都市を擬人化するのは現代でも良くあるが、古代エジプトでは、擬人化=女神化となる。原則として行うのは国土の主である王であり、王と街の化身である女神が並んで立つのがテンプレ表現。
なお、古代エジプト語の街(ニウト)は女性名詞のため、女性以外の擬人化はおそらく存在しない。
・ウアセト
新王国時代の首都テーベの古代エジプト語がウアセト。ウアセトの街そのものの神格化。
・メンネフェル
古王国時代の首都、古都メンフィスの擬人化。メンフィスはギリシャ語なまりの名前で元の古代エジプト語はメンネフェルなので、これも町の名前そのもの。
・チェセメト
メンフィスのプタハ神殿に立つ塔門の擬人化。なぜここだけメンネフェルから独立させたのかは不明。
・ニウト
言葉自体は「街」だが、新王国時代を通して最大の街だったテーベのことでもあり、女神としてのニウトはテーベの街でもある。
これは日本でいえば、「都」といえば京都だったのと同じ事情と解釈できる。
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オペト(イペト)
ルクソール神殿を擬人化したものとされる。カバの姿を取る女神オペト(イペト)と同じ名前であり、エジプト人の中で両者が区別されていたかどうかは微妙。少なくとも後世には同一化されていたように思われる。
・アレクサンドリア
プトレマイオス朝に建造された首都の神格化。ギリシャ風の姿でモザイク画などに登場する。ファロスの灯台の建てられたファロス島のみ独立して神格化された可能性もある。
◎参考
都市の擬人化について