短歌7




かの町に続く川辺に佇みて
せめて想ひの運ばれゆかん
*
頬に触るる雪は溶けゆく
眼より伝ふ涙と混ざり合ひつつ
*
おののきて夢かうつつかひたすらに
握りし夫の手は頼りなし
*
注射器より血のあふるるを眺めをり
その紅のつややかなさま
*
もやの中に踏み入るごときこの恋は
君の指先離さんとす
*
今宵また体の震へ悶えをり
ただ生くることのおそろしきなり
*
小田原に一度来ませよ梅咲きて
うぐいす声のほがらに啼けり
*
君よりの着信音を待ちわびる
つかの間だにも逢ひたきこころ
*
庭のべに咲き残りたる白梅は
互みに支へあうごとく見ゆ
*
銃弾に倒るるさまを見てをりぬ
窓の外には晴れわたる空
*
アスファルト道路に描かれし文様の
紅き色にて血のごとく見ゆ
*
夕焼くる空に一すぢ跡残し
つぶてのやうに見ゆる飛行機
*
夜半ひとりパソコン画面にうつりゆく
ひかり眺むるただぼんやりと
*
マンションの窓のあまたの灯が光る
幸いのこと車窓ゆ見えて
*
白妙に雪降りつもる富士山の
ふもとは淡くかすみてをれり