かの町に続く川辺に佇みて せめて想ひの運ばれゆかん * 頬に触るる雪は溶けゆく 眼より伝ふ涙と混ざり合ひつつ * おののきて夢かうつつかひたすらに 握りし夫の手は頼りなし * 注射器より血のあふるるを眺めをり その紅のつややかなさま * もやの中に踏み入るごときこの恋は 君の指先離さんとす * 今宵また体の震へ悶えをり ただ生くることのおそろしきなり * 小田原に一度来ませよ梅咲きて うぐいす声のほがらに啼けり * 君よりの着信音を待ちわびる つかの間だにも逢ひたきこころ * 庭のべに咲き残りたる白梅は 互みに支へあうごとく見ゆ * 銃弾に倒るるさまを見てをりぬ 窓の外には晴れわたる空 * アスファルト道路に描かれし文様の 紅き色にて血のごとく見ゆ * 夕焼くる空に一すぢ跡残し つぶてのやうに見ゆる飛行機 * 夜半ひとりパソコン画面にうつりゆく ひかり眺むるただぼんやりと * マンションの窓のあまたの灯が光る 幸いのこと車窓ゆ見えて * 白妙に雪降りつもる富士山の ふもとは淡くかすみてをれり |