硝子狩り3
「私は親の都合でいろんな国に行ってるからね」
ノバクは痣を触りながら言った。
「どういうからくりがあるのか知らないけど、
個人識別のためにちょっとした手術をする国にいたのよ。
日本でもこれが義務化されるらしいわね」
昭彦は思わず自分の手首に目をやった。
(ゾッとしない話だ・・・)
ノバクは昭彦に答えるように
「これもなかなか便利なものよ。自動改札とか、買い物とか、現金がいらないもの」
「でも・・・そうね。監視されてる気分になるわ」
「監視か・・・いったい誰が監視してるのやら」ノバクは肩をすくめた。
昭彦は何も答えることができなかった。
「ただいま」
昭彦は母親の返事も聞かずに階段を登っていった。
自分の部屋に入り、机の引き出しを開けると、
そこにはやはり今朝目にしたガラス玉はあった。
昭彦はそっと手に取ってみた。
不思議な色をしている。
(そういえば工場が燃えた時の炎の色に似ているな・・・)
あれはいつだったか、珍しく昭彦だけが工場に遊びに来ていた時だった。
「昭彦!ちょっとこっちに来なさい」
「じじい」が工場の中から顔を出し、昭彦を手招きした。
そして、中の事務所のようなところに昭彦を連れて行き、椅子に座らせると、
戸棚の引き出しの中からガラス玉を取り出した。
「これをあげよう。綺麗だろ?特別製だ」
「じじい」はガラス玉を昭彦の手のひらに載せた。
「ただし、他のやつらには秘密だぞ」と昭彦の肩をぽん、とたたいた。
「ただのガラス玉じゃない。だが何なのかは聞くなよ。」
「持っていてくれ。絶対になくすな。」
「じじい」は昭彦の顔を覗き込み肩をつかみ、軽く揺らした。
昭彦は子どもながらに、「じじい」の態度に何か緊迫した空気を感じた。
「お前はそういう奴じゃないと見込んで預けるんだ。分かったな。」
昭彦はだまって頷いた。
昭彦はガラス玉を指でつまむと、
目の前でゆらゆらと動かしてみた。
(これのどこが特別製なんだ?)
一瞬、ガラス玉がきらりと光った。
(何だ?何かが・・・・?)
昭彦はガラス玉を明るいところにかざして眺めた。
ガラス玉のなかに細かい幾何学模様のようなものが見えた。
(これは・・数字?)
<つづく>
back
next
BGM提供