短歌5




機窓より紺碧の空の雲を見る
ヨーロッパの古城のごとき豊かさ
*
機窓より見る月白く丸くして
真珠のごとき光り放てり
*
田の隅に斑雪かと見し白菊の
近づけば首をしなだれ咲けり
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手水鉢に水流れたる跡ありて
尾長の羽か二つ浮きをり
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七歳になりし娘の友の少年は
淋しげに吾に微笑みかけぬ
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膝前にふつくらとした指揃へ
新妻は首を傾けてをり
*
新しき帯を身体に巻く時の
キュッキュッといふ衣ずれの音
*
夕近く池の水面に樹の影が
ゆらめきながら映りてをりぬ
*
街路樹にぽつりぽつりと白きつぶ
咲き走りたる桜花なり
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開ききり流星のやうに散りて居る
枝高くあげてハクモクレンは
*
石ころを大事さうに抱えてゆつくりと
男居り何処へ行くのか
*
小川にも菜の花にもまた田んぼにも
桜の花びら雨のごと降る
*
出勤の夫を送りてぬくもりの
残れる布団淋しかりけり
*
鮮やかなテープデッキより投げられて
蜘蛛吐く糸のごとくかがやく
*
水の辺に群るるかもめは灼熱の
日にさらされて彫像のごと