遺族・非入所データベース

 

 

目  次

    2001〜2002年

* 7月23日 基本合意

* 7月27日 熊本地裁和解所見

* 12月7日 熊本地裁和解所見

* 12月18日 熊本地裁和解所見(補充)

* 12月25日 確認事項

* 1月28日基本合意書・1月30日和解条項

 

 

7月23日 基本合意

 

【基本合意

一 謝罪

1 国(厚生労働大臣)は、本件に関する熊本地方裁判所平成13年5月11日判決(以下、「熊本地裁判決」という。)において認められた国の法的責任(以下、「法的責任」という。)を深く自覚し、長年にわたるハンセン病隔離政策とらい予防法により患者の人権を著しく侵害し、ハンセン病に対する偏見差別を助長し、原告らを含むハンセン病政策の被害者に多大な苦痛と苦難を与えてきたことについて真摯に反省し、衷心より謝罪する。

2 国は、原告らを含む患者・元患者に対し、謝罪広告をはじめ、可能な限りの名誉の回復の措置を講ずる。

  国は自治体やマスメディアに対しても同旨の要請を行う。

3 前項の国の行う謝罪広告等の具体的内容、方法については、別途協議する。

二 一時金の支払

1 国は、原告らに対し、損害の賠償等として、「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律」(以下、「補償法」という。)の補償金支給基準に従って算定された金額と同額の和解一時金を支払う。

2 ハンセン病患者でもあった者が提訴後に死亡している場合の当該死亡者の相続人である原告についても、被相続人が生存していた場合に準じて補償法の補償金支給基準に従って算定された金額と同額の一時金を支払う。但し、当該死亡者に係る補償金が支給されていない場合に限る。

3 ハンセン病患者であった者が提訴時に死亡している場合の当該死亡者の相談人である原告及び入所歴なき原告に対する一時金については、なお協議する。

4 患者、元患者らが、訴訟手続に基づく一時金の支払と補償法に基づく補償金の支払のどちらの手続きを選択するかについては、患者・元患者らの意思を国は尊重するものとする。

5 国は原告らに対し、同一時金に加算して、以下の金員を支払う。

(1) 遅延損害金

熊本地裁判決の認容額相当分に対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで、年5%の割合による金員。

(2)訴訟費用

各原告負担の収入印紙全額。但し、原告らにおいて請求減縮手続をとるなど、できるだけ減額の努力を行う。

(3)弁護士費用

熊本地裁判決(5月11日)までに提訴した原告らについては同一時金の8%の割合による金員。

熊本地裁判決後確定(5月25日)までに提訴した原告らについては同一時金の5%の割合による金員。

熊本地裁判決確定後補償法施行日(6月22日)までに提訴した原告らについては1%の割合による金員。

6 国は、早期解決のために可能な限り協力し、本基本合意に基づく和解に基づく一時金の支払を求める原告らに対し、その支給手続が遅れることのないように配慮する。

三 恒久対策等

 国は、法的責任を踏まえて、入所者に対する在園保障、社会復帰支援、退所者に対する年金支給等の支援措置、入所者及び対処者に対する医療費並びに福祉の整備・拡充などの恒久対策、差別・偏見の除去・解消事業、被害者全員の名誉その他の被害回復事業、真相究明事業、再発防止対策等を実施するよう最大限の努力をする。

 これら対策の具体化については、別途協議する。

 

 

7月27日熊本地裁和解所見

 

「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟

和解に関する所見

平成13年7月27日

熊本地方裁判所民事第3部

 

 確定した熊本地方裁判所平成13年5月11日判決を基準として,これまで相当数の原告らと被告国との間で和解が成立したが,当裁判所は,和解解決に向けて関係当事者各位が多大な努力をされたことに対し敬意を表する。

 残された問題についても,次のような基本的観点に基づき,関係当事者各位の努力により,和解による全面的な解決が図られるべきである。

1 遺族原告について

 提訴前に死亡しているハンセン病患者であった者の相続人である原告(遺族原告)についても,本件事案の特殊性に鑑み,種々考慮すべき事項はあるとしても,基本的には,相続法理に則り和解解決が図られるべきである。

2 入所歴なき原告について

 上記熊本地裁判決は,原告全員が入所者であったため,未入所者に則した判断を明確には示していないが,被告国の従前のハンセン病政策がらい予防法(新法)の存在とあいまって,ハンセン病患者に対する差別・偏見の作出・助長に大きな役割を果たしたことを判示した上,損害賠償の対象となる共通被害の範囲については,療養所への隔離の被害に限定せず,ハンセン病患者がハンセン病に対する誤った社会認識(偏見)により様々な差別的取り扱いを受ける地位に置かれたことによる精神的被害を含めて判断している。療養所への入所歴のないハンセン病患者・元患者も上記精神的被害を被ったと認められるから,上記熊本地裁判決に従えば,入所歴なき原告も国家賠償請求権を有すると解すべきである。もっとも,入所歴なき原告は,療養所に実際に隔離されていなかったのであるから,被害の程度については入所者と差違があると見るべき場合が多いと思われるので,入所者に対する和解金額との均衡を考慮しつつ,発症時期等の諸般の事情を勘案した和解金額が合意されるよう更に協議して,和解解決が図られるべきである。

 

 

12月7日 熊本地裁和解所見

 

「らい予防法」違憲国家賠償請求事件

       和解に関する所見

平成13年12月7日

熊本地方裁判所民事第3部

 

 確定した熊本地裁平成13年5月11日判決を基準として、これまで入所者原告らと被告国との間で和解が成立し、多数の原告について和解による解決がなされた。当裁判所は、残された「遺族原告」及び「入所歴なき原告」の問題についても、和解による解決が相当と考え、本年7月27日「和解に関する所見」を表明したところであるが、弁論を終結した現段階において、証拠調べの結果を踏まえて、入所者原告らと被告国との間で成立した和解内容との権衡等を総合して判断すれば、大要、下記の内容で和解による解決が図られるべきであると考える。

 

 

1 遺族原告について

 提訴前に死亡しているハンセン病患者であった者の相続人である原告(遺族原告)は、被相続人の死亡により被相続人の被告国に対する慰謝料請求権(国家賠償請求権)をそれぞれの相続分に応じて相続したというべきである。

 しかしながら、ハンセン病患者であった被相続人が、上記熊本地裁判決が損害額算定の前提としていた期間(らい予防法(新法)が廃止された平成8年4月1日までの期間)経過前に死亡した場合には、上記判決が認容した損害額よりも、その期間に応じて減額された慰謝料請求権を有するものと解される。

 そこで、ハンセン病患者であった被相続人の和解金額は、既に成立した入所者原告らと被告国との間の上記和解における「和解一時金額」の算定方法と同一の方法によって算出した金額(以下「和解一時金額」という。)を基準に、次のとおりとするのが相当である。したがって、

 遺族原告の和解金額は、被相続人の和解金額のそれぞれの相続分に応じた金額である。

 @ 被相続人が平成8年4月1日以降に死亡した場合

           和解一時金額と同額

 A 被相続人が平成6年1月1日以降平成8年3月31日までに死亡した場合

           和解一時金額と同額

 B 被相続人が昭和61年1月1日以降平成5年12月31日までに死亡した場合

           和解一時金額から150万円を減額した額

 C 被相続人が昭和60年12月31日までに死亡した場合

           和解一時金額から250万円を減額した額

 

2 入所歴なき原告について

 当裁判所は、入所歴なき原告について、上記「和解に関する所見」において、「上記熊本地裁判決は、入所歴なき原告に即した判断を示していないが、被告国の従前のハンセン病政策がらい予防法(新法)の存在とあいまって、ハンセン病患者に対する差別・偏見の作出・助長に大きな役割を果たしたことを判示した上、損害賠償の対象となる共通被害の範囲は、療養所への隔離の被害に限定せず、ハンセン病患者がハンセン病に対する誤った社会認識(偏見)により様々な差別的取り扱いを受ける地位に置かれたことによる精神的被害を含めて判断しており、同判決に従えば、入所歴なき原告も国家賠償請求権を有すると解すべきである。」旨見解を表明したところであるが、本件証拠調べの結果によれば、入所歴なき原告も被告国に対し国家賠償請求権を有すると解される。

 ところで、入所歴なき原告は、療養所に実際に隔離されていなかったため、隔離の被害については入所者と異なるが、原告本人尋問の結果等の本件証拠調べの結果によれば、入所歴なき原告は、社会の中で生活を送っただけに、より一層ハンセン病に対する誤った社会認識(偏見)により様々な差別的取り扱いを受けたこと、抗ハンセン病薬が保険診療で正規に使用できる医薬品に含まれていなかったことなどの制度的欠陥により、ハンセン病の治療を受けられる医療機関が極めて限られていたため、入所者とは異なり、医療を受けることすらままならなかったこと、及び、ハンセン病に罹患していることを隠して社会生活を送らざるを得なかったこと等により極めて深刻な被害を共通して受けたことが認められる。もっとも、被害の程度は、発症時期が古く被害を被った期間が長い場合と、そうでない場合とではある程度差異があると解される。

 そこで、入所歴なき原告の和解金額は、発症時期に応じて次のとおりとするのが相当である。

 @ 発症時期が昭和37年12月31日まで   700万円

 A 発症時期が昭和38年1月1日以降昭和47年12月31日まで

                        600万円

 B 発症時期が昭和48年1月1日以降       500万円

                             (以上)

 

12月18日熊本地裁和解所見

 

「らい予防法」違憲国家賠償請求事件

和解に関する所見(補充)         平成13年12月18日

熊本地方裁判所民事第3部

 

 当裁判所は、「遺族原告」及び「入所歴なき原告」の問題について和解による解決が相当と考え、平成13年12月7日付け「和解に関する所見」(以下「7日付け所見」という。)を明らかにしたが、その趣旨、理由等につき明確にする必要があると思われるので、若干補充して述べることとする。

1 遺族原告の慰謝料額算定の根拠について

 7日付け所見で述べたように、ハンセン病患者であった被相続人が、確定した熊本地裁第1陣判決(以下「第1陣判決」と言う。)が損害額算定の前提としていた期間経過前に死亡した場合には、同判決が認容した損害額よりも、その期間に応じて減額された慰謝料請求権を有するものと解される。

 減額については、時期的に区分する必要があるが、第1陣判決を基準として成立した入所者原告らと被告国との間の和解における和解基準(以下「和解基準」と言う。)の退所期間に応じた減額区分を参考に、死亡時から平成8年までの期間が10年以内か否かで区分するのが相当と思料したものである(なお、第1陣判決及び和解基準が慰謝料額ないし和解一時金額算定に当たって24ヶ月以内の換算退所期間を考慮しないとしていることを参考に、平成6年以降は考慮しないこととした。)。

 減額幅については、第1陣判決及び和解基準が、慰謝料額ないし和解一時金額算定に当たって換算退所期間に応じて減額する際の減額幅を参考に、被相続人の死亡から新法廃止までの期間が、第1陣判決において「隔離による被害の著しい後退と処遇改善がなされた」と判示されている昭和50年代以降であることを考慮して、7日付け所見のとおりの金額を減額するのが相当と思料したものである。

2 ハンセン病患者であった者が20年以上前に死亡した場合の取り扱いについて

 提訴から20年以上前に死亡しているハンセン病患者であった者の遺族は、除斥期間の適用により国家賠償請求権を有しないと思料される。7日付け所見は、対象者にそのような原告がいなかったことから、除斥期間の適用について触れていないものである。

3 入所歴なき原告の発症時期の認定について

 入所歴なき原告の発症時期は、原則として、医療期間においてハンセン病罹患と診断されたときと解される。ただし、ケースによっては個別に検討する余地があると考える。

4 入所歴なき原告の慰謝料額算定の根拠について

 時期的区分は、入所者に関する和解基準の区分を参考に3段階に区分するのが相当と思料したものである。

 慰謝料額については、次のとおり和解基準との権衡を考慮して算定基準を定めるのが相当と思料したものである。すなわち、和解基準は、昭和50年代以降であっても、平成8年3月31日までに入所した者に対する和解一時金額が800万円とされているところ、同時期は、「隔離による被害の著しい後退と処遇改善がなされた」と判示されている時期であるから、同時期の入所者の被害は、「ハンセン病患者がハンセン病に対する誤った社会認識(偏見)により様々な差別的取り扱いを受ける地位に置かれたことによる精神的被害」の比重が大きいものと解され、この点では未入所者も大きく異ならない。また、第1陣判決では入所者には療養所で療養を受ける権利が保障されていることが減額事由として考慮されて慰謝料額が定められたのであるが、7日付け所見で指摘したとおり、未入所者は、療養を受ける恩恵を享受していないのであるから、この点は入所歴なき原告の関係では増額の方向で考慮されるべきである。他方、入所歴なき原告は、入所による隔離の被害自体は受けておらず、入所歴があることに伴う差別的取扱いを受けていないのである。そこで、これらの事情を総合考慮して、7日付け所見どおりの慰謝料額をもって相当と思料したものである。

5 入所歴なき原告のうち、沖縄在住者について

 沖縄のハンセン病患者の外来治療等の整備状況は、本土の状況と異なっていたとみる余地があるが、第1陣判決が沖縄原告につき本土復帰後の被害のみを賠償の対象としたのに対し、その後成立した和解基準では、沖縄原告についても、復帰の前後を区別せずに、他の原告と同一に扱っているのであるから、上記のような入所者原告との和解内容との権衡を考慮すれば、入所歴なき原告との間の本件和解においても、沖縄原告を区別せずに同一に扱うのが相当であると思料される。

 

 

12月25日確認事項

 

ハンセン病問題対策協議会における確認事項

 

 厚生労働省とハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会、同全国弁護団連絡会及び全国ハンセン病療養所入所者協議会(以下、合わせて「統一交渉団」という。)とは、平成13年5月25日の内閣総理大臣談話及び同年7月23日の基本合意書に基づき、ハンセン病問題対策協議会を開催し、ハンセン病問題を早期かつ全面的に解決するべく、隔離政策によってハンセン病の患者・元患者らが被った様々な被害回復のための恒久対策等を協議・検討してきたところである。そして、いくつかの被害回復の施策について合意に達したところであり、これまでの協議において合意に達した点及び残された課題と今後の協議方法を確認することとする。この確認事項に記載のない事項については、この間の協議会の議事録による。

一 謝罪・名誉回復
 厚生労働省は、熊本地裁判決において認められた国の法的責任(以下、「法的責任」という。)を踏まえ、ハンセン病に対する差別偏見を解消し、ハンセン病患者・元患者の名誉を回復するため、以下の各措置の実施に最大限努める。
1 平成13年度中及び14年度の早い時期に、全国紙及び地方紙に、厚生労働大臣名の謝罪広告を掲載する。なお、その広告には平成13年5月25日の内閣総理大臣談話及び同年6月7、8日の衆参両院決議を併せて掲載する。
2 全国の中学生に対し、ハンセン病問題に対するパンフレットを配布する。その内容については、患者・元患者の意向が反映されるよう今後協議する。
3 その他今後とも国民に対してハンセン病問題に対する正しい知識の啓発に努めるとともに、必要に応じて名誉回復措置を行う。
4 死没者の慰霊・名誉回復措置については、患者・元患者の意向を調査しつつ検討を続ける。

二 在園保障
 厚生労働省は、「らい予防法の廃止に関する法律」第2条及び基本合意書に謳われている法的責任を踏まえ、13の国立ハンセン病療養所入所者(今後入所する者を含む)が在園を希望する場合には、その意思に反して退所、転園させることなく、終生の在園を保障するとともに、社会の中で生活するのと遜色のない水準を確保するため、入所者の生活環境及び医療の整備を行うよう最大限努める。

三 社会復帰・社会生活支援
1 厚生労働省は、法的責任を踏まえ、社会内で生活するハンセン病患者・元患者に対し、平穏で安定した平均的水準の社会生活を営むことができるように、平成14年度から、退所者給与金制度を創設することに最大限努める。
2 社会復帰支援策が不十分な下で退所し、社会内で多大な労苦を味わったにもかかわらず、準備等支援金を受領していない既退所者に対し、慰労・功労の趣旨の一時金支給について、方法・金額を含めさらに検討し、平成14年度中の実現に最大限努める。
3 厚生労働省は、国立ハンセン病療養所における退所者のハンセン病及びそれに関連する疾病にかかる医療費の自己負担分の免除等の取り扱いについては、早急に実現が図られるよう最大限努める。その余の国立病院における医療費の取り扱いについては、克服すべき課題があることから、今後の協議課題とする。
4 厚生労働省は、社会復帰準備支援事業の運用、医療・住宅・介護・相談窓口の設置等の社会生活支援全般について、地方自治体との連携を図りつつ、今後ともその改善・拡充に努める。

四 真相究明等
1 厚生労働省は、ハンセン病政策の歴史と実態について、科学的、歴史的に多方面から検証を行い、再発防止のための提言を行うことを目的として、検証会議を設置し、今後の政策の立案・実行に当たってその提言を尊重する。
2 厚生労働省は、ハンセン病政策に関する資料、建物の公開・保存に努め、地方自治体等に対しても必要に応じて協力を求める。
3 ハンセン病資料館については、予算・施設・人的体制の充実に最大限努める。

五 今後の協議
 上記四課題を含む今後のハンセン病問題の対策を検討するため、厚生労働省と統一交渉団との間で当面一年度に一回ハンセン病問題対策協議会を開催する。また、必要が生じた場合には、課題ごとの作業部会を適宜開催する。

           平成13年12月25日

統一交渉団 代表     曽我野一美

 

              ハンセン病問題対策協議会座長

                  厚生労働副大臣    桝屋敬悟

 

 

1月28日基本合意・1月30日和解条項

    

遺族・非入所の原告らの司法上の解決のための基本合意

 

 1月28日午前10時以下のとおりに基本合意が締結され、坂口厚労大臣と原告の代表である曽我野氏との間で調印式が行われました。

 

  

           基 本 合 意 書

 

                                                     

 ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会と国(厚生労働大臣)は、ハンセン病患者であった者が提訴時に死亡している場合の当該死亡者の相続人である原告及び入所歴のないハンセン病患者・元患者の原告が提起した訴訟に関し、次のとおり、司法上の解決(裁判上の和解)についての基本事項を合意した。

 

一 謝罪

1 国は、熊本地方裁判所平成13年5月11日判決において認められた国の法的責任を深く自覚し、長年にわたるハンセン病隔離政策とらい予防法により入所歴なき原告を含む患者・元患者の人権を著しく侵害し、ハンセン病に対する偏見差別を助長し、ハンセン病政策の被害者に多大な苦痛と苦難を与えてきたことについて真摯に反省し、衷心より謝罪する。

2 国は、入所歴なき原告を含む患者・元患者に対し、その名誉を回復し、精神的苦痛を慰謝することを目的とする謝罪広告を行う。

  謝罪広告の実施については、ハンセン病問題対策協議会において、すでに協議・決定され、予定されている謝罪広告に含めるものとする。

 

二 一時金の支払

1 国は、原告に対し、損害の賠償等として、平成13年12月7日に熊本地方裁判所が示した和解に関する所見を踏まえて、和解一時金を支払う。

2 相続人からの請求について、当該原告が相続人であること及びその相続分については、証拠に基づき、裁判所が認定する。

  原告は、相続を原因とする不動産の所有権移転登記手続に要する程度の資料を証拠として提出する。

3 ハンセン病療養所の入所歴のない者のハンセン病の発症時期については、平成13年12月18日付けの熊本地方裁判所の補充所見で示された医師による確定診断を基本とし、当事者間に意見の相違があるものについては、証拠に基づき、裁判所が認定する。

   原告は、診断書ないしこれに準ずる資料、陳述書等を証拠として提出する。

 

三 入所歴なき原告について

国は入所歴なき原告について、主として、合理的な理由のなくなった「らい予防法」を廃止しなかったために、ハンセン病療養所に入所させて治療を行うという政策の結果として、ハンセン病の治療を受けられる機会が極めて限られて、入所せずに治療を受けることが容易ではなかったことに基づく損害を与えたことを認める。

 

四 加算金等

1 原告は、遅延損害金及び弁護士費用の支払を求めない。

2 訴訟費用は各自の負担とする。  

  ただし、印紙代については、既に貼付した分を除き、全額国の負担とする。

 

五 名誉回復等の施策について

1 原告と国は、遺族による死没者の遺骨引取りが、死没者の名誉回復、ハンセン病に対する偏見差別の解消につながるものであるとの基本認識にたったうえで、死没者の遺志を尊重しつつ、遺族の遺骨の引取りにつき、それぞれ努力する。

2 遺骨の引取り等、その他の事項については、別途協議する。

 

     平成14年1月28日

 

                  ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会

会    長    曽 我 野 一 美

 

         厚  生  労  働  副  大  臣

桝  屋  敬  悟


 

 

 さらに1月30日、熊本地裁において、原告及び被告は、上記基本合意に基づき、下記のとおりの和解条項をもって和解成立に至りました。これによって、司法上の問題は全面解決することになりました。あとは和解未了の事案について、和解の手続きを進めていくことになります。

 

 

          和 解 条 項

  

 原告ら及び被告国は、ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会と国(厚生労働大臣)との間で本件に関し締結した平成14年1月28日付け基本合意書に基づき、以下のとおり本件を和解によって解決することを合意した。

 

 

1 被告国(厚生労働大臣)は、熊本地方裁判所平成13年5月11日判決において認められた国の法的責任を深く自覚し、長年にわたるハンセン病隔離政策とらい予防法により入所歴なき原告らを含む患者・元患者の人権を著しく侵害し、ハンセン病に対する偏見差別を助長し、ハンセン病政策の被害者に多大な苦痛と苦難を与えてきたことについて真摯に反省し、衷心より謝罪する。

 

2 被告国は、原告らに対し、損害の賠償等として、別紙一覧表記載和解一時金金額欄記載の 和解一時金の支払義務があることを認める。

 

3 被告国は、前項の金員を、平成14年2月28日限り、原告ら訴訟代理人弁護士の銀 行預金口座に送金して支払う。

 

4 原告らは、本訴請求について、被告国に対するその余の請求を放棄する。

 

5 訴訟費用は各自の負担とする。ただし、印紙代については、既に貼付した分を除き、全額被告国の負担とする。