検討を進めていますが、特に隔離政策との決別を図るうえで極めて重要な、退所者に対する対策で、国は、原告らの要求を拒もうとしています。
 社会の中でひたすら病歴を隠して、逃亡者のように生き抜いてきた退所者。死ぬまでに一度でいいから社会で生活してみたいという高齢の入所者。こうした人たちに対して、社会で人間らしく生きられることを保障することこそが、隔離政策の終焉であるはずです。

 杉山判決確定後、全国13の療養所を謝罪に回った際の、厚労大臣・副大臣の謝罪の言葉は一体なんだったのでしょう。「生きていて良かったと思っていただけるような施策を行ないます」と確かに大臣は述べたのですが。

 原告団・弁護団は、自ら「生きていて良かった」と言えるような全面解決をめざして、秋の陣のたたかいに突入しました。
                 
    

  
   
9月21日副大臣面談
   副大臣に迫る退所者の声


                                                          弁護士 古 賀 克 重

 厚生労働省官僚の不誠実な態度により、入所歴なき原告や遺族原告については、判決を取る必要が出てきました。また,厚生労働省交渉においては,退所者問題に限っても誠意ある回答がなく,原告らの怒りを買っています。原告・弁護団としては、再び、全国的な運動を展開して、厚生労働省を追い詰める必要があります。
 その第一段として,9月21日,退所者の方の副大臣面談が東京の都道府県会館にて行われました。会場には退所者の方,在園の方,支援者の方などが200名以上駆けつけ,熱気にあふれました
(この200名のうち、原告は約150名、うち退所者原告は約100名でした。これまで社会に隠れるように生きてきた退所者の方々が、全国からこんなにたくさん集まったのは初めてです。)
 2時30分から始まった副大臣面談は,まず,6名の退所者の方から切実な被害が語られました。憮然とし能面の官僚とは対照的に,神妙に聞き入っていた桝屋副大臣は,「誤解していた。比較はできないが,療養所での隔離の生活を送られてきた方々以上の被害を受けられていたことを理解した。」と語りました。
 たたみかけるように統一交渉団は,「その被害に見合うだけの施策かどうかが問われている。今日の話を聞いても,見合うだけのものと考えるのか。」と厳しく追及。
 最初は「今日は皆さんの生の声を聞く機会であり,具体的な施策の中身については考えてませんでした。」と逃げをうち続けましたが,会場からの厳しい叱責・怒号におされ,「まだ概算要求も決定的ではありません。今日の皆さんのお話は大臣に正確にお伝えし,その上で中断している厚生労働省交渉を早期に入れる方向で調整します。その中で皆さんの声をさらに反映させていきます」とだけ回答。
 これらのやりとりからも分かるように,厚生官僚を追いつめ,基本合意書の中身を実現するのは一筋縄ではいきません。
 今後のスケジュールとしては,10月15日,16日の両日に国会ローラーが予定されています。原告の皆さん,支援者の皆さんも,またもう一度,あの日を思い出して集結しましょう。「秋の陣」のスタートです。



年内に基本合意書の具体化を!
    
―いざハンセン秋の陣―

        西日本弁護団事務局長 弁護士 板 井   優

和解拒否は国の背信行為
 去る9月11日、坂口力厚生労働大臣は、閣議後の記者会見で、@遺族原告、A入所歴なき原告について 「もう一度法律的に裁判において議論をしていただいて結論を出していただくのが、妥当な問題ではないか」として、和解協議による解決努力を放棄する見解を明らかにしました。
 その上で、国は裁判所に対し、同日付け意見書で、@これらの原告について熊本地裁判決で直接に判断されていない部分であること、Aどのような共通損害が認められるのかが不明であること、また補償立法の対象にもされていないこと等の事情から、判決を求める、との立場を明確にしました。
 しかし今回、国は、原告団・弁護団との協議の場がありながら、閣議後に突然一方的に話し合いでの解決を拒否してきており、次に述べるように到底許せないものです。

基本合意書こそ出発点
 今年7月23日、ハンセン病違憲国賠訴訟全国原告団協議会と厚生労働大臣は、基本合意書を結びました。基本合意書では、国がハンセン病問題について取ってきた隔離政策について真摯に反省し衷心より謝罪して、一時金の問題だけでなく、謝罪広告・名誉回復・恒久対策などの問題について原告団と協議して決めることになっています。
 言うまでもなく、基本合意書は補償法ではなく熊本地裁判決に基づいています。そして、この基本合意書に基づいて各地の裁判所で次々に和解による解決が図られてきたのです。
 この基本合意書第二項2では、遺族原告や入所歴なき原告に対する一時金についてはなお協議する、とされているのです。
 今回の国の態度は、基本合意書の規定を正面から踏みにじるものです。

裁判所の和解所見を尊重せよ
 ところで、裁判所は、7月27日和解に関する所見において、@遺族原告については亡くなった入所者の国家賠償請求権を相続する、A入所歴なき原告も、共通被害としてハンセン病に対する誤った社会認識(偏見)により様々な差別的取り扱いを受ける地位に置かれたことによる精神的損害につき国家賠償請求権を有している、との立場から協議による和解解決を図るべきとの見解を明らかにしました。
 要するに、判決を下した裁判所が、遺族原告、入所歴なき原告はいずれも熊本地裁判決からみて国家賠償請求権をもっていると認めたのです。
 裁判所はこうした立場から、入所歴なき原告についての共通被害に対する具体的金額の当てはめを話し合って決めるように所見を出したのです。
 今回の国の態度はこうした裁判所の提案をも無視するものです。

再び人間回復の熱き思いを
 基本合意書は、一時金だけでなく謝罪・名誉回復や恒久対策などについても話し合いにより具体化することを定めています。
 しかし、これまでの厚生労働省との協議の中で、厚生官僚は基本合意書の具体化に抵抗する姿勢を捨てていません。
 厚生労働省の今回の態度をこのまま許せば、基本合意書は反古にされかねません。その意味で人間回復を求めるたたかいは続いているのです。
 言うまでもないことですが、国が控訴を断念し、基本合意書を結び和解による解決をせざるをえなかったのは、人間回復を高く掲げた熊本地裁判決を支持する国民世論と原告団・弁護団・支援者の粘り強いたたかいがあったからです。

ときは今、たたかいの秋
 基本合意書に掲げる一時金問題では、9月13日の熊本地裁での進行協議で、11月2日に入所歴なき原告の尋問を行い、12月7日には結審弁論が予定されています。
 謝罪や恒久対策問題では、厚生労働省との協議が行なわれていますが、9月21日に退所者・退所希望者と桝屋副大臣との意見交換会を皮切りに10月15日、16日に国会ローラーを含む東京行動が予定されています。
 また、熊本の支援は11月1日に熊本市で勝利判決報告と今後のたたかいへの参加を訴える集会を予定しています。
 いよいよハンセン秋の陣です。全ての国民とともに力をあわせて、年内にも国との間で基本合意書を具体化した成果をたたかい取りましょう。
 人間回復を絆を全ての国民と結び、共に手を取って喜べる日のために。



    当面の日程

   9月21日     副大臣交渉
   9月27日 17:00  弁護団会議(コスモス法律事務所)
   9月28日 13:00  熊本地裁事前協議
          13:30  熊本地裁弁論・和解
  10月 4日 16:00  22次提訴
  10月15〜16日  国会ローラー
  10月18日 16:00  熊本地裁進行協議
  11月 2日 10:00〜終日  熊本地裁原告本人尋問
  11月16日     全国連会議(東京)
  12月2〜3日    最終準備書面作業(福岡第一法律事務所)
  12月 7日 13:30  熊本地裁弁論・和解



弁護団ダイアリー

8/3     菊池恵楓園説明会
8/4     長島愛生園・邑久光明園説明会
8/7     補償法中央審査会
8/8     司法協議
8/9     19次提訴(26人)
8/10〜11  奄美和光園説明会
8/13    弁護団会議(熊本)
      熊本地裁弁論・第3回和解成立(677人)
8/20    全原協会議(東京・多磨全生園)
8/22    補償法中央審査会
8/23    司法協議
      弁護団会議(熊本)
8/24    熊本地裁弁論・第4回和解成立(40人)
8/26〜27  弁護団合宿(黒川)
8/29    補償法中央審査会
8/31    星塚敬愛園説明会
9/1     大島青松園説明会
9/6     20次提訴(28人)
      京大外来被害調査(京都)
9/8     全国原告団・弁護団会議(東京)
      勝訴・控訴断念報告レセプション(九段会館)
9/9     全国連会議(東京)
9/11    国、遺族・非入所について和解拒否表明
9/12    弁護団会議(熊本)
9/13    21次提訴(13人)
      熊本地裁弁論・第5回和解成立(17人)
9/18    弁護団会議(福岡)
9/21    厚労省副大臣交渉(200人が参加)