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第三話 その他の創世神話


 ここまで二つの神話を挙げてみましたが、さらに他の神話もあります。

 なんせ古代エジプトの神々ってのは、地方特産品みたいなモンですから。「ウチの神様がいちばん偉い!」「いーんや。ウチとこの神様には敵うまい」ってな具合で、神話作って張り合ってた形跡があるんですよねぇ。それも、相手を貶めるのではなく、あくまで自分とこの神様を褒め称える。
 持ち上げて持ち上げて持ち上げまくって、その高さを競い合うんですね。他んとこの神様なんかアウト・オヴ・眼中ですか。

 愛すべき神様ラヴァーズこと神官団は、それぞれの神のために神話をつくりました。
 しかし、その多くは失われ、現在残っているものはごく僅かです。


◆プタハ神の場合

 プタハは、第一王朝の時代から信仰が確認されている、とっても古い神様の一人です。いにしえの都・メンフィスの守護神で、かなり都会派です。
 しかもエジプトの神には珍しく、完全に人間形。すてきなおヒゲがチャームポイントでダンディ、ファッションセンスもイケている、と、信者たちは熱く語る。
 そんなプタハの得意技は「鍛冶」。
 そう、プタハ神は神々の鍛冶屋さんなのです。

 魔法の鍛冶屋さんなので、魔法の呪文を唱えつつ、色んなものを作ってくれます。
 たとえば、世界とか。

 原材料は地下世界に埋もれている鉱石なのですが、ついでに、大地にうもれているものなら何でも利用するっぽいです。
 たとえば、封印されてるオグドアドとか。

 プタハ神を熱烈に愛した神官たち曰く、「プタハ神は娘とつがい、アトゥム神を生み出した」…とか。娘をつくる→嫁にする、と、いうタイプの神話は世界各地にありますが、まさかプタハをアトゥム神(宇宙)の父親にまつりあげるとはね。なかなかやりますな、神官団。

 プタハ神は、一流コーディネイターでした。
 世界は、お客様(は、神様です)の気に入るよう、素晴らしく作られたそうです。
 ちなみに、鉱石類の卸売業者は、大地と時をつかさどる神、タテネンだったそうな。…預かりもののオグドアドまで卸しちゃって、いいんでしょうか


◆クヌム神の場合

 クヌム神は、プタハ神の弟子かもしれません。
 エジプトの南方を守護する神で、はっきり言って田舎の神ですが。^^;
 同系列の職人神で、プタハが金属加工のスペシャリストなら、クヌムは陶芸のスペシャリストって感じです。
 彼は、魔法を唱えつつ、ろくろで人間を作り出す名人でした。
 …ゴーレム?(笑)

 かつて、この世界に人間がいなかった頃、クヌムは泥をこねこねして人間を作ったといいます。
 壁画を見る限り、量産です。むちゃくちゃ手際よく作ってます。親方=クヌムが作って弟子が上塗り・色づける流れ作業。
 しかし、あんまりにも作りすぎてしんどくなってきたので、「メンドウだな。よし、女の体ン中に自動で人間を生産するろくろを仕込んじゃえ。」と、いうことになり、女性をつくるときには、中にろくろを仕込んでおくことにしました。
 だから女性の腰は、ろくろのぶんだけチョコっと張っているのだそうです。

 こうして人間は、勝手にガンガン増えていくようになりました。
 最初にクヌムが作った原型からは離れ、いわば複製に複製を重ねているようなモンです。
 しかし、そんな大量生産の安物の人間がヤダというお方には、少々値が張りますが、特注でクヌム親方自ら、芸術品とも呼べる一品を仕上げてくださいます。

 世継ぎが欲しい王家のご夫婦、息子には優秀な将軍に育って欲しい司令官殿のお宅、または信仰の証しが欲しい大神官殿などにオススメ。貢物や神殿建立、篤い信仰の代償など、支払方法は様々です。
 ただ、支払いが滞ると、クヌム神が怒って差し押さえ(授けた子供を病気にするor命を奪って強制奪還など。)してしまうこともあるんだとか。
 けっこう頑固者みたいです。

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 …いかがでしたか?
 ここまで、計5つの創世神話を上げてみました。面白いのは、天地を作った神、太陽を作った神、世界を具体的に形作った神、人間を創造した神など、それぞれ役割が違っていることです。一神教のように、一人の神が天地も人間も創った、とはならないのです。そんだけ沢山の神々がいるからなんでしょうが。

 積極的に協力はしなかったけれど、それぞれの神が、それぞれの得意ジャンルで頑張って、この世界が出来上がった。
 そうも言えるのではないでしょうか。
 



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