第2回 : 手札に対する処方箋 part1 -ペア及びビッグカード-


ここでは、ボードから切り離した手札だけをみて、その善し悪しを解説するというよりも、初手で選んだ手札を使って、いかに変化の多いボード上で適切なプレーをするか、ということに重点を置いたより「実践向き」の解説をしていきたいと思う。というのも、ほぼ毎回ボードのめくられるローリミットでは、初手の絞りにもまして、ボードでいかに自分の手札に合ったアクションをするか、という点がより重要になってくるからである。 そのため、手札のタイプ(今回はペアとビッグカード、次回はビッグカード以外のコネクタとギャップを取り上げる)をひとつずつ挙げながら、それぞれの"favorable flop types"と"scary flop types"を示すことにした。前者は「有利に戦える状況」、後者は「慎重に対処すべき状況」を意味する。また、ここで取り上げていない手札は、基本的にわたしがプレーしないものと思って頂いてよい。
ボードをフロップまでにとどめたのは、できるだけ早い段階で有利か不利かを決断したほうが良いと考えているからである。まず、出費を抑えることができなければ、稼ぐことなどできはしない。はじめのうちは、大きく勝つことよりも、できるだけ被害を小さくすることに注意を向けてほしい。
「関連ハンド」の項目では、ここで取り上げた手札と似通ったプレーをする手札を並べてある。また、「初手のアクション」の項目では、わたしが初手で「主に」行うアクションを示した。カッコ内のアクションは、状況(ポジション、テーブルの性質)によってはあり得るものを示す。
なお、AKsのsは2枚とも同じ模様を示す"suited"を、AKoのoは2枚の模様が揃っていないことを示す"off-suited"をそれぞれあらわしている。その他、表記について疑問な点があればお知らせ願いたい。


それでは、まずポケットペアの解説から始めよう。

手札: A A
関連ハンド: KK, QQ, JJ
初手のアクション :
RAISE

ここに挙げた4種類のポケットペア(pocket pair: 手札によるペア)は、数ある手札の中にあって、最も貴重な組み合わせであるといえる。よって、これらの札が配られた時には、もうすでにその時点で、あなたは有利な状況にあるとみてよい。
もっとも、ローレートのテーブルではボードひとつで大きな痛手を負ってしまうことも珍しくないため、くれぐれも過信は禁物である。

A A : favorable flop types

2 4 4

ともにローカードが揃っている場合、AAの効力は強いといえる。ボードでペアができていても、ローカードであれば比較的リスクは低い。また、このケースのように、スーツがばらばらな状態(レインボーという)の時にはフラッシュの心配もなくなるので、その分攻めやすさが増す。


2 4 K

上の例よりも、より多くのポット獲得が期待できる局面である。
このような場合、狙うべきプレイヤーは2種類。すなわち、Kを持つプレイヤーと、ダイヤを持つフラッシュ狙いのプレイヤーである。K2やK4といった手札を持つプレイヤーをコールさせないためにも、初手ではレイズしておくことが望ましい。ダイヤ、それにもう1枚のKが出ない限り、有利な試合運びができる筈である。
22や44といったペアはたしかに恐いが、まともなテーブルであればあるほど、このようなローのポケットペアでコールしてくるプレイヤーは少なく、しかもフロップでスリーカードになる確率は低い(10.8%)ため、あまり用心深くなる必要はない。


6 6 6

このように、場でスリーカードができている場合も、有利な局面であるといえよう。言うまでもなく、あなたが恐れるのは6を持つプレイヤーしかいない。
あなたが狙いうちにすべきプレイヤーのタイプは2種類ある。ひとつは、あなたより下位のポケットペアを持つプレイヤー、そして、AKのようなオーバーカード(over card: 出ている場札よりも上位のランクの手札)を持つプレイヤーである。
最強のポケットペアはAAであるから、ここではそれを除くすべてのポケットペアを持つプレイヤーをターゲットにできる。とくに、ルーズなローレートのテーブルでは、中途半端なポケットペア(TT, 99など)のみならず、ペアなら初手ですべてコールしてくるプレイヤーも多く、つけ込む余地は十分にある。また、AK, AQあたりのツーオーバーカード(2枚ともオーバーカードである状態)を持つプレイヤーは、相手を何ももっていないとみてポットを争いにくる可能性が高く、上手くひきこむチャンスである。


A J Q

一見するとストレートが気にかかるが、KTのプレイヤーを恐れるよりも、AQ, AJ, QQ, JJといった諸々の手札をもつプレイヤーを勝負に引き込むことを考えたほうが良い。相手のストレートを見極めるためにも、強気に攻めるが吉である。


7 8 Q

フラッシュを完成させると、たいていのプレイヤーはベットしてくるが、ある程度慣れているプレイヤーの中にはわざとチェックして、もっていないふりをするタイプもいる。このようなタイプにチェックレイズされたら、フラッシュを警戒したい。ただ、相手がこの時点でナッツフラッシュ(最強のフラッシュ)をもっている可能性はないため、パッシブなテーブルであれば攻めてよいと思う。ちなみに、相手がフロップでフラッシュを完成させる確率は1%にも満たない(0.8%)から、神経質になりすぎるのも考えものであろう。
一方、フィッシングすべきプレイヤーは、AQ, KQ, QJ, QTといったQを持つプレイヤーであり、スペードのKを持ってフラッシュを狙いにくるプレイヤーである。前者はともかく、後者は完全なウィークプレイヤーとみてよいので、ショウダウン時には注意して手札を見ておき、プレイヤーのタイプを判断する材料にしたい。


A A : scary flop types

T Q K

ハイカードが2枚以上出ている時は、セット(set: スリーカードの別称)が出来ていない限り、オーバーペアとはいっても痛い目をみることが多い。
ここであなたが恐れる手札は、AJ, KQ, KT, QT, あとはペアからのセットであるが、Jを持つストレートドローのプレイヤーもついてくることが多いので、そちらも注意が必要である。


Q Q K

Qのような高いランクのカードがペアになっている時は、いつでもスリーカードの存在を考えなければいけない。AK, KJ, KT といったカードをひっかけるには絶好のフロップではあるが、人数が多ければ勝利を得るのは難しくなる。ベットされたらレイズし、リレイズされたら降りるというのがひとつの筋である。


7 8 Q

自分の手札からナッツフラッシュが望めないボードは、強気に攻めるには心許ない。


K K : scary flop types

KKについても、注意すべきフロップタイプをいくつか紹介しておく。ここで挙げたものは、QQやJJといった札にも当てはまる。

A 8 5

KKは強いが、エースの存在には常に怯えていなければならない。ひとたびボードにエースがめくられたら、降りることも含めて慎重に対処する必要がある。

A A K

あなたはフルハウスが出来ているが、最後まで気が抜けない展開である。ここでもエースの存在が気に食わない。

A J Q

何でもありのボードである。このようなボードに巡り合ってしまったら、自分に運がなかったと諦めよう。気張ってコールするとロクなことにならない。


手札: 99
関連ハンド: TT, 88, 77, 66
初手のアクション:
LIMP-IN *

* とくに初手におけるコールのこと。単にリンプ(limp)ともいう。

99: favorable flop types

A-6-9
3-3-9
2-4-4

どれも攻めるべきフロップタイプである。
ただ、最後のタイプは、常に自分よりも上位のポケットペアを警戒する必要がある。


99: scary flop types

9-Q-Q

嫌なボードである。
常にQを持つプレイヤーにびくびくしながらアクションをしなければならない。


9-T-J

厳しい状況である。
フルハウスをつくっても、TやJをもつプレイヤーにまくられてしまう可能性が高い。


8-J-Q

分のない勝負では、安易にコールしないことである。あなたよりも上位のカードが2枚も出てしまっており、ポット獲得の夢は事実上閉ざされている。


7-7-J

1枚でも自分の手札より上位のランクの場札が出ていたら、勝ち目は薄いと判断したほうがいい。手札を捨てきれずにベットしても、相手は必ずついてくる。


手札: 22
関連ハンド: 55, 44, 33
初手のアクション:
LIMP-IN, (FOLD

88あたりのミドルのポケットペアは、たとえスリーカードに発展したとしてもストレートにまくられてしまったりするなど、その扱いが難しい。よって、このごろは相手プレイヤーの手札に直接絡むことのないローカードに注目している。
これまで、あまりにも22や33といったポケットペアに光が当てられてこなかったと思う。しかしながら、このペアがヒットした時の爆発力は半端ではない。「殺人技」として、もう少しローカードのポケットペアを見直してもよいのではないか。
ただし、これは皆さんに対する適切なアドバイスというよりも、わたしの実験という側面が強いかもしれない。ポケットペアがフロップでスリーカードになるためのオッズは8-to-1であり、はじめのうちは、おそらくフォールドするのが正解であろう。この例に限っては、わたしの実験につき合うつもりで読んでみてほしい。

22: favorable flop types

A-2-8

ローのポケットペアにとって最高のフロップである。
Aがめくられていることから、おそらくAKやAQなど、Aに絡んでいるプレイヤーを巻き込める筈である。ポットは自然に大きくなろう。


A-2-K

ハイカードが2枚出ても、破壊力は変わらない。強気に、強気に。


2-3-3

ローカードのペアがみえているが、危険視する必要はあまりない。ポットの旨みがあるかどうかは別として、勝てる流れである。


2-2-Q

相手は、たいてい2のポケットでコールしてくるとは思わないから、強気に攻めても問題ない。とはいえ、このような魅力的なフロップにめぐり合えることは殆どない。


22: scary flop types

2-T-J

少々雲行きが怪しい。
強気にいくのかどうかは、アクションをする周りのプレイヤーによる。もしもターンかリバーでTやJが出てしまったら、good newsでもあり、bad newsでもある。


2-T-T

相当のハマり手である。
とくに、ターン以降にハイカードがめくられたら、あなたができるのはひたすらコールしかない。ローカードが落ちたなら、まだ目はあるかもしれない。


8-8-8

フルハウスときけば聞こえはいいが、ローリミットではあなたの手札で勝てる見込みは少ない。1枚でもあなたよりも上位ランクのカードがめくられれば、もはや生き残る術はない。とっとと降りて次のゲームに移ろう。


A-8-T

コールしてよいものかどうか迷う時は、いつでもオッズが役に立つ。
ターンでスリーカードを狙おうとする際、オッズは23.5-to-1のドッグであり、勝負にのるためには、4-8のレートで少なくともポットの総量が$94なければならないことになる。従って、これにコールすることは、オッズから言えば割に合わない。たまにはギャンブルコールするのも一興だが、諦めもまた大切である。


3-4-5

コールしたくなる割に、魅力は乏しい。
たとえストレートを完成させても、カードが4枚の連続しているボードをみて勝負にくるプレイヤーは少なく、ポットの旨みはないと思われる。


A-4-5

さらに厳しい局面である。常に自分にとって有利なフロップで攻めることを拳拳服膺したいもの。


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