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―空想世界の言語考察

 

 当たり前と言えば当たり前なのだが、どうにも不思議なことがある。
 現実に私たちの暮らすこの世界はこんなにも多種多様な民族がいて言語もまちまちなのに、どうしてRPG世界では言語がほぼ一種類なのであろうか。言語に違いがあっても、たかだか数種類。出てくる民族も数種類までであることが多い。
 「統一された言語じゃなきゃ、話にならないから。」なんて、やぼな話は言いっこなしである。あくまで、言語の統一性や民族の少なさには理由があるものとして、真面目に考察してみた。

 言葉の種類が少ない理由として最も考えやすいのは、言葉の発生系統が一つないし二つくらいで、人類が分散したのがごく最近だという理由である。現実世界で、日本語やら英語やらさまざまな言葉の種類があるのは、その言葉の発生した場所が違うからであり、互いに離れた場所に住んでいて、あまり交流していなかったからだ。すぐ近くに住んでいれば、言葉はおのずと影響しあって発達するだろうから、そうそうかけ離れたものにはならない。
 ある程度言葉が形作られてから人口が分散していったとすると、RPG世界のように、世界の裏側でも別の大陸でも、ほぼ同じ言葉が話されるようになるのではないだろうか。海を挟んでいても、イギリスの英語とアメリカの英語が大して違わないのと同じ理屈である。

 つまり言語が一種類しかない、RPGやファンタジーの世界にありがちな世界は、なんらかの理由でつい最近まで人間の居住可能な地域が限定されていた世界で、人類の歴史は、言語が多様化するほど長くはないことになる。歴史ある街の歴史も、実はそう古くはないのだろう。
 そういえば、RPGなどでは、滅びた超古代文明や魔王に支配されていた時代などが出てくることが多い。他の言語系統に属していた民族は滅びてしまった、と、いうことなのだろうか。どおりで人口が少ないわけだ…。

 さらに、世界の大きさが「狭い」ということもあげられる。
 ワープシステムや、都合のよいトンネルがあるにせよ、徒歩でほぼ一周できてしまうくらいの大きさである。(序盤から高度な移動手段を持つことは稀)地球の大きさと比べれば、その違いは歴然だろう。いくつもの大陸があっても、せいぜいが地球の5分の1くらいではないのか。この狭さなら、たとえ言語の発生が別であっても、人種が別でも、早い段階で接触して混じりあうはずだ。世界征服もカンタンだろう。なにせ、言葉の通じない人間がほとんどいない。現実世界だと、世界征服の犯行声明分を読み上げるだけでも、いったい何百通りの言語を話せばいいものか。せいぜいが英語圏と中国語圏と日本語圏とロシア語圏を押さえるくらいしかできないだろう。(インドは、公用語以外に30種類くらいの言語があるのでここでは省く)

 それにしても、そんな小さな惑星では、公転速度や他の惑星との引力の関係上、存在自体に無理がある気がしなくもない…。
 世界はある程度の大きさが必要であり、大きさがある限り、言葉にはおのずから差異が出来るし人種や生活習慣も違うだろう。そもそも、そんなことを言い出したら世界で通貨が統一されていること(「フォル」だったり「ギル」だったり「ゴールド」だったりする。略した時にGとなることが多い)や、国家が10未満だということ、一つの大陸に町が数個しか無いことなど、色々疑問は残る。

 まあ…
 空想世界の歴史まで考え始めると、指輪物語かファイブスターみたいなことになってしまうのだろうけれど。

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