1 フランスを代表する画家ミレーは、農民を描いた作品を数多く残した。代表作は「晩鐘」「落穂拾い」である。
「落穂拾い」は、麦の穂を拾う農民を題材にしたもので、作物を大切にする農民の姿が描かれている。
日本でも「米」は「八十八」と書くと言われ、米作りに八十八回の手間がかかるので、米を大事にするように言われてきた。
今回、控訴人らは、農民が作物を大事にする心をもって、同意書調査アタック2001にあたった。この調査は、落穂拾いのように地道な作業であった。
2 原判決は、認否を行っていない約2000名の三条資格者を同意書に加えて同意率を認定し、3分の2以上の同意があったという結論を導いている。
そこで、控訴人らは、控訴審において、認否を行っていない(保留扱い)にもかかわらず、3分の2以上の同意があったと判断を下した原判決には、事実誤認ないし法令解釈の誤りがあると主張した。
平成13年3月5日に行われた進行協議において、裁判所は、控訴人らに、同意書の認否を行うよう指示をした。私達は、この指示を原判決の誤りを認めた結果だと受け止め、アタック2001に取り組むことになった。
3 2000名を越える三条資格者の調査という前代未聞の取り組みに対して、当初本当にこれだけ大量の調査を短期間に達成できるのかという戸惑いの声もあった。
また、原審における同意書の認否は、原告・補助参加人らが中心であり、裁判に参加している人々の同意書には、死者の署名や偽造された署名などの問題が数多く含まれていた。
これに対して、認否をしていない三条資格者は、原告・補助参加人以外の者が大半であり、その中には役場職員、推進委員など本件事業を推進してきた人々も含まれていた。
そのため、調査は困難を極めることが予想された。
4 アタック2001では、ゴールデンウィークに相良村で先行調査を行い、夏休み入り残り多良木町、錦町、須恵村、山江村、深田村、人吉市の順に調査を行った。
相良村では、当時の村長の自宅を訪れ調査を行った。また、原審に証人として出頭した友田政春証人宅の家族からも同意の事情を聞き取った。多良木町では、ダム関係の公共事業を数多く受注している建設業者の関係者に対する調査を行った。
このように、1つ1つ落穂拾いをするように地道に調査を進めていった。
5 今回の調査結果が明らかになったとき、私達は、驚きの声を上げざるを得なかった。
原審と同様に、三条資格者の同意を得ないで行われた署名(書名偽造)、水代(負担金)の支払い、除外の有無、ダムに関する署名などの錯誤に代表される様々な問題点があることが明らかになった。
この結果は、同意書に関する問題点は、原告・補助参加人に止まらず、今回調査対象となった者を含めて三条資格者全体に及んでいるという重大な事実を示している。
6 裁判所におかれては、今後の進行において、杜撰な同意取得の実態など本日の更新弁論で指摘した事実をつぶさに審理して頂くよう申し上げる。
以上
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