主な称号
ヌビアの最高神、南のライオン、腕強きもの
主な信仰
紀元前三世紀から紀元後四世紀にかけて最盛期を迎えた、メロエ文明での主神。獅子頭をもつ神で、戦いの神である。
メロエ文明は、エジプトの影響を受けてヌビアに発展したヌビア人の王国の後継に当たる。エジプトでは雌ライオンが戦いの神とされていたのに対し、ヌビアでは、実際にライオンの多い地域だったことからか雄ライオンが戦いの神に充てられているのが面白い。
メロエの位置は、エジプト南方、スーダンの奥地。前6世紀以降、上エジプト(エジプトのナイル上流。南側)との交流が途絶えて以降、エジプトに近いナパタから遷都され、独自に発展させていった「エジプト風」神話の中で誕生した神である。それまでに受けてきたエジプトの影響を盛り込んでいるため、エジプト神話の神々とともに語られることが多い。メロエに築かれたアパデマクを祀る「ライオン神殿」はエジプト風の概観を持っているが、アパデマクを最高神とし、サイやゾウなどエジプトの壁画ではあまり見かけない動物が登場する内容となっている。
ライオン神殿をはじめとするエジプト風の神殿では主にヒエログリフが使われたため書かれている内容が読めるが、一般にメロエで使われたメロエ文字は、形こそヒエログリフに似ているものの実際は言語体系がエジプト語と別なため、あまり研究が進んでおらず、まだほとんど解読されていない。
この神への信仰は、エジプト王国が終焉を迎えて以降も紀元後三百年ごろまで続くが、その後、国がビザンツの影響でキリスト教化されたことにより、ひっそりと終焉を迎える。
*ライオン神殿の外壁レリーフ アメン神とアトゥム神を従えて王と王妃に挨拶するアパデマク(中央)。
アパデマクは三面四膂の異様な姿で表されることもあり、そのためフランスのジーン・ベルクテール(Jean Vercoutter)によってインド起源説が唱えられたこともある。インドの神の中には、顔や腕を多数もつ神が珍しくないがアフリカでは滅多に見られないためだ。ただし、この説には明確な証拠がない。
クシュ王国が紅海を経由して異国と交易したことは確実視されているが、メソポタミアを経由したその先のインドとの繋がりは不明瞭である。
参考>
ヌビアの神にインドからの影響がある説を追ってみた
神話
・エジプト神話に組み入れられる過程で
イシスと
ホルスの息子またはイシスの夫でホルスの父として扱われることもあった
・アメン神が優勢の時代には、アメン神とともに壁画に登場させられた
・メロエのライオン神殿においては、アメン、アトゥムより上位の神として表現されている
・ヌビアの遺跡は未発掘地が多いため、不明点も多い
聖域
ムワッサラート・エル=スフラ
ナカ(いずれもメロエの都市名)
DATA
・所有色―
・所有元素―
・参加ユニット―
・同一化―
・神聖動物―獅子
・装備品―