中世騎士文学/パルチヴァール-Parzival

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第八巻  ガーヴァーンとアンチコニーエ



 こうして、ガーヴァーンは決闘の地・シャンプファンツーン城へ到着する。この都はたいそう繁栄したすばらしい場所であったらしく、そのような描写がたくさん出てくるのだが… 来客が誰なのかちゃっんと確かめもせず、ガーヴァーンをさらりと城内に入れてしまっているあたり、守りはかなり甘いのかもしれない。
 そこでガーヴァーンは、国王フェルグラハトの妹・アンチコニーエの出迎えを受ける。
 アンチコニーエも、彼が誰なのかはわかっていない。ただ、身分高い騎士であることだけは分かっており、一目で「アラいい男」と、恋してしまうのだった。
 ガーヴァーンもその気である。そしてそのまま若い二人が密室でどうにかなってしまいそうなとき…ガーヴァーンの顔を見知った老騎士が叫び声を上げ、城内は騒然となってしまった。
 ”主君を殺した騎士が来ている。”
 剣もなく、逃げ惑うガーヴァーンはアンチコニーエの手引きで塔に立てこもり、女性にしては大柄なアンチコニーエはそこらじゅうのものを引きちぎっては投げ、引きちぎっては投げる。ものすごい力と奮闘振りである。さらに、アンチコニーエの兄、フェルグラハトまで戦闘に加わって、城はたいへんな騒ぎだ。

 と、そこへ、ガーヴァーンに一騎打ちを申し込んだ当の騎士、キングリムゼルが帰ってくる。彼は城内の異変を知り、これではまるでだまし討ちだ、自分の名誉に関わると怒りだし、主君を押しとめる。すんでのところで命拾いしたガーヴァーンは、一騎打ちの場を、例のメルヤンツ王の前で行うことを誓わされるのだった。

 アンチコニーエの監視のもと、十分なもてなしを受けるガーヴァーンであったが、王フェルグラハトと、その家臣リダムスは、さらに彼にある提案をする。それは、かつてフェルグラハトがレーハタムリースの森で騎士と決闘をして負けた時、その騎士に誓わされた、「聖杯を探し、もし一年以内に見つからなかった場合は、ペルラペイレの女王コンドヴィーラームールスに伝言をしてほしい」と、いう役目を代わりに果たせというものだった。
 聖杯城ムンサルヴェーシェに向かうことは危険な旅であり、直接手を下さなくても、ガーヴァーンが死に至る可能性がある…と、いうわけだ。
 ちなみに、王と決闘し、聖杯を探すよう命じた騎士とはパルチヴァールのことである。彼はまだ、聖杯を探す旅を続けているのだった。

 翌日のミサの後、ガーヴァーンは、聖杯を探しに行くことを承諾し、かわりに、兄の襲撃を怒っているアンチコニーエ姫のご機嫌をとると約束する。そんな交換条件でいいのか、という気もするが、これで和解は成立。フェルグラハトの代わりに役目を果たし終わったときが、キングリムゼルとの約束の一騎打ちの時だ。
 別れを悲しむアンチコニーエを後に残し、ガーヴァーンは、さらに危険な旅へと馬を進めるのだった。




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