▲石榴(ざくろ)
英名/Pomegranate | 古エジプト名/イネヘメヌ | |
年代 | 東洋的な植物だと思っていたら地中海東岸からインドが原産地なんだそう。中国に入るのが起源3世紀、日本には平安朝の終わりごろ渡来。 | |
利用例 | ●使用法は現代と同じ。寄生虫駆除に、ザクロの木の根を水に浸して一晩夜露に晒したものを裏ごしして飲ませる。 ●混ぜ物が違っても、ザクロの根っこをすりつぶして飲むというのが腹の中の虫を下すのに良かったらしい。 |
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コメント | そういえば、ギリシア神話に、冥界で石榴の実を食べてしまって地上にもどれなくなる美人の話がありましたっけね。実じゃなくて根っこを食っとけば、虫もつかない美人さんでいられたんですね(笑) |
▲サフラン
英名/Seffron | 古エジプト名/セネウテト | |
年代 | 小アジア、地中海東岸が原産で北アフリカにも自生。 ということで昔からエジプトに生えてたもののよう。ただし種類がいろいろあるので、園芸用のサフランとは違った姿で生えていたかもしれない。 |
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利用例 | ●腰椎リウマチに。めしべを摘んで腰に塗る。 ●あと、料理にも、もちろん。 |
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コメント | 古代人はハーブ料理を食べていたのか… サフランで風味をつけたカモ肉ローストとか、美味しそうだなあ。 |
▲シカモア(エジプトイチジク)
英名/Sycamore | 古エジプト名/ネヘテ | |
年代 | 古代から自生。日本でよく見る、あのイチジクに形は似ているが味はそれほどでも無いんだとか。 エジプトでは先王朝時代からよく壁画などに登場するおなじみの木。またハトホル女神の木でもある。 |
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利用例 | ●肩こりに。柔らかいミルラと乳香、セイヨウニンジンボク、イノンドの実、シカモアの実などをまぜて肩に塗る。 ●回虫駆除に。乾燥させたシカモアと新鮮なナツメヤシをビールの中で細かく潰して飲む。 ●腹づまりに。混ぜ方は色々だが、シカモアの実をつぶして、ビールやナツメヤシなどと混ぜて飲む。 ●全般的に美味しそうな薬が多いです。 |
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コメント | 河べりの緑のある辺りに自生していたんだと思われる。 |
▲シルフィウム
英名/Silphium | 古エジプト名/シェネフェト | |
年代 | いつごろからあるのかは不明、いわゆるピスタチオだろうとされている。地中海沿岸から西アジア原産なので、早い時期からエジプトに入っていてもおかしくない。 | |
利用例 | ●手足のこわばりに。ナツメヤシの酒、下エジプトの塩、ワインのおり、天然炭酸ソーダ、シルフィウムその他をまぜたものを包帯に塗る ●駆虫薬として。シルフィウム、蜂蜜、ビールなどをすり潰し、一晩寝かせたあと、朝早くにさらにビールを入れてすり潰し、イッキ飲み。 |
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コメント | 普通に食べてはいかんのか、ピスタチオ。…なんか、「おもいッきりTV」で言ってた内容思い出すなあ…。 |
▲スイカ
英名/Water melon | 古エジプト名/ベデドウ・ケア | |
年代 | 熱帯アフリカ原産で、古代エジプトでは紀元前4000年から栽培されている。夏とスイカは切り離せない、か…。 | |
利用例 | ●肛門や膀胱の痛みを和らげるために。塩とスイカと蜂蜜その他をすり潰して柔らかい塊にし、栓にして肛門から挿入。(オイオイ) ●指のリウマチの痛みとりに。ビールに魚とジェアセ植物(って何?)あるいは肉を入れたものを食べさせ、吐かせたあと、指にスイカを塗り包帯をする。なんでわざわざ先に吐かせるのか…。 ●子供を産めるかどうかの判定に。男子を産んだ女性の乳とすり潰したスイカをまぜ、婦人に飲ませる。吐くようなら子供を産めるが、腸が張って、おならが出るようなら産めない。 |
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コメント | おもに利尿作用のある薬として使われた。膀胱炎や肝炎ならともかく、スイカを塗り薬にしても、効くかどうかピンとこない…。 子供を産めるかどうかの判定薬、というのも、なんだか微妙(笑 |
▲セロリ
英名/Celery | 古エジプト名/メアテ・ト | |
年代 | 地中海やヨーロッパ、インドまで広く野生。古代エジプトではナイル下流のデルタ地帯に生えていたものと思われる。 | |
利用例 | ●血尿に対して、アニス、イチジク、セロリ、黄土などをまぜて裏ごしし、就寝前に飲ませる。 ●目の出血をとり除く。乳香、セロリをまぜて両目につける ●食用増進剤として。脂肪性の肉、ワイン、干しぶどう、イチジク、セロリなどをまぜ、裏ごしして四日間飲ませる(おいしそう) ●心臓の上にある毒素を取り除くために、セロリその他の薬草とビールをあわせて煮て、四日間飲ませる。 |
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コメント | セロリは、以前は薬味・薬草として使われ、ふつうに食卓で食べる野菜ではなかったんだそーです。 ビタミンを多く含み体に良い、と。確かに効きそう。 |
▲センナ
英名/Senna | 古エジプト名/ゲネゲネ・ト | |
年代 | エジプトやスーダンから、かつて輸出されていた植物。 | |
利用例 | ●排泄を促すために。新鮮なナツメヤシ、下エジプトの塩、二枚貝を水とまぜて皿に入れ、センナの粉末を加えて煮てつぼに入れる。人肌程度に暖めて食べ、ビールとともに飲み込む。 ●排泄を促すために。コムギの粉末、ジュニパーの実、タイガーナッツの塊茎、センナ、カラシをすり潰して柔らかくし、お菓子として患者に食べさせる。…い、いかにも腹下しそうなんですがコレ、体力の無い患者は死ぬんでは…? ●下剤として。タイガーナッツの塊茎、センナ、ニガヨモギをビールに入れて煮て、裏ごしして食べさせる。 |
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コメント | 現在、日本でも下剤として使われている。イスラム世界では染料としても使われる。 星座に「ヘンナで染めた手」なんてのもありましたねぇ。 |
▲ソラマメ
英名/Beams | 古エジプト名/ペウレ | |
年代 | 酸性土壌に強い植物でもあるので、かなり昔からあったと思われる。 中王国時代の墓から大量に見つかっている。古代エジプトの主食の一つ。 |
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利用例 | ●肛門の中の熱をとるために。つまり座薬。 ●肛門や陰部の痛みを和らげるために。ソラマメ、天然炭酸ソーダをミルラの中に入れてかき混ぜ、バルサム、タマリンド、ジュニパーの実などを入れてすり潰し、座薬として使用。 |
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コメント | ふつうに食うにもよさそうだ。 |
▲タイガーナッツ
英名/Tiger Nut | 古エジプト名/シェネユ・トア | |
年代 | 現在のアフリカでは、食用の木の実としてフツーに市場に積み上げてあったりするが、昔からあったものかどうかは不明。実の味は甘いらしいが、ここで薬草に使われているのは根っこのほう。 | |
利用例 | ●緩下剤として。タイガーナッツの塊茎(かいけい)、ハチミツをすり潰し、ビールとともに患者に飲ませる。 ●胃の中のガスを出すため、煮込んだマンナの粉とタイガーナッツの塊茎とナツメヤシの粉末、ガチョウの脂肪、ハチミツをすり潰して柔らかな塊にし、食べる ●喘息のため、アシ、新鮮なパン、タイガーナッツの塊茎などをビールの中に混ぜ、裏ごしして四日間飲み続ける。 |
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コメント | ちなみに「塊茎」とは、地中にある茎にでんぷんなどが溜まって太ったもののこと。代表例ではジャガイモやサトイモ。実は食用、根っこは医療用、という使い分けだったようだ。 |
▲タイム
英名/Thyme | 古エジプト名/イネヌケ | |
年代 | ご存知、ハーブとしても有名な薬草。南ヨーロッパ原産ということで、エジプトにも古くからあったものと考えられる。 | |
利用例 | ●条虫(寄生虫みたいなもん)による痛みを取り除くために。タイム、トウシンソウなど薬草の練り合わせたものを四日間食べ続ける。 ●血尿の予防に。ヒヨス、タイム、タマリンド、エンマーコムギの種、セイヨウニンジンボクとハチミツを混ぜ合わせ、就寝前に食す。 ●腹の中の毒素をとりのぞき、痛みを取るために。アカシアの葉、アーレウ木(?)の葉、セイヨウニンジンボク、アイ、タイム、干しぶどうなどを混ぜ合わせて四日間食べ続ける。 ●聴覚の衰えに、タイム、乳香、セロリなどを球状に練って耳に塗る。 |
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コメント | 腹の中の洗浄には、確かに効きそうですね。 ハーブってだいたいが雑草で、乾燥には強いんで、意外とエジプトでは育ちやすかったかも。 |
▲タマネギ
英名/Onion | 古エジプト名/ヘジュウ | |
年代 | 原産は中央アジアだが、エジプトにも古くから伝わっていた。 ピラミッドを建設した労働者たちが食べていたことでも有名。 |
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利用例 | ●喘息に対して。タイガーナッツの塊茎、タマネギ、腐敗した肉、ガチョウの脂肪などにビールを入れて混ぜて煮て、裏ごしして四日間飲ませる。 ●子宮内の出血に対して。タマネギとワインをペースト状にしてチョクで外陰部に流し込む。 ●直腸を冷やすために。タマネギ、ワイン、ウシの内臓などをまぜ、裏ごしして肛門にチョクで流し込む。 ●子供が生まれるかどうかの識別に。詳細は不明。 |
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コメント | …なぜタマネギを下半身にチョクで塗ったり流し込んだりしたがるのかは不明。 …なぜか下半身の治療が多い。 |
▲タマリスク
英名/Tamarisk | 古エジプト名/イセレ | |
年代 | 地中海沿岸から中央アジア原産なので、アフリカにも昔からあったものと思われる。日本ではギョリュウの名で知られる。 | |
利用例 | ●解熱剤として、ミョウバン、赤色黄土、タマリスクの実、天然炭酸ソーダと塩をまぜあわせ、柔らかい塊としてつける。 ●手足のこわばりを和らげるために、タマリスクの細枝をほかの植物と混ぜて軟膏にし、手足に塗って包帯をする。 |
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コメント | ちなみに花はとってもキレイ。アスチルベみたいな雰囲気の花です。 日本名”ギョリュウ”は漢字で書くと「御柳」と、ちょっと優雅なかんじになります(シャレ?) |
▲タマリンド
英名/Tamarind | 古エジプト名/ペレ・テ・シェネユ | |
年代 | アフリカ原産。エジプトには街路樹として生えていたりする。 | |
利用例 | ●緩下剤として。 ●消化不良に。…繊維が多いから下りますよってか。 ●家の中の香りを良くするために燻す ●目の中の炎症を直すため、すりつぶして塗りつける。 |
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コメント | 写真を見ると、葉っぱはネムの樹に似て、実は巨大なソラマメという感じ…。 サヤが大きくしなって、ゴーヤの輪切りみたいな形になっている。実はすっぱいらしい。 ちなみに、若い鞘は皮ごと野菜として食べられるらしい。ちょっとスジばっているらしいぞ。 |
▲トウシンソウ
英名/Rush | 古エジプト名/? | |
年代 | いつからあったのかは不明 | |
利用例 | ●規則正しい排尿のために。トウシンソウの茎、煮崩れるまで煮たソラマメを油か脂肪の中に入れて混ぜ、男性の性器に塗る。(男性専用ですか…。) ●喘息に対して。乳香と新鮮なトウシンソウ、コロシントウリをワインの中にいれ、混ぜて煮て裏ごしし、四日間食べさせる。 ●人工妊娠中絶の薬として。下エジプトの塩、エンマーコムギ、トウシンソウを混ぜ、ふとももに塗って包帯をする。 ●死者の影がとりついた患者の病を取り除くために。トウシンソウと聖油を混ぜ、患者に塗る。 |
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コメント | いわゆる「いぐさ」。畳ござの材料になる植物である。 ちなみにトウシンソウはかなり種類が多いので、日本にあるものとエジプトのものでは、多少違っている。 |
▲ナツメヤシ
英名/Date | 古エジプト名/ベネレイテ | |
年代 | メソポタミア付近が原産。エジプトにもけっこう昔からあった。 | |
利用例 | ●下腹部の熱を取るために。ジュニパーの実、乳香、セベスチン、ナツメヤシ、油か脂肪、酵母を混ぜて、下腹部に包帯をしたように塗る。 ●結膜炎の薬。ナツメヤシ、新鮮なオオムギ、赤色黄土、ミョウバンなどを混ぜて目に付ける。 ●子供が生まれるかどうかの識別に。甘いビールのおりを塗りつけ、その上からナツメヤシの粉をふりかけた床の上に女を座らせ、嘔吐すれば出産可能な女性。嘔吐の回数が産む子供の数。 ●ちなみにナツメヤシの酒は、頭の皮膚病やムチに打たれたミミズ腫れ、手足の湿疹などの治療に使われるようだ。 |
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コメント | 実はもちろん主食にした。味は甘かったといい、砂糖のない時代、にがい薬を飲みやすくするための意味もあったのだろう。 |
▲ニガヨモギ
英名/Absinthe | 古エジプト名/セアーメ | |
年代 | 不明。 | |
利用例 | ●咳止め薬に。シルフィウム、エンドウマメ、ニガヨモギ、植物粘液を混ぜて食べさせる。 ●肛門を治療して毒素や痛みを取り除く。ニガヨモギ、ジュニパーの実、ハチミツなどを甘いビールで裏ごし。 ●お腹の中の虫を殺すために。水草とニガヨモギを甘いビールに入れてすり潰し、裏ごしして飲む。 |
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コメント | 寄生虫予防とか、確かに効きそうだ。 ちなみに現在も漢方薬として使われている。 |
▲ニッケイ(シナモン)
英名/Cinnamon | 古エジプト名/テユ・シェペセ | |
年代 | 不明。 | |
利用例 | ●頭痛につける軟膏に。ニッケイ、バルサム、乳香などを混ぜて軟膏にし、頭に塗る。 ●足首の病気を治すために。アカシアの葉、ブリオニア、蜜蝋、バルサム、ニッケイなどをきれいにすり潰して足に塗る。 ●火傷の防腐剤に。銅のハンマーくず、マラカイト、クミン、ニッケイなどをきれいにすり潰して柔らかい塊とし、火傷に縫って包帯をする。 ●傷のふさがるのを早めるために、イメア広葉樹の葉、アカシアの葉、ニッケイなどを似て、傷のじくじくしたところに塗る。 |
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コメント | シナモンは日本でもよく知られている香辛料だが、エジプトにあるのは、日本に知られているものと、少し種類の違うものらしい。 エジプトにおいては、現代まで使用されていた薬草。 |
▲乳香
英名/Olibanum | 古エジプト名/セネスレ | |
年代 | 最も古い資料で5−6王朝。古くから使われ、よく知られているポピュラーな香料。 | |
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