サイトTOPへ別館TOPへ

【エジプト限定】オーパーツコレクション

古代エジプトのグライダー

古代エジプトのグライダーとは、いわゆるオーパーツというやつの一つに数えられているもので、何の変哲もない、ちっこい木製品である。普通に博物館に陳列されていたら、大して目を引くとも思えないシロモノだ。

だが、ドリーマーいわく、それは古代エジプト人が作った古代の木製飛行機で、古代エジプト人は実は空を飛べたんだそうだ。
へーそうなんだー、と素直に受け入れるか、そんなワケないやと頭ごなしに否定するかは人それぞれだろうが、とりあえずは両方とも、落ちついて話を聞いて欲しい。


そのグライダーなるものは↓コレだ。
Webページから勝手にパクった写真だが、バレないことを祈ろう。(オイ)

ぱくりですが。うしろから。

後ろから見ると、ちょっとグライダーっぽく見えなくもない…が、そんな見てくれとは別の場所で、根本的な名称の問題が発生している。

    これが作られたのは、紀元前200ごろなのだ。

(何でだか知らないが、日本のサイトの中には一桁間違えているところが多い。
どこか、カン違いした人の本から何も考えずに引用したから、おんなじ間違いをしたんだろうが…そもそも、このオーパーツといわれているものは木製なので、石製品のように年代の誤魔化しようが無い。)

紀元前200年ごろといえば、プトレマイオス5世の在位中。プトレマイオス王家はマケドニア人でエジプト人ではない。ギリシャ語の記録も沢山ある。
つまり厳密には、これは「古代」エジプトの時代の遺物ではない。
「エジプトのオーパーツだ」と大騒ぎする人は、そもそも最後のエジプト人ファラオが退位したのが紀元前345年ごろだということを忘れているか、それすら知らないのだと思う。


と、いうわけで、名前のつけ方からして恣意的なものを感じざるを得ないこの木製遺物。
発見されたのは、1898年。発掘された場所は紀元前2世紀頃のサッカラの墓地
材料は輸入ものの木材(レバノン杉)で、両翼は18.5センチ、全長14センチらしい。(※インチからの変換のため正確でない可能性あり)

発見当初は「鳥じゃん?」で、終わってサックリ片付けられていたが、1969年、Khalil Messiha(カリル・メシハ)という博士がカイロ博物館の整理中に発見し、「これは飛行機だ!」と、大騒ぎをはじめたあたりから話しがおかしくなる。
彼は、飛行機であることを実証しようとして、この模型をモデルにしたグライダー(飛行機?)を作って飛ばしてみたらしい。すると飛んだ。(…まあグライダーは普通飛ぶよな。)

ちなみに、そのことだけが、この物体が飛行機であることの根拠になっている。



さぁ。ここで皆、常識で考えてみてほしい。

人類は昔から、空を飛ぶ鳥を見て、なんとか人間も空を飛べないものかと考えてきた。
現在よく知られている飛行機も、鳥の姿に似せて作られた道具が、はじまりだ。
…つまり、飛行機と鳥は、形が似ていて当たり前なのではないだろうか?

もちろん、鳥として作られたものが飛行機に似ていても何らおかしくない。
鳥もグライダーも空を飛ぶのだから、鳥の形をしたものも、グライダーの形をしたものも、空を飛ぶものとして見れば同じものだ。だか、この2つには決定的な違いがある。それをご覧に入れよう。


さて、ここで別角度から、もう一枚の写真を見て欲しい。

はいはい、よこから

まさに鳥。

グライダーに目やくちばしは存在しない。それがある限り、これは「鳥」なのである。
ここまで明らかであるのにグライダーだと言うのには、それはそれは並外れた、人の道にも外れた行為が必要となる。オーパーツだと言い張る人は、わざと鳥に見えにくい角度から撮影してグライダーっぽく見せようとしている。だが角度を変えれば、目とクチバシがはっきり見えてグライダーには全く見えない。なんのことはない話で、正体が分かった瞬間ガックリくること間違いなし(笑)






ていうか、鳥と判断する以外にどうしろと?


オーパーツ説の支持者からは、「鳥にしては目を例外として身体に描かれた「羽毛」の装飾や足がない」という逆批判があるが、そもそも、飛行機には目など無い。
目がある時点で、もはやこれはグライダーでは決してあり得ない。これが工芸品や売り物として作られたのではなく日常品であったなら、こんな小さな木製品に羽毛まで細かく彫りこむような手間はかけないのだから、羽毛や足が簡略化されていてもおかしくはない。また、片目の掘り込みが未完了なのだから、「作りかけだった」という説を想定することも可能だ。

羽根が真っ直ぐなのだから鳥ではない! という、少々情けない反論もあるが、胴体部分と羽根部分の二つの木片を真っ直ぐ組み合わせて簡単に鳥のカタチを作る以上、羽根の角度を変えられなかったのは、むしろ当然の造形では…。リアルじゃないから鳥じゃないとか、んなムチャな。そもそも、これ、飛行機だったとしても、着陸用の足がないとか人が乗るとこがついてないとか、全然リアルじゃないんですよね(笑)

じゃあコレは一体なんなのか…。
風見鶏だという説もあるが、わずか18センチ少々に過ぎない風見鶏など役に立つとも思えない。
この簡単な作りからして、子供のオモチャだったんじゃないだろうか。手に持って振り回して遊ぶ。現代でも、子供たちが飛行機のオモチャで同じことをやっているはずだ。

もしそうだとすれば、羽毛など細かいところ作らなかったのも納得できるはず。墓から出てきたということは、その墓におさめられた故人が子供のころに使っていた思い出の品、とか、孫に貰った大切なもの、なんていう可能性だってある。そっちのほうが、ずっと現実的で、ロマンチックな想像ではないだろうか?


博士にっこり。ちなみに、この模型をグライダーだと言い出した最初の人物、「カリル・メシハ博士」という人は、エジプトの専門家ではない。
エジプト学で博士号をとった人ではないのだ…。
エジプト考古学は趣味でやっていた上に、航空模型の制作も趣味なのだそうだ。

ちなみに、インターネットで検索してみたところ、彼の経歴としては以下のようなものが見つかった。

・エジプトの内科医、芸術家および航空模型製作者(つまり考古学は専門外)
・1967年、Egyptian Antiquities Departmentで正式に働くことを許された(英語の意味がわからず)
・遺物の探し方はダウジング(!)
・「精神世界」や「超心理学」についての著作を書いている


この経歴と博士のお人柄から推測するに、この説自体が、博士の夢と空想から生まれた壮大なドリームであるとしか思えない。

まぁ、別にどんな夢を見ようが人の勝手だとは思うが、ただ一つ注文をつけさせてもらいたい。
これをオーパーツと呼ぶのなら、「古代エジプトのオーパーツ」とは、呼ばないでほしい。

呼ぶのなら、プトレマイオス王朝時代のオーパーツでお願いします。



【追記】

一万五千歩譲ってこれがグライダー模型であったとしても、グライダー本体が何処にも無いのだから、一足飛びに「エジプト人は空を飛べた!」と言い張るのは、いかがなものか。
地球の模型を持ってたって、地球は作れないし。
船の模型を作れたって、船そのものは作れないし。
小説のあらすじ書きが発見されたとしても、その人が小説を完成させられたかどうかは分からないし。


★現地情報

2008年4月現在、この遺物はカイロ・エジプト考古学博物館の2F 左翼の小室「木製品」の部屋に収められています。部屋の隅にあるショーケースの中に、ホルス神像というくくりで、つっこまれていました…。横についている数字は「6347」。数字だけで何の整理番号なのか書いていない。
物凄くヒッソリ置かれていることと、近くで見るとあまりにはっきり目とくちばしが書いてあるのとで、ちょっと笑ってしまいました。目がついてたらグライダーには見えないってば。
羽根の部分は直線で手抜きに見えますが、近くで見ると、胴体部分はくちばしや頭のくびれも作ってあって、うまいんですよね。意外と手先は器用な人が作ってそう。
というわけで自分的に、「子供のおもちゃ」説を支持。

******

ちょっといいカンジに詳しい海外サイトを見つけたので、興味のある人はドウゾ。
写真も見られます。白黒ですが。
http://www.catchpenny.org/model.html


戻る>>次へ