機窓より紺碧の空の雲を見る ヨーロッパの古城のごとき豊かさ * 機窓より見る月白く丸くして 真珠のごとき光り放てり * 田の隅に斑雪かと見し白菊の 近づけば首をしなだれ咲けり * 手水鉢に水流れたる跡ありて 尾長の羽か二つ浮きをり * 七歳になりし娘の友の少年は 淋しげに吾に微笑みかけぬ * 膝前にふつくらとした指揃へ 新妻は首を傾けてをり * 新しき帯を身体に巻く時の キュッキュッといふ衣ずれの音 * 夕近く池の水面に樹の影が ゆらめきながら映りてをりぬ * 街路樹にぽつりぽつりと白きつぶ 咲き走りたる桜花なり * 開ききり流星のやうに散りて居る 枝高くあげてハクモクレンは * 石ころを大事さうに抱えてゆつくりと 男居り何処へ行くのか * 小川にも菜の花にもまた田んぼにも 桜の花びら雨のごと降る * 出勤の夫を送りてぬくもりの 残れる布団淋しかりけり * 鮮やかなテープデッキより投げられて 蜘蛛吐く糸のごとくかがやく * 水の辺に群るるかもめは灼熱の 日にさらされて彫像のごと |