硝子狩り6
気が付くと昭彦と正はエレベーターのような部屋の中にいた。
「ここはどこだ?」正は辺りを見回した。
<エラー>
「何だ?この声」
<エラー>
昭彦は壁にさわった。継ぎ目がなかった。
「この部屋は何だ?」昭彦が呟いた。
<声紋認識>
「昭彦の声が鍵なのか?」
壁の一部に切れ目が生じ、左右に開いた。
奥に通路が続いていた。
まるで生き物の体内を歩いているようだった。
足音も粘りつくように響く。
正は上を見上げた。「ここがあの空き地の下ってことか」
「ガラス玉はどうなった?」
昭彦は右手を開いてみた。いつのまにかガラス玉を握りしめていたらしい。
見ると大きさも元に戻ってもう熱くない。
通路はしばらく続いていたが奥は行き止まりになっている。
「何か言ってみろよ」と正が言った。
「ええっと・・・」昭彦は言葉を探した。
「何でもいいじゃねえか・・・!」
見ると、行き止まりの壁が盛り上がってきている。
次第にその盛り上がったものが人間の顔の形に変化してきた。
それは昭彦の顔だった。
正がうめき声をあげた。
昭彦の顔の形をした<もの>は閉じていた目を開けた。
瞳の色はあのガラス玉の色である。
<もの>はニタリと笑った後、
「ええっと・・・」と昭彦そっくりの声で言った。
昭彦は思わず笑ってしまった。
正は「もうちっとましなことを言やあよかったのによ」と笑った。
<もの>が昭彦を見つめるので昭彦も<もの>の目を見た。
<もの>の目の中でキラリと何かが光った。
<眼紋認識>
<もの>の顔の中央に小さな切れ目が生じた。
見る間に顔は粘土細工を切るように二つに割れていき、
切れ目は上下に伸びていき左右に開いた。
「趣味悪いな」と正がつぶやいた。
開いた扉の向こう側は
さっきのエレベーターのような部屋とよく似ていた。
狭い部屋の正面の壁に手形の形をした窪みがある。
右手だった。
昭彦はおそるおそるその窪みに右手を近付けた。
なんだか段々息苦しくなってきた。
正は無表情に昭彦の右手首をつかんだ。
「いて・・・ちょっと待て」
「往生際が悪いんだよ。さっさとやれよ〜」
正は昭彦の手をぐっと窪みに押し込んだ。
途端に昭彦の手の甲の方に壁がスライドしてきて、
ちょうど昭彦の手が壁に埋め込まれた形になった。
「あ。昭彦、悪い」
「悪いですむか〜」
「あ、でもよ、今度もなんか認識するんだろ?大丈夫、大丈夫」
「おいおい。気休めはよせよ」
昭彦は冷や汗が出てきた。
ふいに壁が割れてパネルが奥から現れた。
色とりどりのボタンが並ぶパネルが四方に出現し、
その部屋のさまはビデオで見た宇宙船の操縦席のようだった。
「すげえな」
と正がため息をついたあと、昭彦を見た。
「わかる?」
「わかんねえよ・・・」
笑い声がどこからか聞こえた。
見ると左奥に椅子があり、そこに誰かが座っているようだ。
「誰だ?」
その声にこたえるように椅子がくるりと回った。
「誰だとはお言葉だな」
その声の主は「じじい」だった。
<つづく>
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