第4回 : ポジションの守・破・離-
ここでは、わたしのポジションについての考え方及びそれを使ったテクニックを紹介していきたい。ポジションの優劣を常に考えてプレーすることが出来るようになれば、あなたも立派なホールデムプレイヤーの仲間入りである。
なお、ポジションの解説にあたり、今回は以下のようなチャートを採用することにした。
seat1: tight [bb]; CHECK
seat2: typical; CHECK
seat3: loose; CHECK
seat4: typical; ---
seat5: tight; ---
seat6: typical; ---
seat7: tough [B]; BET
→ seat8: tight [sb]; CHECK
これは、テーブルの状況を表す。
"seat"はそれぞれのプレイヤーの席次を、"typical"や"tight"といった単語はそれぞれのプレイヤーの大まかな特徴を、そしてその隣の"CHECK"や"BET"は各プレイヤーの行ったアクションを示す。ポットに参加していないプレイヤーには"---"をつけてある。
席次の手前についている矢印は、次にアクションをするプレイヤーを示すものであって、あなたの順番を示すものではない。あなたの位置は、常に1番で固定してある。また、ボタンのプレイヤーは[B]、スモールブラインド及びビッグブラインドのプレイヤーは、それぞれ[sb][bb]と表記してある。
ちなみに、ここでは7番の席に座っているプレイヤーがベットするまで、すべてのプレイヤーがフロップをチェックで回したことを示している。なお、ゲーム進行の手順がよく分かっていない人は、「ルール」の項を読み返してほしい。
typical: 手を持っている時には素直にベットし、なければ降りるという分かりやすいタイプ。
tight: 初手のフォールドが多く、強いランクのハンドで勝負にくるプレイヤー。ここでは、あなたもこのタイプに属する。
tough: 基本的にはタイトだが、ポジションを生かしたブラフも多く、攻める時は激しい。
loose: 初手の絞りが甘く、コール大好きな参加型タイプ。
maniac: レイズが多く、気分次第でどんな手も勝負にくる。
ここで取り上げたプレイヤーは、以上5つのうちのいずれかのタイプに属する。
ポジションを使ったテクニックに移る前に、まずはポジションの基本的な捉え方について、いま一度押さえておきたい。
ポーカーでは、いかに多くの情報を掴むか、ということが勝利へのカギとなる。その情報とは、すなわち個々のプレイヤーによるアクションを指す。情報が集まれば、状況が分かる。状況が分かれば、それに対して取るべき道筋が見えてくる。逆に、手許に集まる情報が乏しければ乏しいほど、周りの状況を把握することが難しくなる。状況が分からなければ、打つべき策も見つからない。
従って、自分より先に多くのアクションがあるほど、その人は多くの情報を得ることになり、有利であるといえる。これが、ポジションにおける考え方の基本である。
seat1: tight; CALL
seat2: typical; CALL
seat3: tight; FOLD
seat4: loose; CALL
→ seat5: typical; [B]
seat6: loose [sb]
seat7: maniac [bb]
seat8: tough; FOLD
まずは、扱いの難しい手札AJoを例にとりながら、ポジションによるアクションの使い分けをみていくことにする。
あなたがAJoを持っていてアーリーにいる時、アクションはコールとなる。
なぜなら、あなたが落としたいAQやAKをもつプレイヤーは、たとえレイズしても決して落とせないからである。タフなテーブルでは、このようなキッカーの弱い手札はいつでもトラップハンドになるため、降りるプレイヤーも珍しくはない。
seat1: tight; FOLD
seat2: typical; FOLD
seat3: tough; FOLD
→ seat4: loose
seat5: typical; [B]
seat6: loose [sb]
seat7: maniac [bb]
seat8: tight; RAISE
次に、あなたは先ほどと同じ位置にいて、すでに直前のプレイヤーからレイズされていたとする。しかも、そのプレイヤーはかなりのタイトプレイヤーであるとしよう。この場合、AK, AQなど、往々にしてコールすると痛い目に遭う手札とかち合ってしまう可能性が高く、通常はフォールドしたい。
seat1: tight, RE-RAISE
seat2: typical; FOLD
seat3: tight; FOLD
→ seat4: loose
seat5: typical; [B]
seat6: loose [sb]
seat7: tough [bb]
seat8: maniac; RAISE
今度は、逆にレイザーがマニアックである場合を考えてみよう。このようなプレイヤーはあまり手札に拘らずにレイズしてくるため、場合によってはフォールドではなく、リレイズもあり得る。
seat1: tight [B]; RAISE
→ seat2: typical [sb]
seat3: tight [bb]
seat4: loose; FOLD
seat5: typical; FOLD
seat6: tough; FOLD
seat7: typical; FOLD
seat8: tight; FOLD
一方、あなたがボタンにいて、しかもそこまですべてフォールドできているとすると、たちまちレイズが有効になる。
たいてい、ブラインドというのは単なる強制ベットという性質上、まともな札が入っていないものである。何のリスクも与えずに、ボードで予期しないカードをヒットさせてしまうことを避けるためにも、ここはコールではなく、レイズを選びたい。
後ろにいるプレイヤーが熟練者であれば、カットオフ(cut-off: ボタンのひとつ手前のポジション)やボタンからのレイズをポジションベットとみて、中途半端なポケットペアなどでリレイズしてくることもある。しかし、あなたの評判やプレイヤーの性質によっては、フロップを見るまでもなくポットを獲得できるチャンスが大いにある。
seat1: tight [sb]; FOLD
seat2: typical [bb]; FOLD
seat3: tight; FOLD
→ seat4: loose; RAISE
seat5: typical; FOLD
seat6: loose; FOLD
seat7: maniac; RE-RAISE
seat8: tough [B]; FOLD
では、あなたがブラインドにいる時はどうか。わたしの考え方は次の通りである。
1) すべてフォールドできているのなら、 基本はレイズ
2) アーリーからワンレイズが入っているのなら、コール
3) ツーレイズ(スリーベット)入っているのなら、フォールド
具体例をもう少し挙げてみる。
→ seat1: tight
seat2: typical
seat3: tight
seat4: loose
seat5: typical; [B]
seat6: loose [sb]
seat7: maniac [bb]
seat8: tough; RAISE
上のチャートは、UTGである8番がレイズしてきて、直後にいるあなたに順番が回ってきたことを示している。あなたの手札はQTs。さて、どうするか。
わたしなら、あなたの後に控える多くのプレイヤーのアクションが分からないため、フォールドである。
あなたの手札は中途半端なランクであり、レイズをしたプレイヤーに見下ろされている可能性が高い。そうなると、頼みはストレートかフラッシュになる。折角大きな役を狙いにいくのに、コールしたら誰もついてこなかった、では割に合わないし、コールして後ろのプレイヤーがリレイズをかけてきたら非常に寒い。
→ seat1: tight [bb]
seat2: tough; RAISE
seat3: maniac; CALL
seat4: typical; FOLD
seat5: tight; FOLD
seat6: loose; CALL
seat7: typical [B]; CALL
seat8: loose [sb]; CALL
では、仮にあなたがbbにいた時はどうか。
UTGである2番がレイズをしているが、あなたの順番が回ってくるまでに多数のプレイヤーがコールしてきている。ポットは膨らみ、旨みが増しているため、これならコール出来そうである。
このように、同じ手札であっても、ポジションに適したアクションを常に考える必要がある。とくに、順番が早い時には、ひとつひとつのアクションに対して慎重になったほうがよい。
ここまで、少しはポジションがプレイヤーのアクションに与える影響の大きさを感じて頂けたであろうか。
では、こうした認識を踏まえて、今度は積極的にポジションを生かすテクニックをいくつか紹介していきたいと思う。
まず、初手で人数を絞り込むためのポジション活用例からみてみよう。
seat1: tight [B]; RE-RAISE
→ seat2: loose [sb]
seat3: typical [bb]
seat4: typical; FOLD
seat5: loose; FOLD
seat6: tough; FOLD
seat7: maniac; RAISE
seat8: tough; FOLD
今、マニアックのレイズに8番が降りたところで、あとはボタンにいるあなたとブラインドのプレイヤーのアクションを残すのみである。あなたの手札はTT。通常はリンプインなのだが、このような場合のアクションは、ポジションからみるとリレイズになる。
ここをコールすると、ブラインドのプレイヤーも中途半端な(或いは弱い)手でフロップを見にいってしまう可能性があり、勝ち目が薄くなる。ボードでは何がヒットするか分からない。3人のプレイヤーを相手にするのと、たった1人のプレイヤーを相手にするのとでは、勝率は全然違ってくる。従って、ポジションからいえば、ここはリレイズなのである。
リレイズする際のポイントとしては、そのポジションがレイザーの直後であることと、レイザーの前にひとりもリンパー(limper: 初手のコーラー)を含んでいないことである。一度コールしたプレイヤーは、どれほどレイズしても簡単には落ちてくれない。コールする前に速やかに叩くのが上策といえよう。
seat1: tight; RE-RAISE
seat2: loose; FOLD
seat3: tough; FOLD
seat4: typical; FOLD
seat5: tight [B]; FOLD
→ seat6: typical [sb]
seat7: tight [bb]
seat8: typical; RAISE
次の例も、人数を絞り込むという点では上と同じである。
今、UTGがあなたの直前でレイズしてきた。あなたの手札は9d8d。通常はフォールドだが、ここではポジションの力を借りてリレイズもあり得る。上手くいけばヘッズアップ(heads up: 1対1のサシの勝負をいう)に持ち込めるかもしれない。もし、レイズしてきた相手の手札がAKやAQなら、ボードによっては十分に目もある。しかも、フロップでは相手のアクションをみてから自分のアクションを決めることが出来るため、その点でも有利である。
このように、オッズを気にするプレイヤーの多いタイトなテーブルでは、自分より高いランクの手札を持つプレイヤーを落とす狙いでポジションによるリレイズをかけることも出来る。もちろん、ルーズなテーブルでは効果がないため、いつでもどこでも勧められるテクニックではない。
次に示すのは、ポットを膨らませるためにポジションの力を借りる例である。
→ seat1: tight; CALL
seat2: maniac; RAISE
seat3: tight; FOLD
seat4: typical; FOLD
seat5: loose; FOLD
seat6: tough; FOLD
seat7: tight; FOLD [sb]
seat8: typical; CALL [bb]
あなたはUTGから、手札AAでコールした。ここでレイズしないのは、あなたの直後にいるのが、ほぼ間違いなくレイズをしてくるマニアックであるという点と関わりがある。あなたの真の狙いは、このまま素直にリンプインすることにあるのではなくて、複数のコーラーを得てからリレイズすることにある。もちろん、ポットを膨らませて、最後にはそれをごっそり頂く構えである。ひとたびコールしてしまったら、たいていのプレイヤーは降りようとはしないので、8番でコールしたプレイヤーも、予期せぬリレイズに面食らいながらも、コールせざるを得ないはずである。
ここで注意しなければならないのは、あなたは明らかに他のプレイヤーよりも有利な手札をもっていなければならないという点である。そうしないと、まくるつもりがまくられてしまうという無惨な結果にもなりかねない。
ビッグカードで勝負にくるタイトなテーブルでは、ローペアや87sあたりのコネクタスーツといった思い切った手札でリンプリレイズのテクニックを使ってみても面白そうである。
最後に、ブラインドスティール(steal the blinds: ブラインドに対してブラフを仕掛け、ポットを取ること)を目的としたポジションプレーを解説しよう。
はじめの例に挙げた通り、あなたの番まできて誰もポットに参加していなかったら、残り少ないプレイヤーたちもろくな手札をもっていないと踏むのは自然である。実際、少ないポットを一生懸命争うことを望んでいるプレイヤーは少ない。そうした思いを後押ししてやるために、ポジションによるレイズは有効である。
seat1: tight; RAISE
→ seat2: typical [B]
seat3: tough [sb]
seat4: loose [bb]
seat5: typical; FOLD
seat6: loose; FOLD
seat7: maniac; FOLD
seat8: typical; FOLD
今、あなたの番まですべて降りている状況である。あなたの手札はJ8o。通常はフォールドを選ぶ手札であるが、このような状況下ではレイズをとりたい。
bbがルーズプレイヤーであることから、スティールに失敗してしまう可能性もあるが、フロップでのアクションはあちらが先であるため、相手を見てからゆっくりと判断することができる。ここは自分を信じて強気にいくべし。
ブラインドスティールを試みることは、単にポットを取るためだけではなく、パッシブなプレイヤーと見られないためにも欠かせない。ただし、いつもボタンからレイズしていては怪しまれるので、そのあたりは加減すること。とくに、後ろにタフなプレイヤーが控えている時には、下手をするとリレイズを食らったりもする。少ないポットを得ようとして、大きくチップを減らしてしまっては笑うに笑えない。
seat1: tight; RAISE
seat2: typical [B]; FOLD
seat3: tough [sb]; FOLD
seat4: loose[bb]; CALL
seat5: typical; FOLD
seat6: loose; FOLD
seat7: maniac; FOLD
seat8: typical; FOLD
上のゲームの続きである。カットオフの位置からレイズしたが、bbにはコールされてしまった。フロップはA-3-4。チェックされたら、ポジションに従い、いかにもAをもっている雰囲気でもってベットしよう。相手が何もヒットしていなければ、素直に降りてくれるはずである。もしもここでチェックレイズされてしまったら、相手は何らかの手をヒットさせているということだから、フォールドする。