「Pure☆Colors」小説・あとがき

☆はじめに
 このコーナーは、「Pure☆Colors」全般について語っています。
 逸話を多々盛り込んでおり、しかも長い話になります。
 もし興味が湧かないようであれば読まないでください。本当に飽きてきます。
 また、ネタバレが多く含まれますので、本編未読の方もご覧にならないほうがよろしいかと思います。
 それを覚悟できるようでしたら、先にお進みください。

☆「Pure☆Colors」制作
 「Pure☆Colors」は、わたしが初めてまともに作ったノベルゲームです。
 いわゆるギャルゲーと分類されるもので、作ろうと思い立った当時、最も盛んなジャンルだった気がします。
 かくいうわたしも「ときめきメモリアル[コナミ]」や「TLS(トゥルーラブストーリー)[現エンターブレイン]」をプレイしまして、「ときメモ」などは小説まで書いている始末です。
 こうじて、「自分が作るとしたらどんなふうにするだろう?」という単純明快な動機で制作ははじまりました。

○初期
 当初、「Pure☆Colors」はノベルゲームではなく、「ときメモ+TLS」を掛け合わせたようなパラメータ上げをメインとした、イベント発生型で考えていました。
 現在残っている資料ですと、1999年に初期のキャラデザインが描かれています。
 初期段階から完成版「Pure☆Colors」に残っているキャラクターは、水都優輝と天草良子だけです。他に名前が決まっていたのは「真月真緒(マヅキマオ)」だけで、あとはラフ画のみで名無しのまま消えて行くことになります。


※左が真月真緒で、真中が天草良子の初期画。



 結局、能力不足からゲーム制作は断念し、変わってアドベンチャーブック形式の「有高祭園すeAsy」をワープロで書くことになります。一時期HP上にも上がっておりましたので、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。
 このときすでに天草良子のエンディングは完成しており、他のキャラクターについても書こうと思いつつ、「モンスターコレクションノベル」との両立に疲れてやめてしまいました。


※「有高祭園すeAsy」の初期イメージ。東みなみは、忍者時には髪を上げる予定であったが、初期設定のまま髪は下ろすことに。


※HPに掲載したほぼ決定稿。村雨かぐやの髪型の作り方が描かれている。

 この「Pure☆Colors」前身たる「有高祭園すeAsy」には、さらに前身があります。
 「有高祭園すeAsy」は、有明高校を舞台とした学園コメディ小説「有高祭園す」の大まかな背景だけを利用したものでした。この「有高祭園す」が曲者でして、アホくさいキャラクターばかりが多く、とても真面目な話を書けるような舞台ではありませんでした。
   それでも「Pure☆Colors」には一部設定が受け継がれており、「生徒会特殊部隊」の「北枕総司」と「東みなみ」がそうです。この二人については「☆キャラクター」の項でお話ししたいと思います。

 さらに「有高祭園す」にも前身があるのですが、そこまでいくと物書きとしての歴史まで遡ってしまうので、キャラクターイラストの掲載のみにしておきます。


※「有高祭園す」と「モンスターコレクション・ノベル」のキャラクター画。同じ学校を舞台にしているのは「モンコレ・ノベル」のあとがきのとおり。ただしギャグにしかならないので個性的キャラは排除されている。


※「有高祭園す」の前身「DreamPlayer」のキャラ画。作品自体はもう十数年前のものになる。ただし、有高生徒は女子二人と一番上のメガネ小僧だけである。

 「有高祭園すeAsy」から数年が経過し、再びゲーム作成に意欲が湧いたときに、まず作ろうと思ったのがPCゲーム版「Pure☆Colors」です。そして無料ツールを検索していたところ、とあるパソコン・ソフトと出会うことになります。
 ご存知「LiveMaker[HUMAN-BALANCE]」です。

 その他にも「吉里吉里」などがあったのですが、どうもメンドクサイ意識が働き、GUI搭載の「LiveMaker」に決めました。安定した動作とわかりやすいインターフェイスで、「LiveMaker」がお気に入りになったわたしが、「神経衰弱」なども作るようになったのはご存知のとおりかと思います。
 しかしながら今思えば、かなりメチャクチャな要望を送ったりもしました。画面揺らし機能をつけてくれだとか、変数で画像ファイルの指定をさせて欲しいだの、ワガママ放題です。
 そのワガママを叶えてくださったおかげで「神経衰弱」や「ADEPTORS」は完成させられたのですから、「HUMAN-BALANCE」様には足を向けられません。

○そして制作へ……
 ツールも決まり、やる気も出てきたわたしが次に行ったのが、話の再構成です。
 「有高祭園すeAsy」では5人のヒロインがいました。水都優輝、天草良子、津川うるち、東みなみ、そして村雨かぐやです。
 けれど単独製作で画像や音楽までやるとなると、作業量に押しつぶされ、完成しないまま終わってしまうのではないか、と危惧するようになりました。
 そこで他のキャラクターと関わることがなく、かつ「版権」問題のありそうな村雨かぐやはカットしました。
 村雨かぐやのシナリオは大体できており、実現もできそうな展開だったのですがバッサリと落とし、間を別シナリオで補完しました。ただ、個人シナリオに入るまでの全体シナリオは今もゲーム内に残っており、「矢印」が引かれることなく<シナリオノード>が眠っています。
 また、天草良子以外の個人シナリオは製作当時はあがっておらず、その場でシナリオを組み込んでいきました。水都優輝と津川うるちの絡みなどは、どちらがメインになるかで微妙に変わっており、自分的にはよくできてるほうだと思っています。
 省みて、東みなみのシナリオの弱さには唸ってしまい、けれどこれ以上にはできなかったのが力量不足と反省しています。
 ともかくシナリオが済み、画像を準備する段階で困ることになるのでした。

○四転するキャラクター・グラフィック!
 初期のイラストを元に画像を用意しました。……絵が少し変わってました。
 3Dで何とか楽をしようと思いました。……できませんでした。
 線と塗りを単純にしてみました。……言葉もありません。
 パスを覚えました。……少しだけマシになった気がします。
 何も言わないでください。わたしは絵がうまくありません……

○音楽を作ろう!
 才能がありませんでした。
 しかも曲を作るノウハウがありません。なので聴こえる程度の音楽に仕上げました。

○ゲーム完成。しかし……
 ver1を完成させ、自己満足の極みに達したわたしは、無謀な挑戦をしました。
 完成版をダウンロード販売にかけたのです。
 多くの方に「申し訳ありません!」と頭を下げたいくらい、身の程を知りました。
 けれど、それでもお買い上げくださった方がいらしたので、今さら無料配布にもできません。値段を下げるというのも考えたのですが、どのみち売れるようなものではないと判断し、2007年4月、販売を中止いたしました。今後、一切販売する予定も無料配布する予定もありません。これが買ってくださった方への精一杯の感謝と謝罪です。ありがとうございました。

○そして小説へ
 販売をやめたといえど、自分の作った作品を見てもらいたいというワガママな欲求はおさまるものではありませんでした。
 わたしは元々、ゲームを作りたいと思うのと同等かそれ以上に、物書きがしたい人間です。
 それと、初出展からすでに数年が過ぎており、改めて見直してみるのもいいか、と考えるようになりました。
 そこではじめたのが、「Pure☆Colors」の小説化です。
 当然ながら小説はゲームと違い、一方通行です。選択肢などありません。そのため、エンディングはヒロインを一人に絞るかあいまいにしてしまうかの二択となるわけですが、ここは迷わず前者を選びました。結果はまだ読んでいない読者の方のために伏せておきますが、予想通りではないかと思います。
 しかし一人に絞るとなると、他のヒロインの立場が危うくなります。多くのギャルゲー小説やビデオがそうであるように、ここで少々考え込むことになります。
 結果的には、シナリオの薄さもあり、全員分のメインシナリオをこなすことになるのですが、破綻する部分もありました。仕方なく、メインの話なのに大幅に削ったり、発生タイミングをずらしたりして凌いでいます。特に天草良子や水都優輝などは問題発生即解決の削りまくりです。そのぶん、新規のイベントが多々追加されてはいるのですが。
 また、ゲームではカットした村雨かぐやを盛り込み、完全版とするのも目標の一つでしたので、かませ方に頭をひねりました。なんだかんだで、村雨かぐやは他のヒロインにまったくかむことなく終わってしまったわけですが、これはこれでアリだと自分では納得しております。結局、彼女のシナリオはほんの一部のみの使用で、残りはすべて新規に作っています。
 ヒロイン以外のサブキャラクターにも、各自小イベントをいれました。これは一人称ゲームではできなかったので、キャラクターの掘り下げのためにもやりたかったことでした。  ゲームには登場しなかった東みなみの父親や、チョイ役に過ぎなかった竜堂舞美もわずかですか出すことができました。
 また、事件が起こっている裏での各キャラクターの行動も出せて、満足しています。特に畑野聡子はがんばっていました(笑)。
 「Pure☆Colors」小説版は、小説としてのデキはわたしにはわかりません。わたしは文章を書くのは好きでもうまくはなく、わかりづらい、抽象的過ぎる部分が多くあると思います。
 ですが書き終えて満足しています。頭の中で映像が浮かぶくらいの思い入れもできました。あとはみなさんの感想をお待ちしたいと思います。

 小説に対しての「あとがき」は以上になります。これ以降は、裏話的設定などをキャラクターごとに書いておきたいと思います。

☆キャラクター
○結城港(ユウキ・ミナト)
 ノベルゲームにはありがちな、無個性なキャラクターです。朝が弱く、頭も弱く、なぜかケンカが強いという、コンパチブル・キャラクターもいいところです。
 せめて名前でインパクトをつけておこうと思い、決まっていたメイン・ヒロインの「ミナト・ユウキ」の姓名を逆にしてみました。ゲーム内ではエンディングの中の一つで「結城優輝」「水都港」とからかわれますが、小説では言葉としては出す場面がなく、断念しました。
 ゲームではヒロインが一人に絞られていくため、彼の精神的成長もヒロインにあわせていけばいいだけでした。けれど、小説で、しかも五人全員のイベントをこなしながらですと、どこで成長ポイントを上げればいいのかわからなくなって困りました。
 彼は自分が嫌いで、努力すらもあきらめて日々を過ごしていました。しかもすぐ側には完璧超人みたいな幼なじみがいるので、コンプレックスも増すばかりです。
 その彼がどう成長して、自分という人間を変えていくのか、それを主題として今小説を書きました。果たしてうまくいったものでしょうか。

  ○天草良子(アマクサ・リョウコ)
   成績優秀・運動能力バツグン・家事もこなす明朗活発少女で、畑野聡子の言葉を借りれば「どこの超人よ」となるキャラクターです。ギャルゲーというジャンルの中では、むしろ珍しくない部類ですが。
   その完璧超人に理由があるのは、読後であれば理解いただけると思います。性格的に「ツンデレ」とかいう表現があるようですが、これも実は違います。最終話を前に気づいた方がいてくださると、作者としては嬉しいかぎりです。
   「有高祭園す」の初期設定では、それこそただのツンデレ少女でしたが、変われば変わるものです。ギャルゲーならば「幼なじみは出さないといけない」という理由だけで彼女がその大任を受け、いつの間にかいろいろと設定がついていきました。その「いろいろな設定」がなかったら、「Pure☆Colors」はゲームとしても物語としてもダメだったと思っています。
   イラストでは猫眼というかつり眼というか、あまりかわいい印象がありませんが、そのあたりは脳内変換してくださると助かります。
   ちなみに、ゲーム内でも小説内でもあまり身長には触れていませんが、女子生徒の背の高さは、良子≠聡子>優輝>かぐや>みなみ>うるち>舞美となっています。良子と舞美の差は、ほぼ頭一つ分です。どうでもいい話ですね。
 

※アトラスのNDSゲーム「世界樹の迷宮」でパロったもの。

○水都優輝(ミナト・ユウキ)
   オーソドックス・ヒロインとして生まれました。髪はロングのストレートで、天然の入ったオットリ系を目指したのですが……。
   彼女はメイン・シナリオがはじまると、印象がガラッと変わるキャラクターになってしまいました。貶める気はなかったのですが、流れには逆らえずちょっとアレな性格に。
   ですがそれが気に入らないというわけではなく、ゲームのヒロインとして考えなければ、ごく普通のような気がします。ちょっと嫉妬深くて、寂しがりで、他人への気遣いに翻弄されるタイプといえば、どこにでもいるのではないでしょうか。
   ゲームでは選択肢しだいでその後が変わりますので何ともいえませんが、小説のほうでは少しだけ成長した自分を見出せるようになっています。各ヒロインが結城港に影響を与えたように、彼女たちも影響を受けて成長している姿は、ゲームでは書けなかったので新鮮でした。
   良子に叩かれるシーンは、当初、寸止めの予定でした。ですが良子の心情的には叩かないわけにいかなかったので、思い切り叩かせました。本当はこういうドロっとした話や、生死を簡単に扱う話は嫌いなんです。しかもよく考えると、優輝はそれほど悪いことをしたのか?と作者が疑問に思うくらいでしたので。それがわかった港と、わかっていても許せない良子の対比も、よく言えば出ていたのかもしれません。
 その後の優輝がキレるシーンは、自分でもまさかの展開でした。もう少し穏便に解決させるはずだったのですが、これまた良子の心情を考えると、あまりに調子良すぎるような気がしたのです。そして、頑なな良子に対してあやまり続けても許されず、どうしていいかわからなくなり、優輝はキレます。彼女にも我慢の限界はあるし、言い分だってあったはず、と考えると妥当だったとは思いますが……。もうかなりみっともない展開ですが、二人としてはこれ以上はないと思い、そのまま突っ走ることにしました。
   その数日後には良子を心から応援するにまでなった彼女は、たしかに成長しているんだなと感じるのは、甘いでしょうか?



○津川うるち(ツガワ・ウルチ)
 これもありがちな騒がしい落ち着きのない女の子キャラです。せんべい好きという設定がまずあり、それにあわせて名前をつけました。特徴であるヘッドホンとせんべいを常備させたところ、「おまえは本当に高校生か」とツッコミたいキャラクターになってしまいました。
 本をよく読み、音楽が好きという設定はゲームの時からありました。彼女の家は裕福ではなく、お小遣いもそれほど貰っていません。だから暇つぶしに同じ本を何度も読み、同じCDを何度も聴いています。そういうなかで、明るくいこうとがんばるのが津川うるちという女の子です。ちなみに、休みの日は図書館によく通っているのですが、それは小説版でも書く余裕はなかったですね。
 うるちというキャラは、当初は本当に騒がしいだけキャラクターでした。けれど上記のような設定がついたとき、彼女は楽しくありたいと願う女の子になりました。本質的には楽観なのですが、いざとなる怖気ついてしまうところがあります。自分が幸せになるより、他人が幸せで、それを側で見ていられたら自分も嬉しい。そんなふうに考えてしまうのです。ゲーム内のほうがよっぽど楽しそうだったのですが、そのルートを辿るわけにはいかなかったのが、かわいそうなところでした。
 ですが、彼女の楽観さに港は救われてきました。その筆頭となる小説独自イベントが「堅焼きハンマー」と、その前の「つまり殴っていいんだね」です。うるちらしくていいな、と筆者自身が思わずにいられないイベントでした。
 ところで、ゲームをプレイなさった方はご存知でしょうが、彼女だけメインシナリオがなぜか育成SLGです。勉強とお店のパラメータを上げていくゲームになっていて、自分としては面白いと思い組み込みました。
 この二つに体調を加えた5つのパラメータでエンディング分岐があったのですが、判定が甘いので、普通にプレイしている分にはハッピーエンドになると思います。まだすべてのパターンをご覧になっていらっしゃらない方は、確かめてみてはどうでしょうか?
 ちなみに小説版は、ハッピーエンドの1ランク下のエンディングがモチーフになっています。



○東みなみ(アズマ・ミナミ)
 彼女は「Pure☆Colors」に出てくるキャラクターの中で、最も古い歴史を誇ります。前述の「有高祭園す」よりも、実は古いキャラクターです。
 高校生で三元流忍術使いの彼女の起源は、「雀狩馬(ジャンカリバー)」という麻雀をモチーフにした戦隊物の一人でした。今はもう資料が残っていません。記憶では三人組で、リーダーが「天和(テンホー)」という名前ではなかったかと思います。東みなみは三人目で、いつも雀マットになる頭巾を被っているという設定がありました。もう本当に、どこまで本気なのかわからないお話です。
 その後、戦隊ではなく、単独ヒロイン物として何かを考えました。題名はすっかり忘れていますが、敵の組織が「ジャンドラー」とか言った名前で、親玉が「ドラカール皇帝」。その息子がなぜか日本名で、「平和清一(ヒラカズ・セイイチ)」というハネ満確実の名前がついていました。ここ、笑うところです。
 ヨタ話が長くなりました。
 そういう経路があるにもかかわらず、彼女は初期のころからまったく特徴がかわりません。昔から人見知りで、物腰が柔らかく、ポニーテールで、前髪で目が隠れています。逆に言いますと、そういうキャラクターが固まっていたので今まで残ったのでしょう。
 しかしながら、そのキャラクターも、普通の人の中にはいると浮くだけでした。港と仲良くなるまではいいとして、それ以上に何か起こりえるのか? とメインシナリオを書くときに思いました。
 けれど、普通の人だからこそ、みなみは自分を普通に扱ってくれるのが嬉しかったのだと考えると、話はスムーズに決まりました。
 しかしながら、完成したゲーム版のシナリオは、どうも面白みにかけるような気がしました。話がすっきりしすぎているのです。もう一つ、何か事件があってもよかったなと思いましたが、当時も今も、結局できませんでした。
 かわりに、小説版でちょっとした場面で出てくるみなみは、それなりに面白く書けたと思います。とくに、何かを食べに行くシーンが多々ありますが、お好み焼きとタコ焼きは気に入っています。
 良子が異常なまでにみなみを可愛がりますが、あの気持ちはわからなくはないでしょう。劇中にはありませんが、きっと港の知らないところで、良子はみなみを誘って遊びに行っているような気がします。
 ちなみに彼女の忍者服ですが、あれは制服のリバーシブルです。ハイネック・シャツを着ているのは口元を隠すためです。一度も説明はしませんでしたが、これは初期段階から決まっていました。



○村雨かぐや(ムラサメ・カグヤ)
 ガンプラ大好き少女という設定で生まれたキャラクターです。ゲーム版では性格的に東みなみに似ていた、という理由もあり削除されています。
 彼女の名前は、「Zガンダム」の「フォウ・ムラサメ」プラス「ターンA」の「ディアナ・ソレル(=月のお姫様=かぐや姫)」で付けられました。また、彼女は四人兄弟の末っ子で、「4番目のフォウ」という意味もあります。兄たちからは「ガルマ」と呼ばれているというエピソードも元シナリオにはありましたが、当然みることはできません。
 その他にも、雲の形を見て「金平糖」を想像し、そこから「ソロモンの悪夢」にまで話を飛躍させて熱く語ったり、髪型が「ターンAガンダム」である話もありました。基本的に、彼女はガンダム・ネタを話すときは性格が変わります。
 唯一残ったゲーム版イベントは、火事だけです。もともと村雨かぐや用のイベントでしたが、ゲームでは単なるフラグ上げの条件にしかなりませんでした。「もえあが〜れ〜」は、彼女に失礼ながら笑ってしまう場面として心に残っています。
 また、その後の強盗の話も、東みなみのイベントながら村雨かぐやの火事に関わる事件としてつながっていきます。ゲームではかぐやがいないだけで、ずいぶんとあっさりしたイベントになってしまいました。
 彼女のメイン・シナリオは、雑誌のコンクールに向けたガンプラ改造でした。それまでの製作工程を思い出し、順序良く組み立てていくと得点が高くなる、というシステムも作っていました。
 小説版では、落ち着きのある、ただ自分の趣味に没頭するようなキャラクターになっています。前述のとおり、ゲーム版の彼女が東みなみに似ていたので、少しでもキャラクターを分ける必要があったからです。
 その彼女の存在があってはじめて、結城港は自分を振り返ることができました。何かに夢中になれ、それを押し付けない、誰にも屈しない彼女の強さに、彼は自分の中途半端さに気づいたのです。小説版では、彼女がいなければ、結城港は他人の想いというものに鈍感なまま終わったことでしょう。
 最後まで他のヒロインと絡むことがなかったのは、結果的に良かったのか悪かったのか、わたしにはわかりません。ですが絡むまでもなく、優輝も良子も彼女の存在は知っていました。体育の授業などはA組と合同になるのですから。変わった髪形なので、気づかないわけもないでしょう。そのへんを書こうとも思ったのですが、蛇足だったのでやめました。
 ただ、彼女との絡みで、どうしてもやりたかったけれど、余裕がなく断念したイベントが一つあります。それは「南極条約」イベントです。港がかぐやから「南極条約」について聞き、それを良子に自信満々に語るという話です。もちろん二人の考える「南極条約」はまったく違うものですから、そのリアクションを楽しみにしていたのですが……残念です。
 ちなみに彼女の理想はランバ・ラルで、次点がアナベル・ガトーです。



○須藤正義(スドウ・マサヨシ)
 定番の男友達です。害のないタイプになるのは、どのギャルゲーでも決まりみたいなものです。彼もそういったわけで、単にノリのよいキャラクターとして作りました。
 優輝もしくは良子に好意があるという設定も考えたのですが、無駄に思えたのでやめました。ゲーム版では陰が薄くほとんど活躍しませんでしたが、小説版ではところどころ深い話をしたりしています。
 性格も港よりもさっぱりとしていて、実はかなりいいヤツです。ただ、面倒が嫌いなのは彼と同じで、普段はマンガばかり読んでいます。
 正義については設定不足のところもありましたが、それが逆に伏線くさくもなって悪くはないと思っています。続編が出ることはないでしょうか、伏線は何本張ってもいいような気がしますので、あえてすべての回答は出さないつもりです。そういう意味では、中学時代にいたもう一人のついても、設定はありますが本編で語るつもりはありません。

○畑野聡子(ハタノ・サトコ)
 彼女なくして「Pure☆Colors」は語れなくなりました。ゲームでは、彼女のサポートがあって話が進行するヒロインが二人もいるのですから。
 彼女の初出典は「モンスターコレクション・ノベル」です。次に紹介する竜堂舞美の親友として登場します。舞美の絵がとても好きで、彼女個人がもっと好きで、聡子は舞美といるのを好みます。このへんはモンコレノベル本編を読んでいただけるとよくわかると思います。
 聡子は明朗活発で、大雑把で、冗談が好きで、笑い上戸で、でも美術部です。絵を描くのは好きだけれど、性格的に雑になりやすく、いい作品が描けないタイプです。
 世話焼き気質は良子と同等で、キャラクター的に良子と被るかと思ったのですが、それ以上に豪快でした。自分が好きなものには猪突する傾向があり、間違ったことが徹底的に嫌いな極端な性格です。ゲーム版の水都優輝篇をプレイしていただいた方には、その徹底振りがわかると思います。
 小説版では、ゲーム版にあったうるちの頭を鷲づかみして登場するシーンが出せなくなって、ちょっと残念でした。
 いろいろな意味で、本当に彼女はいいキャラクターです。

○竜堂舞美(リュウドウ・マイミ)
 ゲームでは優輝篇でわずかに登場するキャラクターです。モンコレノベルと同じ舞台ということで、チョイ役に出してみました。
 昔から絵が好きで、中学では都のコンクールで賞を貰っています。けれど親しい友達はおらず、中三までほとんど一人で過ごしていました。そんな彼女にも気になる男子生徒がいて、彼とともにゲームをするようになって彼女は変わります。そしてその変化に気づいた畑野聡子が友達宣言をする――というのがモンコレノベルでの彼女の話です。
 当初、こんなラブコメチックな話ではなかったモンコレノベルが、彼女の登場以降大きく変わったのはナイショです。
 基本的に真面目で、からかわれるとすぐに真っ赤になります。それが可愛らしくて、聡子は彼女をからかうことを生きがいにしています。港や良子がみなみをからかうのと同じ原理です。
 そんな彼女も、高校に入るころには人見知りもなくなり、誰とでも話せるようになりました。
 ゲーム版では港と、優輝について真剣に話をする彼女ですが、小説版では聡子の取次ぎで終わっています。しかも下級生呼ばわりです。さらに「マッチョ・ダンサー」なるアダ名まで付けらてしまいました。小説版では不遇です。
 モンスターコレクションのルールがわからない方が多いとは思いますが、雰囲気だけでも味わい、彼女と彼が織り成すドラマを読んでいただければ幸いです。


※草野駿と竜堂舞美。いつの間にか二人が主人公になった「モンスターコレクションノベル」

○御門シン(ミカド・シン)
 お金持ちで負けず嫌いのワガママ坊ちゃんとして「モンコレ・ノベル」では登場しました。そちらの頃よりは多少融通が利くようにはなっていますが、大きな変化はないです。
 ゲーム版では、彼の出番はうるち篇のみでした。小説のほうもメインはうるち篇に絡むだけですが、もし二学期以降の話があれば、結城港個人との絡みが出てくることでしょう。
 小説では細かなところで何度か出てきますが、彼はいつでも自己正義を掲げて行動をしています。うるちのせんべいにしても、やかましいので嫌いですし、そもそも食事ではないとまで思っているでしょう。結城港に対しても、中間テストで少しは認めましたが、それでも彼を友人とすることはないはずです。彼は自分が尊敬できる人間しか相手にはしないので、北枕総司以外の生徒とは滅多に話をしません。唯一、同学年で一人だけ稀に話をする生徒もいますが、それでも相手からの接触がなければあいさつすらしない間柄です。
 そんな彼があと一年半の間でどれだけ変わるのか、それはたぶん結城港しだいなのでしょう。
 以上の三名、畑野聡子・竜堂舞美・御門シンがモンスターコレクション・ノベルからの登場人物ですが、それをご存じなくとも本編にはまるで影響はありませんので、ご安心ください。

○北枕総司(キタマクラ・ソウシ)
 有明高校が誇る最強の男です。総合格闘部部長と生徒会長と秘密組織・生徒会特殊部隊総帥を兼任しています。
 幼少の頃より自分と同じ年頃の者とケンカをして一度も負けたことがありません。武道の試合に出ても負け知らずです。そのため、彼には対等となる者、ライバルになる者がおらず、高校生になってからは不満の毎日を送っています。別作品となりますが、「ADEPTORS」の主人公「伊吹一葉」も似たような境遇です。彼には島津将人という親友がいるおかげで、総司ほど思いつめることはなかったようです。
 総司が他人に求める強さは、なにも肉体的なものではありません。芯のある者、物事に取り組む姿勢が正しい者、間違ったことを間違いだと言える者であれば、その人間を認められるのです。
 結城港は真正面から彼に相対しました。友達を大切にする心意気と、間違いを言葉にできる人間だと、総司は認めたわけです。多少、感情に走るきらいがあるのが問題とは思っているようですが。
 それでも総司は、結城港を次期生徒会特殊部隊総帥にするつもりでいます。御門シンは間違いなく生徒会長を狙うだろうが、生徒会特殊部隊の今後を任せるとなると、彼では堅すぎる……というより、組織自体を認めようとはしないだろうと総司は考えたのです。御門は指導力では疑いないが、組織の有用性を疑っているからです。そこに現れた結城港という人材は、彼をニヤリとさせたことでしょう。何より御門が嫌がる姿を楽しんでいるようですから。
 そんなお茶目で堅苦しい絶対正義の象徴たる北枕総司の元設定は、上でも述べているとおり、「有高祭園す」からはじまっています。問題児の多い学校ですので、生徒会特殊部隊という組織が生徒を保護し、ときには監視する役割をもっています。彼はそこでも総帥として働く立場にいました。
 その「生徒会特殊部隊」という組織は、「Pure☆Colors」には不似合いだと思いはしました。それでも出したのは、やはりインパクトが欲しかったからです。また、東みなみを活かせるのも、そういう組織があってこそだったと思います。実際、劇中では何度も活躍していましたし、彼女と組織がなければ数々のイベントも劣化し、エンディングすら違ったものになったことでしょう――というのは褒めすぎですね。

○北斗(ホクト)
 シナリオ上必要だったので登場しただけのキャラクターです。モチーフや細かい設定はなく、その場での雰囲気で性格などが決まりました。
 東みなみを忍びの世界から解放するためにいろいろ動いていたのですが、結城港が邪魔になって妨害工作などをします。結局は、彼女の心情を理解して、その上でどうにかできないものか思案することになるわけです。
 ゲームのほうではやや説明不足もありわかりづらかったと思いますが、彼は一貫してみなみを三元流頭首にするつもりはありませんでした。それどころか忍術使いであることすら、否定したかったのです。能力よりも性格的に不可能と、幼なじみだけにわかっていたようです。
 小説の最後で、北枕総司が「みなみの従兄弟殿」の話をしましたが、説明するまでもなく北斗のことです。みなみをSSSに復帰させるために館へ出向いたとき、出会っています。もしかすると手合わせをしたのかも知れません。その折に、結城港についても詳しく話を聞いた可能性が高いですね。

○その他
 うるち祖母やみなみの父親など、数人のキャラクターがいますが、いずれも深い設定はないので割愛します。
 ただ一人、生徒会特殊部隊のメンバーで、ノートパソコンを持った男子生徒がいましたが、彼はゲームでは名前で出ています。小説では不必要と判断してカットしました。


☆おわりに
 以上で「Pure☆Colors」のあとがきを終わります。
 あとがきと言うよりも、今までの総括みたいなコーナーでしたが、いかがでしたでしょうか?
 多少なりとも楽しんでいただければ幸いです。
 それでは長々とありがとうございました。
 次回作でお会いいたしましょう。


      2007年5月22日 <了> 
  


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