硝子狩り9
高層ビルの一室。
天井まで口を開けた窓の向こうには夜景が広がっている。
その窓に背を向けているマホガニーのデスクにもたれて立っている少年がいる。
少年はダークグレイの上下を着ていた。
うつむいていると漆黒の髪が顔を隠して表情は見えない。
少年は無造作にリモコンのボタンを押した。
藤色のカーテンが両側から中央へと閉まっていく。
「それで?」ボーイソプラノの声でつぶやいた。
「10号と71号はどうしている」
少年から離れて立っているスーツ姿の男が
「弥生町で御指示を待っています」と言った。
「そうか」少年は笑った。
その声に男は身を固くした。
「こわがるなよ」
「僕みたいな子どもに何をおびえているのさ?」
「僕はわがままだからね」
「時々僕の言うことを聞かない奴にいじわるをしてしまうだけだよ・・・」
「ところで10号と71号におしおきは必要かな?」
「標的を見失って僕の楽しみを奪った奴らだけど?」
「どうでしょうか・・・」男の声はわずかに震えていた。
「敵は超古代文明を操るようです」
「僕の力がその超古代文明とやらにかなわないとでも?」
「そんなことは・・・!」
「そうだね。たしかに僕の力は古代の機械に負けるのかもね・・・」
少年は右手を男の方に伸ばし手のひらを開いた。
手のひらから赤い火花が散った。
「ごふっ・・・!」男は身体を折り曲げ血を吐いた。
「おいおい絨毯を汚さないでくれよ。替えたばかりなんだからさ・・・」
ノバクは急にペンライトを落とし、自分の左腕を掴んだ。
そのまま身体をぶるぶる震わせると、「ぎゃあっ!」
と叫び、地面に転がった。
「う、あああ・・・!」腕を掴んだままノバクは身体を痙攣させている。
眼鏡男も歯をくいしばり、左腕をさすっている。
「磁気チップだな・・・」
男の額に汗がふつふつと浮かんだ。
「畜生!何度やっても痛え・・・」
男は左右を見回した。
「糞、だけど、どうしようもないんですよ・・・入口もないとなれば・・・手も足も・・・」
男の頭に激痛が走った。
(見ろ!)
男の頭に声が響いた。
男は目をこらして辺りを見た。
わずか先の地面が光っている。
穴のようだった。
のぞきこむと中に部屋が見え、三人の人間が椅子に座っているのが分かった。
「・・・見つかったか・・・」飯田橋がつぶやいた。
昭彦と正は血の気が引いていくのがわかった。
「何よ?何でわかるのよ?」と正が早口になって飯田橋に詰め寄った。
「・・・何となくだ・・・」飯田橋はリモコンのようなものを押した。
正面のスクリーンに夜の景色が映った。
地面を凝視している男がいる。
思わず昭彦と正は天井を見た。穴があいているわけではない。
「俺達、見られてる?」
「見られているよ」
「何で分かるんだ・・・」と昭彦がつぶやいた。
「君たちが見たあの少年は卓越した超能力を持っている。甘くみると痛い目に会う」
「どうもこちらにテレポートしてくる気らしい」
「できるのかよ!そんなことが!」
「逃げなくては」飯田橋はパネルのボタンを押した。
部屋の隅に入口が開いた。「脱出口だ」
「早く行きなさい!時間がない」

<つづく>
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