パレンケとは、マヤ遺跡の中でもけっこう有名な、古典期の都市だ。観光地としても人気がある。
ここには、パカル王をおさめた石棺がある。相変わらずマヤ文様なので、ぱっと見、絵柄はワケわからんことになっている。
…で、ワケわからんのをいいことに、この石棺がロケットを操縦する飛行士だとかいう笑っちゃうようなウソをばら撒いた不届きモノがおり、信じてしまった人がけっこういるので、ひっかけコーナーを作ってみる。
本の写真そのままスキャンしようとすると絵の大半がつぶれてしまったので、自分で絵を描いてみた。
主な線だけ引き写すと、こんなカンジ。
…まぁ、確かに、この絵を横にすれば、死せる王がロケット操縦して宇宙に脱出しているように見えなくもないよね。
だけど、この石棺のフタの絵は、この向きに見ることが正しく、横向きに見てはいけないものなんだ。^^;
入り口から見てこの向きに置かれているというのはもちろんのこと、横向きに見てしまうと、おかしい点が幾つが出てくる。
まず、死せる王が操縦している十字架形(コントロールパネルだと主張する人もいる)てっぺん。
ここには、よーく見ると鳥がとまっている。ちょっと絵がマズいけど…。拡大すると下の図のようになっている。
手元に写真があったら見て頂戴。検索すればインターネット上にも写真はたくさんあるし。
頭にかんむりをつけ、あごにリボンを結び、首飾りもつけ、しっぽに人の顔の形をした飾りをぶら下げた、めかしこんだ鳥であることが分かると思う。これは、実在する密林の鳥、”ケツァール”をモデルにしているとも言われ、マヤ世界の中では、宇宙を象徴する鳥なんだそうだ。
絵を横むきにしてしまったら、この鳥と尻尾の先の人の顔の向きがおかしくなってしまう。石棺の絵を刻んだ人が、この絵をタテ向きに見るようにデザインしたってことは火を見るより明らかというわけだ。
ロケットを操縦する図なんていう解釈は在り得ない。
「マヤ人がロケットをつくっていた」説を唱える人の本は、この、いちばん上の鳥の部分が故意に削られていたり、ぼかされていたりするので面白いぞ(笑) 確か、「トンデモ本研究会」かどこかでも、激しくツッコまれていた気がするな。
まあ、これ、自分で描いた絵なんで、ホントはもっとごちゃごちゃした模様なんだけどさ、よーく見ると、ほかにも人の顔のレリーフや蛇なんかの生き物がいて、この石棺がタテ向きに見るもんだってことを示唆している。
偽りのロマンを追い求めて、見え透いた人のウソに乗っかるよりも、自分の目を信じて良く見ろよ。っていうお話。
真実の世界にこそ奥深いロマンがあるのですよ。 死んで横たわる王の上に鳥の留まった十字架が立っている、という、石棺に相応しいレリーフ、実に素晴らしい出来ではありませんか。マヤ人の神話的な世界観に感動モノでしょ。
パレンケの石棺は、タテ向きに見ろ。
十字架のてっぺんに鳥が居る。
ちなみに縦に見て「ロケットが飛び立つように見える」と思ってる人は、この石棺のはじっこをちゃんと見てないです。
たぶん本だと端っこ写真切れてると思うんだけど、地面から歯が生えて、王様を飲み込もうとしてます――で、飲み込まれそうになっている王様の上に、十字架と鳥がいるという構図。ロケットに見えたからロケットだ! というのは、まんず無茶。
いじょ、拙い絵で説明してスンマセンでした。