中世騎士文学

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騎士の役職



 ここでは、騎士文学によく登場する役職についての説明をします。何気なく読み飛ばしていても大して問題無いですが、その役職について、ある程度知っておくと、陣営の階級構造などが見えてきて別の面白さがあるかもしれません。
 なお、これらの役職は、日本語に訳するときに日本の皇居に仕えている人々の役職名にあてはめられてしまっているので、少々誤解を招きやすくなっているようです。
 実際に物語の中でしているお仕事は、こんな感じです。


■侍従…管理対象/財宝

 この時代にすべての国々で共通の通貨が存在したかどうかはわかりませんが、貨幣らしきものでやりとりすることはなく、財宝による物々交換が基本だった模様。財産=物、です。
 侍従と言ってしまうと何だか小間使いっぽいのですが、主人のお側近く仕えるということは信頼されている証しでもあります。財宝庫の鍵を任された管理人、という重要な役職なのです。
 その、信頼されてたはずの侍従が宝を盗んで女性と逃げるなんて話も、お約束です。(笑)


■献酌侍従…管理対象/飲料

 王や貴族に実際にお酒を注ぐというわけではなくて、注がれる酒を管理するという意味の比喩です。言い換えれば、酒蔵の責任者。
 誰かが酒を勝手に飲んでしまわないよう見張ったり、宴会のあとに足りなくなったぶんを仕入れたり。気配りの職業。もし、必要なときに必要なだけの飲み物が出せなければ、罪とされていました。突発的な宴会もあるのですから、常に気を遣っていなくてはいけません。その意味で、かなりハードな職業だったようです。


■大膳職…管理対象/食料

 宮内庁の官職としては「天皇陛下の料理人」ですが、コックじゃないですよ(笑)。 れっきとした騎士さんです。
 何百、何千という規模の軍隊になると、食料管理も大変ですよね。いちいち大量の食料を持って歩くわけにはいかないので、必要なぶんは行く先々で食料を調達することになります。つまり、補給線の管理人。行軍の要を握る重要な役職ですよ。


■主馬の頭…管理対象/馬

 騎士に馬は必須。よって、厩の管理も重要な役職です。
 しかし、それだけにとどまらず、この役職の人々は、下級の騎士たちやその場雇いの歩兵のまとめ役も果たし、遠征時には、その日の宿泊地を決めたり、どこかの城に客人として泊めて貰うときには使者として立ったりもしていたようです。
 宿の手配をするのだから、交渉役としての才能が必要とされることも。


 これらの役職は、いずれも重要ですから、身分の高い、作法を身につけた騎士たちが任命されていたようです。また、彼らももちろん騎士ですから、戦場に立つことがありました。大膳職でも戦うんですよ。コックじゃないんです、念のため。




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