「ONE PIECE」と、いうマンガを、ご存知だろうか。
これを書いている現在、週刊少年ジャンプで連載している人気マンガである。毎週日曜にはアニメも放映されている。
この物語は海賊王を目指す主人公と仲間たちが冒険航海を繰り広げるものなのだが、主人公はじめ多くのキャラクターが、「○○の実」と名前のつく不思議な木の実を食べており、特殊な能力を有している。
たとえば主人公のルフィは「ゴムゴムの実」を食べているのでゴム人間、仲間のトナカイ、チョッパー君は変身する不思議なトナカイ君である。
だが、しかし。
そんな特殊能力を持つ人々に交じって、なんの能力も持たないはずの生身の人間たちも登場する。
ルフィの仲間たちのうち4人は、これを書いている時点で、生の人間だという設定になっている。
人間技じゃない技も、「イエ。私は○○の実を食べた能力者ですから。」と、言われれば納得するのがマンガの世界、それですべてに理屈がつくのが空想物語だが、生身の人間はむろん、別である。
生身なのに能力者と互角以上の戦いを繰り広げる仲間たちは、どう言い訳したって凄すぎる。
こいつらは一体何者か? 生身なのに、人間じゃない技を繰り出す人々より強いとは、どういうことか?
これは、ワンピースをそれなりに愛する者によって語られた、「普通の人間」として考えたばあい、明らかにおかしいだろうという場面に向かって激しくツッコミを入れるコーナーである 。
※筆者はバリバリの文系であるため、あまり詳しい数式や専門用語は分からない。そこんとこ我慢してもらいたい。
◆仲間その1 サンジ君の場合◆
サンジ君は、船上コックを務める料理人さんである。
極上素材から難儀な敵まで、おいしく手早く料理する。しかも料理人のため、手で殴らず、必ず足で戦うという職業命の兼業戦士。
舌が命の料理人のくせに喫煙家ってどういうことよ、とかいう基本的なツッコミは、このさい免除。
彼の何が科学的におかしいか、というと、蹴りの破壊力である。
よく考えてもらいたい。
フツー、蹴ったら、その反動が足に来るものである。とくにサンジ君の場合、かかとで上から下に蹴り落とす場合が非常に多い。反動は、モロ真上に突き上げるはずだ。
基本的に、キック力が大きくなればなるほど、反動も大きくなる。
よって、コンクリを砕くほどのキックをかました場合、常識的な体重なら、体が浮くのがフツーなのである。
なのに平然としていることが多いのは、どうしてなのか。
しかも彼は、たまに両手ポケットに入れたまんまケリをかましている。この体勢だと、軸にしている一本足でおのれの体重すべてを支えた挙句、ケリの反動と衝撃も受けなければならないうえに、バランスをとることもままならない。
どんな足だ、それは。
いかんせん理系の人間ではないため、細かい計算は出来ないのだが、破壊力からしてゾウの体も浮くくらいの力が働いているのではなかろうか…。当然、バランスを取るだけでも物凄い力が必要になる。
サンジ君の足の裏には、通常では考えられない引力が働いていて、地面に体をすいつけているとしか、思えない。
そして、彼の軸足は、とてつもなく強靭な素材で出来ているのだろう。まさしく鋼鉄コックである。
※あとで思い出したが、K−1選手などはトン単位のキック力を持っているのだった。(超人王国に出てた)
と、いうことは、人間でもコンクリを打ち砕くくらいは可能かな、と思ったが、K−1選手でも、両手をポケットにつっこんだままの体勢でケリを繰り出すのは、まず不可能である…。
◆仲間その2 ゾロの例◆
もと海賊狩りの賞金稼ぎ、イカした剣士・ゾロは、なんと三刀流という剣術の使い手である。
腕は二本しかないのに、どうやって三本目の刀を持つのか。…答えは簡単、口にくわえて攻撃するのである。
もはやこの時点で、多少なりとも剣道をしたことのある人間は「エエー!」と、驚きの声を上げるだろう。
刀で攻撃すれば、刀にそれだけぶんの反動が来るはずなのだから、ふつうの人間なら、まず刀を落とすはず。しかし、ゾロは決して刀を落とさない。口にくわえたまんま相手に突進する。
では、口に刀をくわえたまま、刀を落とさないよう攻撃するには、どれくらいのアゴの力が必要なのか?
これも具体的には計算できないのでが、たまに鉄のかたまりにロープをつけて、アゴぢからのトレーニングを行っているところから察するに、岩でも噛み砕けるくらいの力は、ありそうだ。
人間のアゴなのに、噛み砕く力が「トン」単位!
すばらしぃ。
しかも、三本目の刀のおそるべきところは、これだけではない。
口にくわえた刀で攻撃した場合、その衝撃は、モロに頭部に加わってくる。刀を落とさないほどのアゴの力だけではなく、反動に耐えきるだけの首の力も必要だ。
ゾロがちょっとおバカなのは、攻撃するたび脳に激しい振動が加わって、脳細胞が破損しているからだとしても(笑)、果たして、人間の、細い首で激しい衝撃に果たして耐えることができるだろうか?
骨というものは、縦の衝撃には強くても、横からの衝撃には弱い。
首なんぞ、細かく細い骨が何本もつながっている構造である。激しくゆさぶったら、折れなくてもズレるのは当たり前。神経の集中する首の骨が僅かでもズレたら、即・半身不随の危険性がある。
にもかかわらず、ゾロはピンシャンしている…、と、いうことは…
彼の首は、生身の人間では考えられないほど骨の連結部が強靭、と、いうことだ…。
恐ろしい。絶対むち打ち症にはならないな、この人。
突進してくるトラックに向かって頭突き出しても、たぶん死なない。絞首刑・ギロチンもムリであろう。
もし海軍が賞金首として彼をとらえた場合、公開処刑の方法に悩むだろうことが予想される。
◆仲間その3 ナミさんの状況◆
と、ここまで挙げてきた二人は、実は前座である。
いちばんスゴイのはナミさんなのだ。
何が凄いかって。あの細腕で、細い棒一本で、自分より大柄な人間を吊り上げて振り回せる腕力り持ち主だというところだ。
彼女は、仲間のウソップ氏によって開発された、「クリマタクト」という武器を装備している。
このタクトは3本を連結した仕様になっており、組み替えることによって様々な技を発動する。その中の最強必殺技「トルネードテンポ」が、右図のコレ。
この技は、3本めのタクトから飛び出したワイヤーつきのハトが敵をからめとり、タクトの回転に巻き込んで吹っとばすという、恐るべき荒業である。
…こんな便利な武器つくれるのか? と、いうウソップ氏へのツッコミも、これまたここでは免除して差し上げよう。
問題は、「ワイヤーの絡みついた敵をタクトの回転に巻き込む」とき、敵の足が地面から浮いていることである。
地面から浮いている=敵の全体重は、タクトの先端にかかっている。
と、いうことは、タクトを握っているナミさんが、この敵の体重を持ち上げていることになる。
しかも敵の体はタクトの先に絡みついているのだから、ただ持ち上げているだけではなく、棒で引っ掛けて持ち上げているのだ。
ちなみに棒で持ち上げる場合、手でつかんで持ち上げるより必要な腕力は大きくなる。(棒が長くなるほど、かかる力が大きくなる。)
さらに恐ろしいことには、この技は、持ち上げた敵の体を、「タクトの回転に巻き込んで吹っ飛ばす」ことまで、やってのける。
棒にひっかけて持ち上げた敵の体が回転する…と、いうことは、回転している間、彼女はその反動を棒きれ一本で支えているのだ!
女性の腕力では、まずムリだ。
それで折れないタクトの材質もかなり不思議だが、吹っ飛ばされないナミさんの体も不思議である。
回転しているものを持った場合、その回転に対抗して体のバランスをとるには、逆回転の力が必要になる。
ヘリコプターに、回転する羽根が前後にふたつついているのを、思い出してもらいたい。
ナミさんは、この逆回転の力を、自らの足の踏ん張りだけで生み出している。(しかも、このシーンでは足にケガしているのにそれが可能だという!)
ナミさんの腕力は、持ち上げたミス・ゴールデンフィンガーの体重より余裕で大きく、その足の踏ん張りは、たとえ傷ついていても、大の大人をぶんぶん振り回してOKなくらい力強い。
素晴らしい。
これでこそ、グランドライン<大いなる航路>に挑む航海士に相応しいであろう。
◆仲間その4 ウソップ氏の事情◆
…と、いうわけで、ナミさんの項で少し触れたとおり、ウソップについては、その身体能力がどうこうよりも、恐ろしいまでの発明能力がカギとなる。
ナミにさんに渡したタクト一つとっても、もはや地球上のテクノロジーでは、不可能に近い。
タクトは、3本のうち一本が冷気を、もう一本が電気を、さらに最後の一本が熱気を生み出す、という。
電気を生み出すには、中に静電気発生装置でも仕込めば何とかなるかもしれないが、冷気を生み出すには、中に瞬間冷却装置が組み込まれていなければならないし、熱気を生み出すにも同様に、放熱機が必要だ。
しかしそれらをタクトに入るほど超小型で造るのは難しいし、燃料のスペースを考えると、さらに難しくなる。
…いや、ナミさんが使いまくっても燃料切れにならないところからして、ものすごい燃料消費の少ない装置か、燃料ナシで動く不思議な装置なのか?
ありえない。不可能だ。
さらにこのタクトには、水を放射するという機能も在った。しかもあきらかに、タクトの容量より大量の水を放射している。
外部から水を取り込んで、瞬間的に精製しているのか? そんなもんがあるんなら、実用化して航海のお供にすれば遭難知らずではないか!
っていうか、海賊なんかやんなくても、発明だけで一生安泰ではないか。
(だいたい、満足な材料もない海上で、これだけのものを造れるのだから、ちゃんとした施設で作ったら、どれだけのものが…。)
ウソップは、確かに弱い。身体能力からいけば、パーティー内で最弱だろう。
だが、その発明能力は、体の弱さなど補って、余りある。彼は実は、ヘタすれば世界制覇も可能な天才的頭脳の持ち主なのだと、ここに明言しておきたい。
■オマケ/ビビ
最終的に仲間からは抜けていくことになるビビだが、彼女もスゴイ。
なぜなら、大時計の上から怒鳴ったら、広場にいる人全員に声が届いてしまうからだ。
「戦いを…やめてください…!」
叫んで届くだろうか。いや無理だ。運動場の向こうから怒鳴ったって、ふつう聞こえない。
しかも音とは基本的に上にむかって伝わっていくものである。下から怒鳴って上に聞こえるならまだしも、上から怒鳴って下に聞こえるようにするには、すさまじい音量が必要なはずである。
そんな声が人間に出せるのか…、というところも含め、大ボリュームの声でヒタスラ怒鳴り続けても壊れない声帯の持ち主である、というところに王女としての凄まじさを感じる。オペラ歌手もビックリである。
大声コンテスト優勝は間違いない。地声で広場いっぱいに響く声の持ち主なんだから、拡張しようものならその破壊力は計り知れない。彼女には、うかつにメガホンを渡さないことをオススメする。
(と、いいつつ、彼女がパーティーを外れるラストシーンでは、しっかり持ってたな…メガホン…。)
■オマケ/2
あの傷で生き残った王様もすごいよね。ネフェルタリ王家万歳。
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グランドライン、そこは、奥に行けばいくほど化け物じみた人間が登場する場所だという…。
でも、私は彼らを心配したりしない。なぜって、彼らはすでに化け物を超えた人間だからだ。
大丈夫。あんたたちなら、絶対死なない。
むしろルフィより、あんたたちのほうが化けモンや…。(涙)
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